Short Short Collections
主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。
隣の幼なじみがマジです
#BL小説創作BL版深夜の60分一本勝負 のお題に挑戦しました。
使用お題は「吐息」「ゼロ距離」です。
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「いいよ。考えてやるよ」
もちろん冗談のつもりだった。
今まで自分自身そんな気配を感じたことは一ミリもなかったし、これからも起きるわけがないと信じていた。
彼は幼なじみで一番の友達だった。
普段は自分のあとをついて回る甘えん坊かと思えば、言うときははっきり言うし、彼が前に出るべきと己で判断したときの動きは全く迷いがない。
まさに「守り守られる」という言葉が似合う関係だった。
それが、なんだ。急に「ミツが好きだ」と真面目な顔で告白なんかしてきて。
「そういう意味で好きって、俺は違うぞ」
「わかってる。ただ、言ってみただけだから」
明らかに狙って言ったと、もちろんわかっていた。彼、ユウキは大事なことを「ついうっかりこぼす」性格ではない。
「まあ、これで友達やめるつもりはないけど」
「相変わらずわがままだな。俺が気持ち悪いから絶対いやだ! ってごねたらどうするんだよ?」
てっきり泣きついてくるかと思ったが、ユウキは熟考している。嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
「二度とそんなこと言えないように無理やり説得しちゃうかも」
予感は当たっていた。本当に降参するまで諦めなさそうだから冗談に聞こえない。
「でも、どうするの? おれ、今のところ諦めるつもりは全然ないんだけど」
その訊き方は正直ずるいし困る。たとえば絶対友達以外ムリ! ときっぱり言っても意味がないということになる。
「どうにもならないだろ。お前と恋の始まりなんて見える気配すらないね」
しかし、よくも悪くも諦めの悪いのがユウキだった。
「恋の始まり……ときめき?」
顎を触りながら大真面目につぶやく。
「ほら、相手にときめきを感じたとき『これって恋?』みたいに自問するやつあるじゃん。それだ」
「待て待て、一人で勝手に話進めんなって」
さらに嫌な予感が強まった気がしてならない。
ユウキは一歩距離を詰めると満面の笑顔で見上げてきた。
「ねえ、ミツをときめかせられたらさ、おれと恋人同士になること真面目に考えてくれる?」
アホか、と切り捨てようとしてとどまる。
たぶん彼は諦めないであれやこれやと手を尽くして条件をのませようとするだろう。もっと面倒になるのは勘弁してほしい。
「いいよ。考えてやるよ」
絶対にユウキを親友以上の色眼鏡で見ることはない。
自分の感情を信じていたから、敢えて乗ってやった。諦めて今のポジションのままでいることを選ぶ未来しか見えていなかった。
「ほんと? ありがとう!」
語尾に音符マークでもついていそうな言い方ではあったが、まあ、しょせんは男だしな……。思わず苦笑がこぼれる。
「約束したのはそっちだからね。覚悟してよ?」
一瞬で、ユウキの双眸が視界を埋めつくす。緩やかな月を描いている。
「そんなに無防備で大丈夫? おれ、調子に乗っちゃうかもよ?」
唇に、吐息がかかる。すべての神経が奪われてしまったように身体が動かない、突き飛ばしたり茶化したりできない。
「まあ、ここで無理やりしても意味ないし、宣戦布告ってことで」
こんな刺激的な宣戦布告があるか。
――初めて、ユウキの恐ろしさが身にしみた瞬間だった。畳む
苦いイチゴはもういらない
#CPなしくるっぷの深夜の真剣創作60分一本勝負 さんのお題に挑戦しました。
使用お題:「苺」「運命」です。
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「今日こそこのイチゴでケーキを作ってくれ!」
「だから無理」
ばたりと玄関のドアを閉めると、いつもの捨て台詞を残して彼は帰って行った。
諦めの悪いその根性だけは評価する。するけれど、どうして私がわざわざケーキを作ってやらないといけないの。
ため息をついて、ドアに寄りかかる。
ケーキ作りはもう、二度としない。あの日そう決めたのに、どういう運命の悪戯だろう。
昔、賞を取ったときの記事かなにかを見たらしいあの男は、たまたま同じマンションに引っ越してきた私の顔を見て開口一番「ようやく君の作るケーキが食べられる!」とキラキラの笑顔で告白してきた。
