Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

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2021年1月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

きみはおれだけのものだから

#BL小説

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「一次創作BL版深夜の真剣60分一本勝負」 さんのお題に挑戦しました。
使用お題は『呼気』『許して』です。

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「許して」
 背中に届く声と呼吸のリズムは、まだ「普通」だった。
 細かく震えている程度なら、まだ「足りない」。

「許、して」
 次第に、呼吸の乱れが口調にも移り始めた。
 怖いものの苦手な人が、お化け屋敷の中間まで進んだような状態といえばわかるだろうか?
 でも、まだまだ足りないよ。君にはもっとわかってもらわないと。
 君が俺に対して、どんな愚行を犯したのかを。

「ゆる、して……おねがい、だから……」
 しゃくるような呼吸が混ざりだした。ようやく、自らの罪の重さを自覚し始めたのだろうか?
 自然と唇が持ち上がる。
 でも、まだ物足りないんだ。君はもっと、自分の立場というものを理解してもらわないといけない。
 何度、このくだらない茶番を繰り返していると思っているの?

「ごめ、なさ……も、二度としませんから……僕は、君だけのものだから……!」
 背中に引っ張られる感触を覚えた瞬間、身体ごとゆっくりと振り向いた。
 すべて想定通りの展開に、恋人の表情だった。

「本当に、わかってくれた?」
「俺のもとから逃げ出そうとしたくせに?」
「君は俺のものだって理解してくれたと、本当に信じていいの?」

 普段以上に大きい瞳を涙で埋めて、恋人は何度もうなずきを繰り返す。俺の腕をすがるように掴んだ手からは、はっきりとした震えが伝わってきていた。
 ああ、この表情がたまらない。
 俺から逃げられない、身体も心も完全に縛られていると実感できる瞬間は、麻薬にも似た高揚感を与えてくれる。

「二度と、自分の立場を忘れないで?」
 跪いて、小動物のような恋人に触れるだけのキスを与える。そのまま腕の中に引き寄せると、剥き出しになっている首筋に吸い付いた。
「君はずっと、俺だけのものだから。何があっても……ね」畳む

ワンライ 編集

使用お題:もって三日の絶交

#男女もの

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「フリーワンライ企画」 さんのお題に挑戦しました。
いろいろネタを考えたけど、結局素直に使って書きましたw

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 絶交だと言われたけど、私はそんなに気にしていなかった。
 だって彼は、自分で言うのもなんだけど私のことが本当に大好きで、多分私がいないと生きていけないような人だから、もっても一日だけだと思ってた。

 なのにおかしい。
 三日目が終わろうとしてるけど、大学に行っている間以外は部屋に引きこもって顔も合わせようとしてくれない。
 私の部屋だけにあるダブルベッドも私ひとりきり。そういえばひとりで寝るってはじめてだ。
 そんなに怒らせてしまったなんて……私は、無意識に甘えすぎていた? 確かに、彼はなんでも笑って許してくれる。
 ああ、そういえば最初の頃は懐の深すぎる彼に甘えないようにって自分でブレーキをかけていたけど、いつからか緩んでいたかもしれない。
 気づいたら涙がこぼれていた。泣く資格なんてないのに、勝手に流れてくる涙が悔しい。

 私も、彼がいないと生きていけないからだになっていたんだね。
 それに今頃気づくなんて……ほんと、ばかみたい。

「ごめんなさい! 本当にごめんなさい……!」
 部屋のドアを叩きながら叫ぶように謝って、その場に崩れ落ちてしまう。
 簡単に許されるなんて思ってない。自己満足って思われてもいい。とにかく謝って、また私に笑いかけてほしい。大好きだと言ってほしい。
 ややして、控えめにドアの開く音がした。
「……ごめん。今回は意地張っちゃったんだ。泣かせちゃって、俺こそ本当にごめんね」
 身体を包む三日ぶりのぬくもりに、違う涙が溢れた。畳む

ワンライ 編集

わずかになにかが変わった日

#BL小説

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「一次創作BL版深夜の真剣60分一本勝負」 さんのお題に挑戦しました。
使用お題は『ターニングポイント』『エイプリルフール』です。

