Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

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2021年1月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

夏のソメイヨシノは春を運ぶのか?

#男女もの

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noteの企画で書いたものです。

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 僕たちは対等であるはずがなかった。

 一つ上の先輩に、密かに想いを抱く日々。意を決して突撃しそうものなら、僕はたちまち蜂の巣にでもされてしまう。
 片や才色兼備、片や平凡以下の後輩モブ。許されるのは妄想ぐらいだ。
 こういう場所をふたりで歩きたいと妄想しながら、僕はいろんな風景を写真で切り取っている。せっかくだからとSNS上に投稿していたら、たくさんの反応をもらえるようになっていた。
 SNSでは、僕はヒーローだった。
「こういうところでデートできたらいいなって、つい思っちゃいます」
 アイコンでもわかる、背中に流れる黒髪が美しい人は、心の中を覗いたような感想をいつもくれる。
 僕も、想い人の彼女に言われてみたい。少なくとも、モブから名前のあるキャラには昇格できる気がする。
 口の中に苦味を感じながら当たり障りのない返事を打つと、ちょうど電車が目的の駅で止まった。
 十五分ほど歩いて、足を止める。小遣いをこつこつ貯めて購入したデジカメをリュックから取り出した。まずは歩道側から海に向かって一枚。空と海にはっきりと水平線が引かれた快晴で、コントラストの差が眩しい。
 左を見ると、数人上陸できそうな平たい陸地を中心に、三日月状に岩が数個並んでいる。クラスの男子がイカダでも漕いで行ってみたいよな、なんてふざけ合っていたのを思い出す。
 まるで隔離されたみたいに、穏やかな波音だけが鼓膜を撫でている。こんな雰囲気の中を彼女と談笑しながら歩けたら、どんなに幸せだろう。
 寄せる波がぎりぎり届かない場所に立ち、海岸沿いに視線を送る。こみ上げる想いを、レンズに込めてシャッターを切った。
 そのまま、砂浜に腰掛けて反対側を向いて撮る。海を背に上半身だけを振り返る笑顔を想像して陸地を入れずに空と海だけを捉えて撮る。二人で砂山を作っているところを想像して、製作途中の山と自らの手を入れて撮る。
「……なにやってんだろ」
 妄想のままにシャッターを切った回数は、いつの間にか三桁に突入していた。想いをこじらせている証拠だ。いくら募らせたとて、未来は変わらないのに。
 レジャーシートの上で仰向けになって構えていたカメラを下ろし、横になりながらスマホを取り出す。SNSを見ると、黒髪アイコンの人から返信が来ていた。朝、海が今日の舞台ですと投稿した内容に、律儀に反応してくれていた。
 ゆっくり身体を起こす。暑さが限界だし、ネタも十分に集まった。
「……ピンク?」
 歩道側に向かって俯きがちに歩いていると、砂浜では目立つ色が落ちていた。
 内側が咲き始めのソメイヨシノを思わせる、瑞々しく可愛らしい色合いの貝殻だった。
 ピンクを親指でなぞると、彼女の唇がよぎった。リップクリームを塗っているのか、薄色でつやっとしていて、他の女子に羨ましがられていた。
 いよいよ変態じみてきた。そう呆れながらも、撮影の準備を止められない。
 再び、波際に歩み寄っていく。親指ほどの高さの山を作り、ピンク色の側を自分に向けて立てる。
 シートを再び広げてうつ伏せに肘をついて寝そべり、液晶モニターを覗き込む。貝殻にピントを合わせ、ぼやけた海を背景に入れる。
 波音を、機械音が一瞬横切った。
「……かわいいな」

『あの写真の場所、私、知ってます。家の近くなのでびっくりしました』
『貝殻、すごく可愛いです! 私も今度探してみようと思います』
 僕は一週間後、再びあの海に出向いていた。SNSの受信ボックスに届いていた感想に、舞い上がっていたのだと思う。
 今日は、素直に景色を収めようかな。
 あの日と違い、空には薄い膜が張り巡らされていて、彼方を見つめるほど地上との境界線がぼやけている。また違った雰囲気が楽しめそうだ。
 構図を探そうと波打ち際から少し離れて、海に沿って歩き出した足は――ふいに止まる。
 最初に目に入ったのは、黒い頭だった。両頬のあたりから髪が一房ずつ垂れて、ゆらゆらと踊っている。水色のジーンズに覆われた足を少しずつ前進させながら、頭を軽く左右に振っている。
 カメラを握る手に、力が込められていく。第六感がガンガンと主張している。このシルエットに覚えがあるはずと、繰り返し訴えている。
 もう五センチも縮まって腕を伸ばせば触れられそう。そんな距離で、相手は足を止めた。
 ――呼吸の仕方が、わからなくなった。