理由を聞いたら、デコレーションされたイチゴケーキの写真に「一目惚れ」したらしい。写真でこれなら、絶対味も素晴らしいと思ったとかなんとか。
『今日まで全然ケーキを見つけられなかったけど、まさかこんな運命が待っているとはね!』
こっちは最悪だ。せっかく辞めたのに、ああして求められて、たまったものじゃない。
じわりと胸の奥から黒い染みが広がりそうになって、慌てて首を振る。あれはもう過去のことだ。あのとき、何度も何度も己に言い聞かせたじゃないか。
「やあ、今日のイチゴはとっておきだぞ。前から食べてみたかった高級イチゴなんだ。君も作ってみたいって思うんじゃないかい?」
今日も彼は諦めず、眩しい笑顔で玄関先に立っている。
余計なトラブルにしたくなくてきつい言葉を使うのは避けていたけれど……もう、いい加減我慢するのはやめよう。
「だから、作らないって言ってるでしょう。何度断ればわかってくれるの。あなた、相当鈍いみたいね」
精一杯睨み付ける。初めて笑顔以外の表情を向けられて、なぜか視線を外してしまった。
「私は作りたくないの。いくら持ってこられても無理。こんなこと、今日で最後にして!」
さすがにわかってくれるだろう。一息ついてから、目線を持ち上げる。
「わかった。今は、作りたくないんだね」
また、彼は笑っていた。本気で理解できなくて頭が混乱する。
「でも、僕は本心じゃないと思ってるんだ。なんというか……君が抱えてる何かをなくせれば、解決するんじゃないかって」
鼓動が一瞬うるさく胸を叩いた。事情は一切話していないのに、なぜ。
「僕が助けになるよ」
「簡単に言わないで!」
反射的に叫んでいた。赤の他人がどうにかできるならとっくに解決している。
「一人で抱えているとどんどん辛くなるから。味方なんて誰もいない、自分のことは自分でしか面倒見れない、そうやって閉じこもっていってしまうんだ」
まるで彼自身に言い聞かせているように聞こえる。雰囲気もまるで変わったように感じたが、すぐにその違和感は消えた。
「だから、ね? ちょっとだけでも、試しになにも知らない僕に寄りかかってみるっていうのはどう?」
「……いいから、帰って」
力なく彼の身体を押して、ドアを閉める。
あんなに固かった決意が、ほんの少しでも揺らいでいるのを感じる。
情けない。一人で消化しようと決めたのに、絆されるつもり?
……あんな思い、もうしたくないでしょう?
いつもはうっとうしいだけのあの笑顔が、こびりついて離れなかった。畳む
偶然か運命だったのか
#CPなし深夜の真剣物書き120分一本勝負 のお題に挑戦しました。
お題は「①只者ではない」を使いました。
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「あたし、実は女優やってるのよね〜」
目深にかぶった帽子、首元で雑にくくられた髪型、体型にまったく合っていないぶかぶかトレーナーにジーンズ。
漫画に出てきそうな黒い太フレームのレンズなし眼鏡を外して笑いかけてきた瞬間、変な声が出た。
本物だ。芸能に疎い自分でも知っているくらい、知名度は抜群に高い。
眼鏡が制御装置にでもなっているんじゃないか? はんぱないオーラをびしばし感じる。メディア越しより何倍も可愛い。いい加減な服装も不思議と似合っているようにすら見えてしまう。
まさか、困っているところを助けただけでこんな奇跡が起ころうとは。なけなしの勇気をたまには振り絞ってみるものだ。
「その反応見る限りだと、あたしのこと知ってくれてるんだね。ありがとう! 嬉しい」
「い、いえそんな、恐縮っす」
「さっきの男気どこいったの〜? そんな緊張しないで、ね?」
「い、いや、芸能人と会ったの初めてだし、ほんと可愛いし、むりっすよ」
無邪気な笑顔が心臓に悪い。自分が今どんなみっともない表情をしているのか、想像もしたくない。
「そう? これでも昔はめちゃめちゃ地味だったんだけどね。いじめられたりもしたし」
本気でびっくりしてしまった。彼女の表情を見る限り嘘とは思えないし、一体どんなやつがそんなひどいことをしていたんだろう。
ふと、俯いた彼女がなにかを呟いたような気がした。あくまで気がしただけで、内容はもちろん聞き取れなかった。
「あ、そうだ。ねえ、これもなにかの縁だし……ひとつ、お願いしてもいいかな?」
小さい顔の前で両手を合わせて、覗き込むように見つめてくる。あざといのにやっぱりかわいい。
「さっきのヤツが諦めるまで、あたしの彼氏になってくれない?」
すんでで口元を押さえた。な、なにを言い出すのかこのひとは。出会ったばかりの赤の他人になんてことを言い出すんだ!
