Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

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【300字SS】隣の悪魔

#男女もの

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300字SS  のお題に挑戦しました。お題は「手」です。

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手を離さないで。
確かにそう願った。懇願したと言ってもいい。
そうじゃないと自分を絶対保てないとわかっていたから。一番信頼しているからこそあなたに伝えた。
なのに……約束を破った。予想通りの醜態を晒す私を、泣き叫ぶ私を、あなたは残酷にも見捨てた。
「任せろ」と言ったあの力強い声は演技だったの? 見抜けなかった私が馬鹿だったの?
ああ、もう何も信じられない。全くどっちが役立たずなんだか……

「だから悪かったって! あんな怖いお化け屋敷だって思わなかったんだよ!」
「知らない! 無理して付き合ってあげたのに……信じらんない!」畳む

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【300字SS】宝物=言葉か行動か

#男女もの

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300字SS  のお題に挑戦しました。お題は「宝」です。
ベッタベタなネタになりましたw

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大好きだよ。
めんどくせーな。
だって伝えたいんだもの。ね、私のこと大好き?
っせーな、言わなくてもわかるだろ。
そうやっていつも誤魔化してばっかで言ってくれないじゃない!
俺がそういうの苦手だってわかってんだろ?
苦手で押し通すのズルい……。
お前以外とじゃ、こうやって一緒にいたいって思わないけど?

たった二言でいいのに。
ぷかりと浮かんだ不満は、瞬間はじけた。
ぶっきらぼうな話し方からは想像できない力で抱きしめられて、顎を掬われて、何度もキスをされた。頭を撫でる手がとても心地いい。

こっちの方がよっぽど説得力あるだろ?
た、ただ好きなだけのくせに!
そりゃお互い様だ。
……素直じゃ、ないんだから。畳む

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【300字SS】荒療治でなければ

#男女もの

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300字SS  のお題に挑戦しました。お題は「届く」です。

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瞬時に開かれた視界の先には薄い闇が広がっていた。
呼吸が浅くなる。心臓がうるさい。
全身汗だくなのに、背筋が震えた。

『もう十分、待ったよ。とうとう何も返してくれなかったね』

そして彼は消えていった。追いかけようとした足は動かなかった。何を叫んでも聞いてくれなかった。
――告白されて、どっちつかずの態度を続けている私のせいだ。
近すぎる距離感が、先に見える道に靄をかけていた。
「ちゃんと返事をしたい」と告げたまま、彼の優しさに甘えていた。

いつでも言葉を届けられる場所にずっといてくれる。
そんなの、誰が決めたのだろう。

スマホに手を伸ばす。
おかげで、臆病の奥に隠れていた感情に気づけたのだ。畳む

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営業時間は「いつまでも」希望

#男女もの

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深夜の真剣物書き120分一本勝負 のお題に挑戦しました。
お題は「③利用可能時間」を使いました。
本の読めるカフェ店長と常連客の話です。

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 喫茶店に置かれた本の数々は、店長自ら選定したものらしい。まるで小さな図書館のようだ。
 私の嗜好とぴったり合致すると、抱いていた予想が確信に変わったのは、ある日閉店時間間近で交わした会話からだった。
 