「あ、ご、ごめんなさい。捜し物をしてたから、気づかなくて」

 上品な響きの声が、聡明な瞳が、僕に向けられている。
 現実を疑う僕に追い打ちをかけるように再び、第六感が主張を始める。そんな偶然があるわけないと冷静な部分が訴えているのに、高まる高揚を止められない。

「それって、ピンクの貝殻ですか?」

 僕は、少しでも対等に近づけただろうか?畳む

お題SS 編集

予想外のプレゼントは七夕

#男女もの

「体調不良版ワンドロ/ワンライ」 さんのお題に挑戦しました。
お題は『七夕』です。
友達が仕組んでくれたおかげで、ずっと好きな彼がお見舞に来てしまった。私は無下にする真似もできなくて……。

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 重い身体を動かして玄関を開けた私は、固まってしまった。
「……どうも。見舞いに来た」
 おそらく今日の講義で配られたであろうプリント数枚とビニール袋を掲げて見舞いアピールをしている。いや、別に来てくれたのは構わない。わざわざ持ってきてくれたのもありがたい。
「え、ええと、なんであんたが?」
「いや、お前が休みだって聞いて、見舞い引き受けたんだ」
 風邪を引いたみたいだから今日は休む、と連絡したのは同性の友人にのみだった。幸い授業は二つだけで、小テストのような重要性の高いものも予定されていなかったからこそ休みにしたのだが、見舞い相手が彼だというのは全くの予定外だった。
『差し入れついでに見舞い行ったげるよ。楽しみにしてて~』
 なにが楽しみなのかと疑問に思っていたが、そういうことだったのか……!
「と、とにかく上がっていいよ」
「えっ、いいのか? 別に俺、ここで帰ってもいいんだけど」
「せっかくだから、授業でなにかあったか軽く聞いておこうかなと。ほら、結構難しい授業でしょ? あれ」
 我ながらよくわからない理由を述べつつ、内心で無下に追い返すのも申し訳ないためだと懸命に言い聞かせて招き入れる。やはり彼はためらっていたけれど、上がることを決意したらしい。遠慮がちに肩をすくめながらついてくる。
「結構きれいにしてんだな」
「あんまり、物を置いておきたくないのよ」
「ふーん。今流行りのミニマリストってやつか」
「そういうつもりでもないんだけど」
 プリントをまとめたクリアファイルをテーブルに置いたあと、冷蔵庫を開けてもいいかと聞かれたので頷く。飲み物以外にもなにかを買ってきてくれたらしい。
「あいつらからの差し入れも入ってるから。遠慮なく食べてねって言ってた」
「ありがとう。正直、すごく助かったよ」
「熱あるのか?」
「ちょっとね。あんまり高くはないんだけど、身体動かすのはしんどいかな」
 それなら早めに説明を済ませると前置きして、彼は今日の授業について簡素にまとめてくれた。頭がいい人だなと最初から思っていたが、その感想は間違っていなかった。
「ありがとう! これならプリント見返しても大丈夫そう」
「難しいのは本当だからな。ちょっとでも力になれたならよかったよ」
 わずかに口端を持ち上げて微笑む彼はとても爽やかだ。風邪のせいじゃない熱が、ぐっと奥から湧き上がる。
 この授業は名前だけでも難易度が高いとわかるもので、取っている生徒はとても少なかった。
 そこで出会った彼に、多分私は一目惚れをした。
 理由はよくわからないけれど、「この人と付き合いたい」と思ったのだ。
 自分から他人に話しかけにいく行為は不得意ではなかったはずなのに、彼に話を振る瞬間は戸惑うくらいに緊張した。でもそれが功を奏したのか私と彼の仲は順調に深まり、今では互いの友人も交えて仲間のような空気ができあがっていた。
 だから、私の友人は気を利かせて彼をわざわざ寄越したのだ。
 彼も彼だ、別にお人好しを発揮させてわざわざ引き受けなくてもいいのに……。
 素直に嬉しいと思う部分と、申し訳ない部分と、素直になれない部分がゆるい喧嘩を繰り広げている。
「……あ、友達かな」
 落ち着かなくなってしまった気持ちを見計らったかのように、スマホが小さく震えた。なんともいえない空気になってしまった空気を壊してくれた誰かに感謝しながらスリープを解除して……ロック画面に表示されていたメッセージに思わず息をつまらせた。
「お、おい大丈夫かよ?」
「だっ、大丈夫! ごめん、なんでもない、からっ」

 ――彼とはうまくいってるー? 今日は七夕だ、この際だから願い事言っちゃえ! 好きだって言っちゃえ!