「君は信用できる人だってあたしのカンが言ってるのよ。あの男気にもほんと感動したし」
このまま黙っていたら勢いのまま決定されてしまう。確かに芸能人とお近づきになれる夢のような展開ではあるけれども、だ。
「ま、待ってくださいって! ほら、今ってSNSとかで簡単に炎上する時代でしょ? 万が一隠し撮りでもされたら俺、たまったもんじゃないっすよ」
困っているのに申し訳ないが、リスクはなるべく避けたい。というか警察なりに相談すべきでは……。
「今、警察に行けばって思ったでしょ。なるべく大事にはしたくないのよ」
ストーカーに命を狙われた、なんて事件もちょいちょい聞くのに、危機感がなさすぎる。
「恋人がいるってわかったら諦めると思うの。ムリなら大人しく警察に行くよ。だから、ね? お願い」
さらに距離を詰められた。
卑怯、あざとすぎる、絶対頑固な性格してる。
昔から押されると押しきられてしまう性格だった。大抵よろしくない方に作用するが、今回もやっぱりそうなりかけている。
「…………俺、で、よければ」
たっぷり五秒くらいはかけて、承諾してしまった。芸能人じゃないのに芸能人の気持ちをほんの少し堪能できた気がした。すでに胃が痛い。
「ありがとう~! 本当に嬉しい!」
抱きつかれて少し嬉しくなったものの、ネガティブな未来の数々には太刀打ちできそうもない。
「あの、俺、一般人ですからね。よろしく頼みますよ」
だからつい弱々しく呟いてしまったのだが、彼女は明るく笑い飛ばした。
「大丈夫! 君には迷惑かからないようにするから。……なるべく、ね」
なるべく、と聞こえたような気がしたが、これも気のせいだろう。畳む
無意識な色仕掛け?
#男女もの深夜の真剣物書き120分一本勝負 のお題に挑戦しました。
お題は「②媚」を使いました。
一応お題に沿っている……つもりです😅
だいぶアホっぽいノリになりましたw
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「っもう、またなにするのよ……!」
仕方ない。
「ごめんごめん」
「全然反省してないのも同じだし!」
だって、本人はまったく狙っていないとわかっていても、どうしても「誘われて」しまうから。もちろん本人は悪くない、悪いのは完全にこっち。
「公共の場でやめてって前からずっと言ってるでしょ? もう」
あ、そのふくれ面、上から見ると本当に可愛い。突き出た唇がちょっとつやつやしていて、今度はそこにキスをしたくなってしまう。ダメだダメだ、さすがに怒り狂っての帰宅コースになってしまう。下手したら一ヶ月はスキンシップを自粛せざるを得なくなる。ああ、でも……
「ぶっ」
「黙ってやられてばっかのわたしじゃないから。てかやっぱり反省してないじゃん!」
手のひらで口元を覆われてしまった。
というか相変わらず突き出たままの唇に加えて上目で睨んでくるその仕草は、はっきり言って逆効果だ。「わざとやってるだろ!」と突っ込みたくなってしまうほどだ。
……付き合う前から痛いほど実感していたことではあるが、天然の恐ろしさを改めて思い知らされる。
「ひゃっ!? な、なに!?」
慌てて手を引っ込ませ、固く握りしめる。なにをされたかようやく理解したのか、今度は目線を上げてもっと鋭く睨み付けてきた。
「し、信じらんない……!」
……わかっているんだろうか。涙目のせいで、ある意味クリティカルヒット級のダメージを与えてしまっていると、実は理解したうえでやっているんじゃないのか!?
「……俺、本当にお前が好きだ」
「は、あ?」
「すごく可愛いって毎日思ってるし、離れたくないし、今すぐ同棲したいくらい」
なんだこいつと思われてもいい。でも、爆発しそうなこの気持ちを落ち着けるにはこうするしかないんだ!
「や、やだやめてよ! そういうのも恥ずかしいからー!」
丸い頬は真っ赤に染まり、丸い両目がさらに潤んでいく。しまった、逆効果か!? ならどうやってこの感情を落ち着かせればいいんだ……!
