Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

カテゴリー
ハッシュタグ

きみはおれだけのものだから

#BL小説

20210101235533-admin.jpg

「一次創作BL版深夜の真剣60分一本勝負」 さんのお題に挑戦しました。
使用お題は『呼気』『許して』です。

--------

「許して」
 背中に届く声と呼吸のリズムは、まだ「普通」だった。
 細かく震えている程度なら、まだ「足りない」。

「許、して」
 次第に、呼吸の乱れが口調にも移り始めた。
 怖いものの苦手な人が、お化け屋敷の中間まで進んだような状態といえばわかるだろうか?
 でも、まだまだ足りないよ。君にはもっとわかってもらわないと。
 君が俺に対して、どんな愚行を犯したのかを。

「ゆる、して……おねがい、だから……」
 しゃくるような呼吸が混ざりだした。ようやく、自らの罪の重さを自覚し始めたのだろうか?
 自然と唇が持ち上がる。
 でも、まだ物足りないんだ。君はもっと、自分の立場というものを理解してもらわないといけない。
 何度、このくだらない茶番を繰り返していると思っているの?

「ごめ、なさ……も、二度としませんから……僕は、君だけのものだから……!」
 背中に引っ張られる感触を覚えた瞬間、身体ごとゆっくりと振り向いた。
 すべて想定通りの展開に、恋人の表情だった。

「本当に、わかってくれた?」
「俺のもとから逃げ出そうとしたくせに?」
「君は俺のものだって理解してくれたと、本当に信じていいの?」

 普段以上に大きい瞳を涙で埋めて、恋人は何度もうなずきを繰り返す。俺の腕をすがるように掴んだ手からは、はっきりとした震えが伝わってきていた。
 ああ、この表情がたまらない。
 俺から逃げられない、身体も心も完全に縛られていると実感できる瞬間は、麻薬にも似た高揚感を与えてくれる。

「二度と、自分の立場を忘れないで?」
 跪いて、小動物のような恋人に触れるだけのキスを与える。そのまま腕の中に引き寄せると、剥き出しになっている首筋に吸い付いた。
「君はずっと、俺だけのものだから。何があっても……ね」畳む

ワンライ 編集

No.22

Powered by てがろぐ Ver 4.2.0.
template by do.

admin