 病人に鞭打つような真似してどうする! とものすごく突っ込みたい。突っ込みたいが、それはあとだ。彼が帰ってから存分に文句を言ってやる。
「顔、すごい真っ赤だぞ……? なんでもなくないだろ、それ」
 彼は少し戸惑うと、長い腕を伸ばして背中に手を添えてくれた。天然って恐ろしい。さらに動揺させるようなことを平気でしてくる。
「ほ、ほんともう大丈夫だから! 背中、ありがと」
 身をよじるのはやりすぎだろうかと心配になったが、それよりも自身の平静を取り戻すのが先だった。
「……友達がね。今日は七夕だよって、ばかみたいなお願い事送ってきたのよ。それでつい吹き出しちゃって」
 とっさの嘘にしてはうまくできたと思う。普段の友人を知っているからだろう、彼は納得したように小さく笑った。
「どうせ今すぐ彼氏がほしいとか、そういうやつだろ」
「そ、そうそう。よくわかってるじゃん、さすが」
 彼氏、という単語に激しく動揺してしまった。まさか、彼も彼女がほしいなんてことを願って……?

「お前は、どうなんだ?」

 一瞬、問われた内容の意味を理解できなかった。
「お前は、そういう願い事……あるのか?」
 彼の視線は、とてもまっすぐだった。穴が開きそうなくらいに私を見つめているのではないかと思うくらい、熱のこもった視線だった。
「わたし、は……」
 どうしてだろう。告白されているような気分になるのは、どうしてなんだろう。
 他でもない、彼から。ずっと想い続けてきて、そのうち告白するつもりだった、彼から。
「もしあって、迷惑じゃなかったら……俺に、しろよ」

 私は、私に起きていることを理解できなかった。
 説明なら、できる。彼の唇が、私のそれに重ねられている。
 湿気の多いこの時期でも関係なしにかさついた感触が、優しくふさいでいる。
 そして、彼は小さく謝りながら今まさに背中を向けようとしている。

「逃げないで」
 布団から腕を伸ばして、シャツの裾を掴む。
 足を止められた彼は、なおもこちらを振り向かなかった。
「私の返事を聞かないで、逃げようとしないで」

 自惚れてもいいってことなんでしょう?
 私は、もっと未来にするつもりだった告白を、ここでしていいってことなんでしょう?
 友達からもらった笹の葉に、素直な願い事を書いてもいいんでしょう?

「……逃げないから、離してくれ。ちゃんと、聞くから」
 振り向いた彼は、まるでこの世に絶望したような顔をしていた。きっと勢いでしてしまったんだろう。
 でも、その誤った勢いが、私には思わぬプレゼントだった。
 ちゃんと笑っていられてるかな。できればきれいに着飾って、雰囲気のいいときに告白したかったけど、降って湧いたチャンスを逃したくなんて、ない。

「ずっと好きでした。私と、付き合ってください」畳む

ワンライ 編集

彼女は可愛い王子様

#CPなし

「深夜の真剣物書き120分一本勝負」 さんのお題に挑戦しました。
使用お題は①宴席 です。
飲み会に勝手に参加した彼を怒る彼女。

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 帰り道、すれ違う他人がいちいちこちらを振り返るたび、恥ずかしくてなんでもないと言い訳したくなる。
 それでも、一度こうなってしまった彼女を止める手立ては、自然と熱を覚まさせる以外になかった。
「もうさ! どうしてわたしに黙って飲み会なんかに参加するのよ?」
「こうなるってわかってたし、俺がお前をああいう場に参加させたくないってのもわかってるだろ?」
 彼女の勢いは、わかりやすくほんの少しだけ弱まった。


 断ることが多いゼミの飲み会にこの日参加したのは、たまには顔を出せと友人にせっつかれたからだった。
 確かに、いつも世話になっている仲間たちとの付き合いは大事だと思って承諾したものの……驚いた。
 待ち合わせ場所に着くと、まるで「わたしも呼ばれていました」と言わんばかりに、ゼミのメンバーでない彼女もその場にいたのだから。にこやかに近寄ってきたときは正直背筋がかゆくなった。
「お前に声かけたあと知ったんだけど、いつの間にかメンバーに入ってたんだよ。黙ってたのは悪かったけど、まあ、仲良くさせてもらってるからいいかなって。華やかにもなるしさ」
 それが表面だけの謝罪だと知っている。
 俺が言うのもなんだが、彼女はモテる。瞳は感情をはっきり伝えるように大きく、目蓋も羨ましがられる二重。活発な性格らしく肩まで伸ばした髪は生まれながらの栗色で、男女分け隔てなく接するからか基本的に嫌味がない。
 だからこういう異性が大勢いるような場所にはなるべく参加させない、仕方なく参加した場合は俺がさりげない盾役となって守ると決めていた。
 この「さりげない」は結構大変だからこそ――なにせ敵をなるべく作らないようにしながら任務を遂行するのだ――内緒にしていたのに、一体どこから嗅ぎつけたのか。