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「なあ、付き合ってみねえ?」
 いつもの学校の帰り道、まるで世間話のように切り出した俺に、隣を歩く幼なじみは一瞬動きを止めた。
「……どこに?」
「場所じゃねえって」
 口元を引き結んで真剣に見上げる俺の姿に、さすがに意味を理解したらしい。それでも視線は戸惑ったように四方をさまよう。
「……ああ、そういえば今日ってエイプリルフールだったな。くだらねーこと言うなって」
 軽く笑い飛ばして、無理やりでも冗談ですませようとしている。
 ある程度予想はしていた。ショックはあれど、表には出さない。
 だから――強気に出てみるしかないと思った。

 腕を組んでみる。
「っお、おい」
 そのまま恋人繋ぎをしてみる。
「ま、待て。離せって」
 並んで立つと、俺の頭の位置がちょうど彼の肩口に来るから、寄り添ってみる。
「や、やめろってば!」
 力づくで距離を作った彼の顔は、引くというより戸惑いだけで満たされていた。

 赤い顔が可愛いと思えてしまった時点で、抱きしめてキスまでしたいと願ってしまった時点で、やっぱり俺はこいつのことを……。
 いつからだ? 記憶を高速で巻き戻してもわからない。
 気づけばこの目は、女子ではなく彼だけを追っていたのだから。

「な、なあ」
 気まずい空気にとりあえず割り込んだのは、彼だった。
「その、もっかい確認するけど……エイプリルフールは、関係ないんだよな?」
 一語一語、噛みしめるように問いかけてくる。そういえばこいつは、根はとても真面目な性格だった。
「……うん」
 目を微妙にそらして頷く。今になって急に怖じ気づいてきてしまった。
 でも、ここまで行動しておいて黙ったままもずるいだけだ。もう一度、勇気を振り絞らないといけない。

「お前を見る目が、気づいたら変化してて」
「本当に、そういう目で見てるのかどうか、確かめたくて」
「勢いだけで、あんなこと言って、手繋いだりした」

 また目をそらしたい臆病さを何度も押し込んで、まっすぐに視線を向けてくる彼を捉え続けながら白状する。改めて考えれば、俺自身のために気持ちをまるっきり無視して利用したようなものだ。怒られても何も言えない。

「で、どうだったんだよ」
「……え?」
「だから、結果だよ。そういう目で見てたって、確定なのか?」
 予想もしなかった展開に頭が追いつかない。どう答えればいいのか戸惑っていると、突然彼は背中を向けてしまった。
「お、おい?」
「言えないなら、俺もなにも教えてやーんない」
「ちょ、ちょっと待てって。教えるってなにを? どういうことだよ?」

 俺をわずかに振り返った幼なじみの目は、どこか柔らかく見えた。畳む

ワンライ 編集

文字書き60分一本勝負SS・身長差

#男女もの

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「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」さんのお題に挑戦しました。
お題を素直に使った、身長差のある学生カップルのお話。

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 私と彼の身長差が羨ましいとよく言われる。

 特に、包み込むように抱きしめられると嬉しいでしょ、守ってもらえてるみたいでいいよね――そういったセリフを何度浴びせられたかわからない。
 でもね、現実は憧ればかりがつまっているわけでもないんだ。

「相変わらずの不機嫌顔だねえ」
 学校から家までの道を、いつものように並んで歩く。百八十を超える身長の持ち主である幼なじみの恋人はずっとにやにやしっぱなし。腹立つ。彼の頭ひとつぶん低い私の歩幅にちゃんと合わせてくれているのがまた、悔しい。
「『私も見下されたい!』とか『背中から包み込んでほしい!』とか言われまくったらね。憧れるほどでもないけどって口酸っぱく反論したいわよ」
 実際したこともあるが、照れちゃって〜! とツンデレ扱いされて終わってしまった。面白がっている隣の恋人しか理解してくれていないというのが、実に悲しい。
「俺は好きなんだけどなぁ。お前、ほんとすっぽり抱きしめられる大きさなんだもん。心地いいっていうか」
 言いながら抱きしめられて、慌てて身じろぐも全く動けない。しまった、完全に油断していた。
 ……別に、こうされるのが嫌なわけじゃない。ただ、こういう「小さくてかわいい」みたいな扱いを全面に出されるのは性に合わないだけで。
「まあでも、お前はうんと女の子扱いされまくるのいやだもんな。うんうん、わかってるって」
 子どもにするみたいに頭をぽんぽんとされて、顔が熱くなった。こいつ、まさか……。
 彼の服の裾を握りしめると、ふいに抱擁が解かれた。短く名前を呼ばれて反射的に顔を持ち上げてしまい――すぐ、後悔するはめになる。