「やっとこの新作読み終えたんですけど、やっぱり感情が忙しくなる作家ですよね。すごく悲しくなったりほんわかしたり……すごいなぁ」
「おや、作家の卵としてはやっぱり気になりますか」
「だから違いますって。私のはあくまで趣味ですよ」
 店長は、ふと何かを思いついたようにカップを磨く手を止めた。「スタッフオンリー」と英語で書かれた扉をくぐり、少しして戻ってくる。
「この本、ご存じですか?」
 一般的な文庫本よりも厚みがある。
「うー、ん? 知らない、かも。作者もちょっと」
「推理ものなんですけど、登場人物がみんな濃くて、関係性も面白いんです。ちょっとこの作者を彷彿とさせるんですよ」
「へえ……推理小説は苦手な方なんですけど、大丈夫かな」
「そこまで複雑なトリックはないので大丈夫かと。よかったらお貸ししますよ」
「嬉しい! ありがとうございます」
 今では、閉店時間後もこうしてお喋りする仲にまでなった。ちなみに、私がわがままを言ったわけじゃない。
『他のお客様がいるとゆっくりお話できませんし、僕がお願いしたいんです』
 私も同じ気持ちだったし、そう頭を下げられたら頷くしかできない。
 最初こそ遠慮がちだったものの、楽しくも穏やかな空気に負けて、ずるずると居着いてしまっている。
 今更ながら、いくら何でも図々しすぎじゃないかしら、私。
「どうされました?」
 私とあまり歳が変わらないとこの間知った店長は、柔らかい印象の瞳をわずかに細めた。
「あ、いえ。私、店長のお言葉に甘えて長居しすぎだよなって。今更ですよね」
「そうですよ。そのまま気にされないでよかったのに」
 心外だとでも言いたげな口調だった。いや、さすがに心が広すぎやしないか?
 スマホの画面を点けて、思わず短い悲鳴が漏れた。最長記録を更新してしまうとは!
「いやいや、もうすぐ三時間経とうとしてますし! 店長、お店の片付けもあるのに」
「片付けならほら、してますよ。キッチンの方は料理長がしてくれてますし」
 たった一人の店員は店長の古い友人らしい。コーヒーなどの飲み物を入れるのは得意だけど料理の腕はからっきしだから頼み込んだと、恥ずかしそうに教えてくれた。
「じゃ、じゃあ……せめて、手伝わせてください」
「そんなに広い店ではありませんし、大丈夫ですから」
 暖簾に腕押し状態に近い。「いただいてばかりじゃ申し訳が立たないんです」的なことを告げたら、多分困らせてしまうだろう。それも本意じゃない。
「あなたがいたいだけ、いてくれていいんです」
 まっすぐに見つめられて、ぐるぐるしていた思考が止まる。
 気のせいだろうか、「店長」という仮面が少しずれたような印象を受ける。
「僕は、それが一番嬉しい」
 カウンターが間にあるのに、ものすごく近くに感じる。目がそらせない。心臓が大げさにどきどきしてきた。
 胸中でかたちになりつつあるものに、明確な名前を付けていいのか迷う。
 単なる自惚れかもしれない。けれど、そう言い切れない空気を、店長は醸し出している。
 例えばこれが恋愛小説なら、受け身側は鈍い場合が多いのに。
「……ごめんなさい。変なことを口走ってしまいましたね」
 本当にそう思ったのか、あるいは私の反応を不安に感じたのか、店長は本棚と飲食席が並ぶ空間へ足早に向かった。片付けに戻ろうという誤魔化しなのだろう。
「変なことじゃないです」
 椅子から立ち上がって、借りた本を胸元に抱き込む。
 こちらを振り返った店長が、わずかに目を見開いた。
「ありがとうございます」
 賭けてみることにした。……いいや。きっと、勝ちは「見えている」。
「……前から、気になっていたんです。お仕事帰りだけじゃなくて、休日にも定期的に立ち寄ってくれて、持参した本だけでなく、僕が選んだ本も読んでくださるようになって」
 最初は、手持ちのストックがなくなってしまったから試しに読んでみようというだけだった。
 読んだことのない本はどれも、その日中に読み終えてしまうくらい面白くて、こんなに私のツボを刺激する選書をしているのは誰なんだろうと気になったのが、すべての始まりだったのかもしれない。
「あなたから話しかけてくださった時は、お恥ずかしながら舞い上がってました。それが本選びにも影響していたんでしょうね、常連さんに『本棚の雰囲気変わったね』と突っ込まれてしまいました」
 つられて、頬が熱くなる。こんなにストレートな人だとは思わなかった。
 店長が歩み寄ってきた。半分でも腕を伸ばせば触れられるほどの距離を残して、意を決したように眉間に軽く皺を作る。
「あなたと読んだ本の感想を言い合いたいし、おすすめも教え合いたいし、あなたが書いた小説も読みたい。……あなたに叶えてほしいことがたくさん、あるんです。ですから、これからもお店にいらしてください。何時間でも構いませんから」
「……会うのは、お店だけでいいんですか?」
 全くつまらない返しだとわかっていても、ほんの少しだけ悪戯心が芽生えてしまった。
「……意外と、意地悪な方なんですね」
 言葉とは裏腹に若干うわずった声に、内心が手に取るようにわかってしまって口元がな緩みそうになる。ほぼ同い年だとようやく実感できて何だか嬉しい。
 答える代わりに、腕を伸ばして店長に触れる。
「小説はまだお約束できませんけど……喜んで、お付き合いさせてください。よろしくお願いします」

 時間が許すのなら、ずっと一緒にいたって構わない。
 店長だけじゃないのだと告げたら、どういう風に喜んでくれるだろう?畳む

ワンライ 編集

【300字SS】曲がらない想い

#男女もの

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300字SS  のお題に挑戦しました。お題は『運/うん』です。
何となく最初から最後までせわしない感じ(?)です。

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何かを選ぶ時、「ピン」と来た方とは別のものを選択する。
根拠のない理由に委ねるなんて、まるで誰かに運命を決められているみたいじゃない?
私は私の力で道を歩む。これからも、これまでも。
それが私の信条。

「君と付き合えるなんて思わなかった……本当にありがとう」
「大げさですよ。私もずっと好きだったんですから」
さりげないフォローが素敵で笑顔が可愛くてオンとオフの線引きがはっきりしていて……

「君は僕の運命の人なんだ。君しかいないって思ってた」
「君もそうだったら嬉しいな……なんて。ごめん、浮かれすぎだね」

貴方は……運命が示すままに、私を選んだと言うの?

百年の恋も冷めるって、こういう時も使っていいのかしら。畳む

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