「わかってないのはそっちもだからね」
 弱まったといっても他人に興味を持たれるほどの勢いには変わりないので、偶然見つけた公園に連れて行くことにした。ここで互いに頭を冷やしたほうがいいだろう。
「そっちも大概モテるの知ってるよね? わたしが言い寄ってくる女たちをブロックしまくってるの知らないの?」
 人差し指を額にぐいぐい押し付けて、間近で睨みつけてくる。そんな顔も可愛いから本気で怒れない、と素直に告げたら調子に乗りそうなので当然飲み込む。
「知ってるよ。感謝してる」
 そっとおろした人差し指を、手ごと包み込んで告げる。照れを隠すためか、彼女は思いきりそっぽを向いた。
 俺の隣をキープし続けて、友人たちとの会話が途切れた、あるいは混ざれそうな瞬間を狙って来ようものならすぐさま彼女が横槍にはいる。横槍、というとあからさまな印象を受けるが、俺もそうと自信が持てないくらい自然に意識を逸らしていた。

 自分で言うのはもっとどうかと思うが、俺もなかなかにモテる。彼女が言うには、女子ウケしそうな甘めのマスクで、腹が立つくらい文武両道、なのに驕る部分がないから同性からも嫌われにくくて、それがさらにモテる要因となっているらしい。
「久しぶりの王子様登場だったから、今日は一段とすごかったわよ。さすがにわたしのことマジウザって思われてもおかしくないかもね」
 そのわりには全く意に介していない。さすが、鋼の精神をもつだけある。
「俺も、久々のお姫様登場って感じだったから紹介してくれだのID渡してくれだのアピールがすごかったぞ。受け流すの大変だった」
 悪く言えば八方美人だから、「俺にも脈があるかも」と勘違いするのだろう。今まで一度も誰それが気になる、といった類の話を聞いたことのない身としては、ただただご愁傷様と拝むしかできない。
 まあ、仮にそんな話をしたものなら、相手が待っているのは破滅だけかもしれないが。

「お姫様とか……やめてよ。そういう柄じゃないわ」
 外灯に照らされた彼女の頬は、わずかに赤く染まっていた。伏せた目線も、普段とのギャップを考えると実に可愛らしい。
 実に女らしい反応に微笑ましくなる。目にした誰もがきっと、一発で恋に落ちるだろう。
 だから俺がいる。
「俺だって王子様なんて肩書、全然ふさわしくないね」
 俺を見上げた彼女は、悪戯をしかける子供のような笑みで頬をつついてきた。
「確かに、腹の中はいろいろ渦巻いてるものね~。わたし以上にエグい守り方するときもあるぐらいだし?」
「人聞きが悪いな。今日は一緒に頑張ってる仲間たちだったから、優しく丁重にお断りしたさ」
「エグい」方法を取るときは、彼女を好きな気持ちが暴走しているヤツを相手にするとき限定だ。例を挙げたら信用を失いそうだから心の中にしまっておく。

「とにかく。こういう飲み会にどうしても参加するときは、絶対わたしにも声かけて」
 目をそらすことを許さないとばかりに、頬を包み込まれてしまう。
「下手な虫がついてきたら困るでしょ。信じてるけど、やっぱり不安なの。わたしの目の届くところで守りたいの」
 大きな双眸がまっすぐに俺を射抜く。ある意味、王子様という称号は彼女にこそふさわしいとこういうときは特に思う。
「わかったよ。下手な誤魔化しはやっぱり通用しないみたいだし?」
「当たり前じゃない。何年同じ屋根の下で暮らしてると思ってんのよ」
「生まれたときから一緒だもんな」
 頭を撫でると、頬を小さく膨らませて振り払う。歳が同じなのに妹扱いをするなと言いたいらしい。
 そういう反応も可愛いからついやりたくなるのだが……これも言わないほうが身のためだ。
「そういうお前こそ、うかつに飲み会に参加するなよ。参加するなら俺にちゃんと言えよ」
 先に歩き出した彼女の背中に告げると、ひらひらと手を振っただけの返事をされた。
 本当にわかっているんだろうか? つい不安になるけれど、物心ついたときから彼女の一番が俺であると知っているから、きっと疑うだけ無駄なんだろう。畳む

ワンライ 編集

二人をつなぐミモザ

#BL小説

「一次創作BL版深夜の真剣120分一本勝負」 さんのお題に挑戦しました。
使用お題は『イラスト課題(下記ポストURLをクリック)』です。
高校生のときに好きになった彼・高梨を忘れられず、同窓会で絶対に告白すると決めて臨んだ主人公・高崎のお話。

https://twitter.com/sousakubl_ippon/stat...


