Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

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使用お題:もって三日の絶交

#男女もの

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「フリーワンライ企画」 さんのお題に挑戦しました。
いろいろネタを考えたけど、結局素直に使って書きましたw

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 絶交だと言われたけど、私はそんなに気にしていなかった。
 だって彼は、自分で言うのもなんだけど私のことが本当に大好きで、多分私がいないと生きていけないような人だから、もっても一日だけだと思ってた。

 なのにおかしい。
 三日目が終わろうとしてるけど、大学に行っている間以外は部屋に引きこもって顔も合わせようとしてくれない。
 私の部屋だけにあるダブルベッドも私ひとりきり。そういえばひとりで寝るってはじめてだ。
 そんなに怒らせてしまったなんて……私は、無意識に甘えすぎていた? 確かに、彼はなんでも笑って許してくれる。
 ああ、そういえば最初の頃は懐の深すぎる彼に甘えないようにって自分でブレーキをかけていたけど、いつからか緩んでいたかもしれない。
 気づいたら涙がこぼれていた。泣く資格なんてないのに、勝手に流れてくる涙が悔しい。

 私も、彼がいないと生きていけないからだになっていたんだね。
 それに今頃気づくなんて……ほんと、ばかみたい。

「ごめんなさい! 本当にごめんなさい……!」
 部屋のドアを叩きながら叫ぶように謝って、その場に崩れ落ちてしまう。
 簡単に許されるなんて思ってない。自己満足って思われてもいい。とにかく謝って、また私に笑いかけてほしい。大好きだと言ってほしい。
 ややして、控えめにドアの開く音がした。
「……ごめん。今回は意地張っちゃったんだ。泣かせちゃって、俺こそ本当にごめんね」
 身体を包む三日ぶりのぬくもりに、違う涙が溢れた。畳む

ワンライ 編集

文字書き60分一本勝負SS・身長差

#男女もの

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「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」さんのお題に挑戦しました。
お題を素直に使った、身長差のある学生カップルのお話。

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 私と彼の身長差が羨ましいとよく言われる。

 特に、包み込むように抱きしめられると嬉しいでしょ、守ってもらえてるみたいでいいよね――そういったセリフを何度浴びせられたかわからない。
 でもね、現実は憧ればかりがつまっているわけでもないんだ。

「相変わらずの不機嫌顔だねえ」
 学校から家までの道を、いつものように並んで歩く。百八十を超える身長の持ち主である幼なじみの恋人はずっとにやにやしっぱなし。腹立つ。彼の頭ひとつぶん低い私の歩幅にちゃんと合わせてくれているのがまた、悔しい。
「『私も見下されたい!』とか『背中から包み込んでほしい!』とか言われまくったらね。憧れるほどでもないけどって口酸っぱく反論したいわよ」
 実際したこともあるが、照れちゃって〜! とツンデレ扱いされて終わってしまった。面白がっている隣の恋人しか理解してくれていないというのが、実に悲しい。
「俺は好きなんだけどなぁ。お前、ほんとすっぽり抱きしめられる大きさなんだもん。心地いいっていうか」
 言いながら抱きしめられて、慌てて身じろぐも全く動けない。しまった、完全に油断していた。
 ……別に、こうされるのが嫌なわけじゃない。ただ、こういう「小さくてかわいい」みたいな扱いを全面に出されるのは性に合わないだけで。
「まあでも、お前はうんと女の子扱いされまくるのいやだもんな。うんうん、わかってるって」
 子どもにするみたいに頭をぽんぽんとされて、顔が熱くなった。こいつ、まさか……。
 彼の服の裾を握りしめると、ふいに抱擁が解かれた。短く名前を呼ばれて反射的に顔を持ち上げてしまい――すぐ、後悔するはめになる。