「……あのさ、いい加減パフェのアイス溶けるよって敢えて言うべき? それとも黙って帰るべき?」
「こいつらダブルデートだってこと忘れてるよな」
「あんたの友達も大概だけど、あの子も本気で嫌がってないのが余計にああさせてんのよねぇ。突っ込んだらそんなわけない! って真っ赤になりながら否定するんだろうけど」
「お互いメロメロだからね。って言っても同じ反応しそうだね」
「はぁ……勘弁してよバカップル……」畳む
カテゴリ「ワンライ」[44件](2ページ目)
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片翼で鳥は飛べない
#BL小説くるっぷの深夜の真剣創作60分一本勝負 さんのお題に挑戦しました。
使用お題:「阿吽の呼吸」「雛」です。
お題に触れているのは最初だけで、後半はお題とあまり関係なくなってしまいました😅
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「西島、そこを曲がった先だ!」
頷いた彼は走るスピードを一層上げる。見失わないよう懸命に足を動かした。
予想通り道を塞ぐように立ち塞がっている数人の敵に、早くも西島は踏み込んでいた。相変わらず鮮やかな体術を駆使して、果敢に攻めてくる者たちを次々なぎ倒している。
ふと気配を感じてさりげなく視線を配ると、彼の死角になる位置から銃を構えている仲間がいた。素早く懐にあるナイフを投げつけて距離を詰め、押さえつける。
「死ぬのはお前のようだな」
後頭部に突きつけられたのが何か、説明されるまでもない。
——落ち着け。焦る必要は全然ない。
「馬鹿だな。気づいてないとでも思ったか?」
身震いしたくなる気配が近づいているが、相当鈍いのか察知している様子はない。
のんきに訊き返してくる声は、途中で汚い悲鳴に変わった。
「大丈夫? 篠崎」
「ふん、間に合ったか」
「ひどい、せっかく助けてあげたのに」
「ばーか。お前なら余裕で間に合うって信じてたからだよ」
先ほどまでの奮闘が嘘のような、どこかのんびりとした口調と雰囲気につられそうになりつつも報告を入れて、待機している仲間が来るのを待った。
「まったく、仕事のときは無駄に活躍するのにプライベートではこれだもんな」
「しょうがないじゃん。おれ、ほんと生活能力なさすぎるんだもん」
仕事のときはどちらかというと西島主体で動くことが多いが、その舞台から降りた瞬間、完全に役立たずと化す。もはや雛のように後をついて回るだけと言っても過言ではない。
片づけできない、料理できない、時間通りに起きられない、とにかくないない尽くし。
初めて会ったときは、こんな人間が世の中にいるのかと衝撃を受けたものだ。
「篠崎のおかげで毎日生きていられるから、ほんと感謝してるんだよ」
「どうせなら仕事でそれくらい評価されたいね。どうしたって目立つのはお前だから」
「大丈夫だってー。おれだって篠崎のいないとこですごく言われるよ。お前は篠崎がいないと輝かないとかお前を完璧にフォローできるのは篠崎しかない感謝しろとか」
「せめて僕の前で言ってくれ……」
文句を言いつつも、内心にやにやしていた。こういうのは自分のいないところで褒めてもらうほうが嬉しさ倍増だったりする。……まさか、それを見越して? なんたって仲間は彼に負けず劣らず個性派が揃っているから。
作った夕飯をテーブルに並べていると、西島がにこにことこちらを無駄に見つめていた。はっきり眉根を寄せる。
「また余計なこと考えてるなお前」
「そう? おれは嬉しいなーってしみじみ実感してるだけだよ」
「嬉しい?」
「だって職場だと完璧人間みたいに思われてる篠崎がおれの前だと遠慮なく愚痴るから」
変な声が漏れた。くそ、やっぱり言った通りじゃないか。
「人間ずっと気を張ってると精神やられるし? お前は生活面で僕に迷惑かけてんだからそれくらいいいだろ」
「おれなんにも言ってないじゃん。ふふ」
最後の意味深な笑いはなんだ、気持ち悪い。突っ込むのは絶対面倒だからしないけれど。
「な、なんだよ?」
「そういうとこがかわいいなーって思ってるんだよ。いつも」
掴まれた腕が全然ふりほどけない。見た目はぼんやりしているが、少なくとも力は自分より上なのだ。
「いらんことしたらメシ食わせないからな」
絶対この時間にはふさわしくないアレコレをされる。先手を打たねば。
「的確に弱点突いてきたね。さっすがパートナー」
「ありがたくない褒め言葉をどうも」
何度そっちのペースにのまれるという屈辱を味わってきたと思ってる。
「おっと、力ずくも禁止だ。作るのもやめるぞ」
一番の好物である自分の手作り料理も存分に活用させてもらう。
「むう、恋人に向かってひどくない?」
「タイミングを考えろというだけの話だが?」
ようやく解放された。と安堵したのが間違いだった。
「おれが今食べたいのは篠崎だけ、なんだけどな」
最高に頭の悪い台詞だが、耳元で囁くのは反則じゃないか。こいつもピンポイントに弱点を突いてくる。
「なんてね。君のご飯が食べられなくなるのはいやだから、全部終わったあとでいただくよ」
ふざけるないい加減にしろ!
という反撃は、わざとリップ音を響かせたキスをされ、素早く逃げられたせいでタイミングを逸してしまった。
真面目な声を作ってまで本当にバカとしか言えない。でもそんなバカと飽きずに一緒にいるのだから、人のことは言えない。
「しのざきー、早く食べようよ」
「誰のせいだよ」
呆れながらも、口元が緩んでいるのは隠せなかった。
――明日朝早いから、いただかれるのは全力で拒否するが。畳む