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『写真、撮ってもいい?』
『いいよ。……でも、撮るならこの場所でいいかな?』
 今でも考える。
 どうして高梨は、わざわざミモザを背景に選んだのだろう。

「久しぶり。元気だったか?」
「うん。そっちも相変わらず元気そうだね。安心した」
「相変わらずって、なーんかバカにされてる気分」
「そんなんじゃないってば」
 頬をそっとなぞるような控えめな声と少し眉毛が垂れる特徴的な笑顔に、あの頃の雰囲気があっという間に戻る。
 高校を卒業してから初めての同窓会に呼ばれて、まず確認したのは高梨の出欠だった。
 どうしても逢いたかった。逢って、だめでもいい。最悪縁が切れてしまってもいい。捨てられなかった想いを伝えたかった。
「どうしたの? おれの顔、なにかついてる?」
「いや、ごめんごめん。本当に久しぶりだなーって感慨にふけってただけ」
 気づいたら、ぼうっと高梨を見つめていたようだ。とっさの嘘はうまくいったらしい。
「お前ー、ますますキレーな顔しやがってずるいぞ! どうせ大学でもモテモテなんだろ、ん?」
 自分の左隣にいた、今も付き合いが続いている友人の冗談が飛んでくる。思いがけず訊きたかった質問をしてくれて、内心で思いきり親指を立てる。
「えっ、そんなことないよ。ほら、おれって大人しすぎるから目立たないし」
 彼は謙遜しているが、知っている。おとなしくても分け隔てなく優しいし、そばにいると落ち着くから、実は相当女子からの人気は高かった。今も隙あらば自分のポジションを奪い、少しでも点数を稼ぎたいと狙っている複数の目をびしばし感じている。
 だからこそ彼を壁際に座らせ、たったひとつの隣を奪わせてもらったのだが。空気なんて読んでやらない。
「二人はどうなの? 二人こそできててもおかしくないじゃない」
「ま、俺は……な。もしかしたらできるかもしれん」
 その話に食いついたのは周りの面々だった。あっという間に餌食にされた友人に今度はハンカチを振ってやる。
「高崎は? ……いるの?」
 なぜか怯えたような表情になる高梨に慌てて首を振る。
「いるわけないだろ? 毎日忙しくて、そんな余裕もないっていうか」
 忙しいのだけは、嘘じゃない。
 高梨を忘れた日はなかった。クラスが一緒になって、後ろの席に座っていた彼をひと目見た瞬間に「好き」の感情を抱いてから、決して暴かれてはならない秘密の片想いを続けてきた。
 でもそれも、今日で終わる。
「でも、好きな人はいるんじゃないの?」
 こちらに目線はくれず、高梨は呟くように問いかけてくる。
 一瞬、内心を覗かれたのかと思った。そういえば、恋愛の話をするのは初めてかもしれない。
 なぜか、嘘をついてはいけない気がした。かといって突っ込まれてもうまく誤魔化せる自信はない。
「おれはね……いるよ」
 耳から、周りの喧騒が消える。視線の先にいるのは表情の読めない、いや押し殺しているように見える高梨のまっすぐな双眸だけ。
 中性的で大人しそうに見えて、自我を曲げない意志の強さが一番に表れるこの瞳が好きだ。
 彼は今、なにを胸に抱いているのだろう。なにを、伝えたいのだろう。
「高崎が撮ってくれたおれの写真、まだ持ってる?」
 酒も手伝ってか、ふわふわとした頭で反応が少し遅れた。ポケットに入れていたスマートフォンからアルバムを起動して、お気に入りにしていた写真を拡大する。高梨だけの目に触れさせたくて、不自然にならないよう手首に角度をつける。
「……懐かしいね」
 覗き込んだ高梨は微笑む。ただ嬉しいだけじゃない、どこか既視感を覚える、若かりし頃の失敗を振り返るような雰囲気と似ていた。
 離れ離れになる前に、写真という形だけでも高梨を手元に残しておきたかった。下手な言い訳でも彼は快く許可をくれて、学校の花壇にあったミモザの花の前で微笑みをくれた。
 端末を握る手に一瞬、力がこもる。既視感はそれだ。その時の笑みと、そっくりなんだ。
「おれ、ずっと後悔してたんだ。ちゃんと、言えばよかったって。怖いからって、回りくどいことしなきゃよかったって」
 心音が強くなり、間隔も狭まる。今の自分と似ているのも偶然、なのか?
「あの、」
 続きは、幹事の終了を知らせる主催者の声にかき消された。仕方なく帰り支度を始めるが、きっと高梨はわかってくれている。確証はないけれど、そんな気がした。