 その「目」だ。
 普段つけている仮面をいっさい取り払って、ただひたすらにまっすぐな視線を注ぎ込まれてしまうと、私はとたんに身動きができなくなってしまう。
 お前が大好き。誰にも渡せない。これからもお前だけを想い続けるから。
 直接そう囁かれているような気持ちになってしまって、身も心も預けてしまいたくなる。
 真正面から向き合うときとは違う。ずっと高い場所から見つめられることで、「男」と「女」を意識して、普段の私が行方不明になりそうになる。
 思えば、昔から「目は口ほどにものを言う」タイプの人間だった。だから、私もこうしてやられてしまったんだろう。

「かーわいい」
 触れるだけのキスをされても、いつもの抵抗はできなかった。今の私は、いつもの私じゃなくなっている。
「なあ、俺んち……寄ってくだろ?」
 確信に満ちた笑みさえ、素直に格好いいと思ってしまう。返事まで素直に返すのだけはためらって、服を握りしめたままの手に力を込めて、俯きがてらうなずく。
「お前さ、急激にかわいくなんのやめてよ。俺も大変だよ」
 意味わかんない。私はそんなつもり全然ないんだから。
 服を掴んでいた手は、いつの間にか彼の大きな手のひらに包まれていた。そのぬくもりを噛み締めながら、「女」もいいかもしれないと、少しだけ素直に思った。畳む

ワンライ 編集

文字書き60分一本勝負SS・本命

#男女もの

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「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」さんのお題に挑戦しました。
男女CPです。最後が尻切れトンボですw

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 私は絶対、首を縦には振らない。

「いい加減認めなよ。俺のこと、好きになっただろ?」
「なってない。あんたみたいな遊び人、誰が好きになるもんですか」
 放課後、人のいない教室の窓辺でくだらない攻防が続いている。いい加減にしてほしいのはこっちなのに、目の前の男が壁と化しているせいで叶わない。
「もしかして、まだ信用できないの? 俺なりに、告白の証明になるような行動をしてきたつもりなんだけど」
 整った眉をわざとらしくひそめて、彼は嘆く。
「信用できない。大体、今まで私とまともに話したこともなかったくせに、よく言うわ」
「それは近寄り難い雰囲気だったからって言っただろ? ほんとは話ししたかったんだよ、ずっと」
「私が悪いって、言うの……」
 ああ、もう! 苛立ちで歯を噛みしめる。
 この場面だけを誰かが見ていたら、多分悪者になるのは私だ。
 でも違う。誤解している。「悪」なのは間違いなく、彼。そう断言できる証拠を私は握っている。
「私、知ってるんだから」
 まっすぐに彼を睨みつけて、うるさくなる心臓を宥めるように制服の裾を固く握る。
「あんたが他の男子と、私を落とせるかどうかで賭けてたことをね」
 細めの双眸がわずかに開かれた。初めて「本物」と信じられる反応だった。
 見たのは偶然だった。それでも、ずっと抱いていた違和感の正体にようやく気づけたことが嬉しかった。すっとした。
 どこか人を小馬鹿にするような態度が目立ちながらも、女子に大人気の彼が真面目一辺倒な私なんかを相手にするはずがない。その考えが見事証明されたようなものだった。
「……へえ、さすがだな」
 不敵な笑みに変わっていく。特に動揺はしていないようだけど、私がそれだけの存在だったという自覚が強まるだけでなんとも思わない。
「でも、さ」
 だからもう解放して。
 口にするはずだった台詞は、彼の声に遮られてしまった。
「君はもう、そんなの関係なく俺に惚れてるだろ?」
 ――こいつは、何を。
「そんな、わけないでしょ。ばかにしないで!」
 反応が遅れて悔しい。でも仕方ない。あまりに的はずれすぎることを言うから……!
「おとなしく素直になった方が楽だよ?」
 動揺が収まらないまま、あろうことか彼の腕の中に閉じ込められてしまう。ほのかな香水の匂いに頭がくらりとした。
 これ以上は危険だ。何も得にならない。
「離して……私は別に、好きになんてなってない……!」