 その「目」だ。
 普段つけている仮面をいっさい取り払って、ただひたすらにまっすぐな視線を注ぎ込まれてしまうと、私はとたんに身動きができなくなってしまう。
 お前が大好き。誰にも渡せない。これからもお前だけを想い続けるから。
 直接そう囁かれているような気持ちになってしまって、身も心も預けてしまいたくなる。
 真正面から向き合うときとは違う。ずっと高い場所から見つめられることで、「男」と「女」を意識して、普段の私が行方不明になりそうになる。
 思えば、昔から「目は口ほどにものを言う」タイプの人間だった。だから、私もこうしてやられてしまったんだろう。

「かーわいい」
 触れるだけのキスをされても、いつもの抵抗はできなかった。今の私は、いつもの私じゃなくなっている。
「なあ、俺んち……寄ってくだろ?」
 確信に満ちた笑みさえ、素直に格好いいと思ってしまう。返事まで素直に返すのだけはためらって、服を握りしめたままの手に力を込めて、俯きがてらうなずく。
「お前さ、急激にかわいくなんのやめてよ。俺も大変だよ」
 意味わかんない。私はそんなつもり全然ないんだから。
 服を掴んでいた手は、いつの間にか彼の大きな手のひらに包まれていた。そのぬくもりを噛み締めながら、「女」もいいかもしれないと、少しだけ素直に思った。畳む

ワンライ 編集

偽りからの卒業

#BL小説

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「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」さんのお題に挑戦しました。
お題は『卒業』です。主人公のモノローグオンリーです。

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 卒業するんだ。

 恐怖はある。肩まで伸びた、軽くくせのある髪を切るためのはさみは、握る手の震えを受けて役目を果たせそうにない。
 悪いのはすべて自分。笑顔を向けてくれて、ときには二人きりで遊びにも誘ってくれた彼をずっと騙して、でも本当の自分をさらけ出せずにここまで来てしまった。

『君のこと、ずっと好きだった』

 告白してくれたのに、逃げてごめんなさい。
 変わらずバイト先に来てくれて、何もなかったように振る舞わせてしまってごめんなさい。

 本当は好きだと、付き合って欲しいと言いたい。
 でもきっと失望する。冷たい視線を向けられて、捨て台詞のひとつでも吐かれて目の前から立ち去ってしまうだろう。
 胸が締め付けられる。今までのツケが回ってきただけなのに苦しいなんて、自分でもいやになる。

 気づけば、向かいにある顔が醜くゆがんで揺らめいていた。
 馬鹿としか言えない。みっともなく泣くくらいならさっさとやめて、本当の自分で勝負すればよかったんだ。諦めろと言い聞かせてもできなくて、なのに向けられる好意に甘え続けた結果が「これ」だ、自業自得にほかならない。

 はさみを、改めて握りしめる。
 目元を荒々しくこすって、弱さの象徴を見つめる。

 彼が好きなのは、都合のいい夢を見続けた偽の自分。
 自分が好きなのは、常に本当を見せてくれた彼。
 フェアじゃないままの恋ほど、虚しいものはない。

 髪を空いた手でつかみ、刃を当てる。
 しゃくり、しゃくり、音をたてるたびに、影に隠れていた、情けなくもがいていた自分が暴かれていく。

「はは、なんか……あっけない」

 スマートフォンを手にとって、履歴の一番上にある彼の番号をタップする。呼び出し音がこんなに怖いと思ったことはなかった。

『も、もしもし?』
「こんにちは。……あの、今って時間、あります? その、話がしたくて」
『も、もちろん! じゃあ、場所は……』
「あの喫茶店でいいなら、そこで」
『オッケー! じゃあ、またあとで!』

 いつもより声が低いって、不思議に思わなかったかな。
 女言葉も使ってなかったけど、気づいてたかな。
 苦笑が漏れる。あのテンションじゃ、絶対気づいていない。安心すればいいのか、がっかりすればいいのか、自分もわからなかった。

「それじゃ、行きますかね。……オレ」畳む

ワンライ 編集

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