 同窓会が高校から比較的近い場所で開催されたおかげで、よく道草をした公園に行くことができた。
 さほど広くないから遊具も少なく、子供の遊ぶ姿はあまり見かけなかったが、それがかえって寄り道しやすかった。
「……高崎、手、いつまで掴んでるの」
「ごっ、ごめん」
 ようやく頭が少し冷えて、強引に繋いでしまった手を解放した。恥ずかしさで逃げ出したい気持ちを懸命に抑え込む。
 二次会の誘いを断っただけでなく、勢いのままに高梨を連れ出してしまった。きっと彼を狙っていた女子からは非難轟々の嵐で、明日あたり誰かから文句混じりのレポートでも届くだろう。
「でも、ありがと。おれ、二人で話したかったらちょうどよかった」
 照れの混じった笑みが素直に可愛いと思えて、だいぶ理性が緩んでいることを悟る。こういうとき、中性的な容貌はある意味目に毒だ。
「さっきの、続きだよね」
 一度ためらうように視線を泳がせて、改めて高梨はこちらを見上げる。
「その前に、さ。ちゃんと教えてほしいんだ。高崎、好きな人……いるの?」
 彼の誠実さに、今度は逃げず正面から向き合わなければならない。
「いるよ。高校のときから、ずっといる」
 ひとつ頷くと、再度撮った写真の表示をお願いしてきた。
「ミモザの花言葉って、知ってる?」
 写真を差す指はよく見ると震えていた。戸惑いつつ首を振ると、調べるよう促される。
 微妙な緊張感が二人の間に流れている。早く結果を表示してくれと、祈るような心地で画面が切り替わるのを待った。
「出た! えっと、花言葉は……」
 反射的に言葉を読み上げて……ある内容で、止まる。
 ――秘密の、愛。
 改めて視線を向けた先の高梨は、薄闇でもわかるほどに瞳を潤ませていた。思わず頬に手を伸ばすと、微熱でもあるのかと錯覚しそうな熱さが返ってくる。
「黄色いから、秘密の恋って言葉も、あるんだよ」
 夢の中にいるような心地だった。端末をポケットに突っ込んで、もう片方の手も頬に触れる。
 高梨の両手が自分の頬に触れる。少しひんやりとした感触が、夢見心地を覚ましてくれる。もうごまかさなくていいのだと、素直になっていいのだと伝えてくる。
「……先に、言ってくれてたんだな」
 高梨の前では格好つけたいのに、高校のときからどうにもうまくいかない。
「俺、ちゃんと言うつもりだったんだ。ずっと好きで、忘れられなくて、でも勇気が出なくて……絶対今日、言おうって決めてきたんだ」
 泣きそうになる。その顔だけは見られたくなくて強引に腕の中へおさめるも、背中に回された感触が、容赦なしに涙腺を刺激してきた。
「おれも同じだよ。言ったでしょ? 回りくどいことしなきゃよかったって」

 背中を向けていたのは、互いに一緒だった。
 でも、この写真が二人を繋ぎとめて、ひとつにしてくれたんだ。畳む

ワンライ 編集

すべてが今さら過ぎたけど

#男女もの

「深夜の真剣物書き120分一本勝負」 さんのお題に挑戦しました。
使用お題は『①嫌々』です。
高校卒業を控えた幼なじみ同士のお話。ノーマルです。

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「そんなこと言わないで、一緒に記念のアルバム作りましょうよ!」
「そんな辞書並みに分厚いアルバム、どんだけ撮るつもりなんだよって言ってんだろ! もう少し薄いのにしろって」
「で、でも、もうすぐ卒業なんですよ? 思い出で埋め尽くしたいじゃないですか! それに、今まで撮ったぶんもここに収めますし」
「収めてもまだだいぶページ残るだろ絶対……」
 オレンジに変わりつつある光の差し込む部室で、部長である幼なじみと俺のせめぎ合いが続いていた。かれこれ十分は経過していると思う。
 彼女は赤い表紙のアルバムを抱き込むように握りしめて、顔を歪めた。
「……お願いです。お願いですから、アルバム作り、協力してください。もう、こんなわがままは最後にしますから」
「最後って、大げさな」
 苦笑しながら言ってみたものの、初めて見る彼女の姿に内心は戸惑っていた。
 卒業を目前にしてセンチメンタルにでもなっているんだろうか。中学の卒業式は少し泣いたぐらいで、ここまではっきりとした態度には出していなかった。
「お願い、です」
 一歩距離を詰めて、縋りつくように見上げてくる。ここで普段はちっとも有効活用していない、可愛らしい容姿を武器に攻めてくるとは、本当に昔からずるい。
「……わかった、わかったよ。写真撮ればいいんだろ」
 盛大に溜め息をこぼして承諾すれば、一瞬で花が咲いたように笑顔になる。泣き笑いと言ったほうが正しいかもしれない。
「ほんと大げさだな。まあ、今までの頼み事に比べたらずいぶんマイルドだけど?」
 こいつの「お願い」にはさんざん振り回されてきた。腰までの長い黒髪にヘアバンドという、大和撫子――ただし古め――という四文字熟語が似合う容姿をしているのだが、中身は正反対と言いきってもおかしくない。見た目で惚れて蓋を開けた瞬間去っていった男を今まで何人も見てきている俺だから間違いない。
 とにかく面白そうなことがあれば果敢に首を突っ込みたがるのだ。もれなく俺もお供にされる。一番過酷だったのは、富士山でのご来光を写真に収めたいがために登山のお供をお願いされたときだ。プロのガイド付きでも、並みの体力しかなく登山の経験も全くなかった俺には、宿泊つき登山はハードルが高すぎた。彼女も同じ立ち位置のはずが下山するまでずっとはしゃいでいて、いろんな意味で負けた気がした。
「……そうですね。本当に、たくさん振り回しちゃいましたよね」
 普段なら「まだまだ付き合ってもらいますよ!」とでも返してきそうなのに、なぜかマジレスされてしまう。
「お、おい?」
「じゃあ、早速明日から少しずつ撮影開始しましょうね! わたし、ざっくりと計画を練ってきます。校内でも校外でも、撮りたいものいろいろあるんです」
 はぐらかされた? 追求したくても、彼女はアルバムを棚に戻すと逃げるように部室をあとにしてしまった。
「なんだ? あいつ……」
 あのぶんだと、改めて問いかけても答えてくれそうにはない。今時珍しく、携帯電話の類はなにも持っていないから、今すぐ追求できないのももどかしい。
 違和感を拭えないまま、とりあえず帰ることにした。
 ふと、今さらな事実に気づく。中学校からの付き合いなのに、今まで一度も下校を共にしたことがなかった。


 アルバム作りは、予想通り面倒な作業となった。
 彼女が持ってきた計画をこなすには、放課後だけでは全く時間が足りず、休日も贅沢に使ったものとなった。
 そして……あの日に抱いた違和感が、日に日に大きくもなっていた。

「これで最後ですね!」
 構えていたデジタルカメラを下ろすと、彼女は両手を上げて小さい子供のように喜んだ。
「いやー、時間かかったな……マジでギリギリじゃん」
 卒業式は三日後だ。写真の選定は彼女がするらしいが、本当に間に合うのだろうか。
「本当にお疲れ様でした。たくさんいい写真が撮れて、本当によかったです」
 心からの笑顔を向けてくる彼女に、焦りの色は全く見られない。こうと決めたときの行動の早さは折り紙つきではあると知ってはいるものの、手伝った身としては心配してしまう。
「なあ、俺、本当に手伝わなくていいのか?」
「いいんですよ。わたしが言い出したことですし、わたしがやりたいんです」
 言い切られてしまっては、これ以上なにも言えなくなる。
「あ、アルバム、ちゃんと二冊作りますからもらってくださいね? 間に合わなかったら郵送しますし」
「え、いいよそこまで……」
「いいから! せっかくです、受け取ってください。あとで住所、教えてくださいね」
 まただ。彼女は縋りつくように俺を見つめてくる。静かな気迫に押されて、頷くしかできなかった。
「ここ、懐かしいですよね」
 改めて背後を振り返り、呟く。もやもやした気持ちを持ったまま、また頷いた。
「中学のとき、この商店街にある食べ物全部食べて回りたい! って言ったときの顔、未だに覚えてます」
「そりゃそうだろ……初めての遊びがアレって、インパクトありすぎるわ」
 食べられないものあるかもしれないとか、お金はどうするんだとか、そういう当たり前の疑問を豪快にすっ飛ばして店に入りまくった彼女の恐ろしさを、その日だけで一生分味わった。にもかかわらず、未だにこうして付き合いが続いているのも不思議だとつくづく思う。
「なあ、今さらだけどさ……あのとき、お金ちゃんと全部払ってたろ? それって、お前が金持ちだから、とか?」
 彼女は自身のことをほとんど語らない。あまり触れてほしくないからかもしれないが、勢いで訊いてみてしまった。
「そう、ですね。そんな大層なものじゃないんですけど、一応」
 彼女は苦笑しながら告げて、気まずそうに髪を耳にかけた。
「あの、黙ってたのは変な目で見られたくなかったからです。こう、普通の人として接してほしかったというか」
「別に今さらなんとも思わないって。普段のめちゃくちゃな行動力の謎、解きたかっただけだから」
 本当に安堵したように笑う。金持ちなりに、きっといろいろと苦労してきたんだろう。これ以上の追求はやめておいた。
 彼女は改めて、地元の店が並ぶ商店街を振り返った。遥か彼方を眺めるように、目を細める。
「……わたし、どうしてもこの場所をラストに持っていきたかったんです」
 だから、食べ歩きもしたのか。
「そうだ、せっかくですからツーショット撮ってもらいましょう? あの、すみませーん!」
 否定する間もなく、彼女の言う通りの流れになってしまう。多分微妙になっているだろう笑顔で、人生初の女子との二人きり写真がカメラに収められた。
「ふふ、ありがとうございました。いい思い出になりました」
 カメラを大事そうに見つめる彼女の瞳は、寂しそうだ。

「あの、さ」
 違和感を吐き出す瞬間は、今しかない。
「お前が作ろうとしてるアルバム……なんか、今までの思い出作り、って感じがするんだけど」
 この商店街だけじゃない。
 高校と以前通っていた中学校の通学路の風景、俺の家の周辺の風景、二人で遊びに行った……もとい、無茶を要求された場所――俺達が共有している思い出の写真が、特に多い。
 卒業文集のようなノリのアルバムを作ると思っていたのに、これではまるで、思い出のアルバムだ。
「それ、は……それは、気のせいですよ」
 明らかに動揺しておきながら、彼女は下手な嘘をつく。
「大学生になったら、こうして会える時間も減ってしまうでしょう? だから、その前にこうしてまとめておきたくて」
「俺、お前の進路知らないけど」
 俺は、単純に家から近い私立の大学に行くと答えた。
 彼女は、まだ進路を決めていないと言っていた。それきり、知らない。
「わたし……わたしも、大学行きますよ。でも、ちょっと遠いというか」
 なぜだ。どうして下手な嘘を続ける。
 どうして、俺の目を見て言わないんだ。いつもまっすぐ俺を見つめてくる、お前なのに。
「あ、もう時間ですね。わたし、帰ります。アルバムの作業もありますし」

 細い腕を、掴めなかった。
 掴もうと思えば掴める距離なのに、できなかった。
 わかりやすい拒絶をされて、情けないことに、足を動かせなかった。


 俺はスマホに表示されている地図のもとへ、全力で駆けていた。
 頭の中はいろんな感情がごちゃまぜになって、まずい料理を作ってしまったような状態だ。でも、その中で突出しているのは「怒り」かもしれない。

 ――こんな形で、あなたに本当のことを告げる卑怯さを許してください。
 わたしは、高校を卒業するまでしか自由を許されない身でした。
 だから、中学のときに出会ったあなたを気に入って、たくさんの無茶を繰り返していました。
 したいと思ったことを、できる限りやりたかったのです。あなたと一緒に、楽しみたかった。
 付き合わせてしまって、あなたの優しさに甘えてしまって、本当にごめんなさい。
 あなたが好きでした。いいえ、今でも好きです。
 でも、どうぞわたしのことは気にしないでください。
 どうぞ、いつまでもお元気で。

 卒業式の次の日に送られてきたアルバムに同封されていた一枚の手紙で、すべてが線につながった。
 彼女があんなアルバムを作りたがっていたのも。
 卒業式の日、第二ボタンがほしいとせがんで、一度でいいから抱きしめてほしいと懇願してきたのも。
 全部……今さらすぎる、種明かしだ。
 なんとなく、大学も変わらない関係でいられると思っていた。大人に近づくから少しずつ無茶も減っていって、俺も勇気を出して、無理なお願いは断ろうなんて小さい目標も立てたりしていた。
 呆れるほど呑気で、自分に腹が立って仕方ない。
「ちょっと、そこのあんた!」
 金持ちなのは本当だった。でも、彼女の謙遜が謙遜にならないほど立派すぎる屋敷で一瞬足がすくんだものの、門の前に立っている初老の男性に声をかけることで気合いを入れた。
「なにか御用でございますか?」
 身なりからしてこの屋敷の執事だとわかる。俺は勢いのまま、彼女の名前を告げて会いたいと申し出た。
「なるほど。あなた様が、お嬢様が大変お世話になったお方でございますね」
「……知ってるのか」
「はい。お嬢様より、あなた様が訪れた際は対応するようにと、ご命令いただいております」
 きれいなお辞儀をされて、出鼻をくじかれてしまう。
「お嬢様は、現在日本にはおりません。イギリスにおります」
 ……なにを、言われているかわからなかった。
「……大学は、イギリスってことか?」
「大学卒業後も、イギリスでしばらくお過ごしになられます」
「いつまで、だよ」
「それは、私ではわかりかねます」

 それから、いくら粘っても彼女がイギリスにいることしか教えてもらえなかった。
 イギリスってなんだ。なんでいきなり外国なんかに行ってるんだ。
 お前は、ずっと俺のそばで無茶なお願いをする奴じゃなかったのか。

「そう、か。俺も、あいつのこと……」
 また、今さら気付いてしまった。よかったのか、よくなかったのか、中途半端に興奮した頭では判断できなかった。
 でも、ひとつだけはっきりとわかっていることがある。
「このまま、終わりになんてできるか」
 大体、告白して逃げるなんて卑怯にもほどがある。いつも変に自信があるくせして、こんなときは臆病だなんてお前らしくもない。

「待ってろよ。絶対、あっちで再会してやるからな」
 口にして、俺もいつの間にか無茶体質が伝染していたんだなと、苦笑するしかできなかった。畳む

ワンライ 編集

2021年62件]6ページ目)

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