「俺が、賭け事関係なしに好きになったって言ったら?」

 いつもの軽い調子ではない、地に足の着いたような声音だった。
 まさか、そんなはずはない。ほんの数日前に、確かに彼は賭け事をしていると自分で証明していた。他の男子と実に楽しそうに笑っていた。
 それを自分で覆すと言うの。
「信じられるわけない! あ、あんな楽しそうにしてたくせに、私はちゃんと見て……」
「下手に言い訳しても信じないだろうから、俺は同じことしか言わない」
 好きになったんだ。最初はゲームのつもりで接近したけど、好きになってたんだ。
 耳元で呟かれる、思ってもみない言葉の数々に全身が熱くなっていく。頭の中で必死に繰り返していた否定の言葉に、説得力がなくなっていく。
 なんで私なんかを。信じられない、信じられるわけない。こういうことでもなければ接点なんてないような存在だったのに、急にこんな展開になるなんて。
「顔、真っ赤だ」
 いつの間にか抱きしめていた腕が緩められて、正面に小さく笑う彼の顔があった。
 慌てて、両手で顔を覆う。よりにもよって一番見られなくない状態の時に、もういい加減にして欲しい。――私が、保てなくなる。
「その反応、もう答えが決まってるようなものだけど……いいんだよな?」

 私は絶対、首を縦に振らない。そう、決めていたのに。畳む

ワンライ 編集

文字書き60分一本勝負SS・追いかける

#男女もの

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「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」さんのお題に挑戦しました。
男女CPです。年下×年上な組み合わせ。

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 早く大人になりたかった。
 大人になれば、どうあがいてもどうにもできない年齢差なんて気にならないようになると思っていたんだ。

「やっぱり年の差って結構でかいよなぁ」
「え、急にどうしたの?」
「……べっつにー。何でもない」

 しまった、つい声に出してしまった。
 誤魔化しにならない誤魔化しをしてしまったけれど、彼女は不思議そうに首を傾げるだけだ。セミロングのくせ毛がふわりと揺れる様子は相変わらず可愛い。

 この春からやっと社会人になり、念願だった同棲生活もスタートできた。それでも「年下」という意識はしつこくこびりついている。
 好きになった時、彼女は大学生だった。
 告白して付き合えるようになった時、彼女は卒業を間近に控えていた。
 そして今――すでに彼女は社会人人生を四年先に歩んでいる。

 大人になれば、と子供だった自分はすべて解消すると思っていたのに、現実はひとつも変わっていない。
「……年上な彼女は、やっぱりいや?」
 だんだん眉尻が下がっていったと思ったら、とんだ勘違いをさせていたらしい。慌ててテーブルにカップを置いて、向かいに座る彼女の手を握る。

「違うよ! ……オレはやっぱ、大人になっても年下属性だなぁ」
 多分彼女は気にしていない。対等に見てくれている。悩んでも無駄に過ぎない。……わかっている、わかっているのに。
 まっすぐな視線を向けていた彼女の口元がふっと緩む。ああ、見破られた。

「私、ずいぶん頼りにしちゃってるけどなぁ」
 よくそう言ってくれるけれど、慰めじゃないのだろうか……。
「ほら、結構情けない姿とか見せちゃってるし。私の方が年上なのに、年下みたいって思う時結構あるんだよ」

 確かに、よく泣いたり怒ったり、付き合う前までは見たことのない表情をよく目にする。最初は驚きっぱなしだったのを今さら思い出した。
「でも、そう思われてるってことは……年上の威厳ってものを、無意識に保ちたいって思っちゃってるのかもね」

 いたずらっぽい笑みに変えて、どこか楽しそうに彼女は続けた。
「……それでも、本当に頼りにしてるんだよ。毎日がすごく幸せなの。もう、あなたなしじゃ生きていけないくらい」
 今度は頬を染めて、こちらの手を握り返しながらわずかに視線を逸らし、告げてきた。

 ――やっぱり、敵わない。
 多分年上でなかったとしても、勝てる要素はゼロに等しいかも知れない。
 ――そうだ。年齢差を嘆いている暇があったら、これからも彼女に頼られる男でいられるよう頑張らねば。

 彼女の背後に立ち、そっと腕を回す。熱さの残る頬に唇と吐息を寄せた。
「オレも、お前がいないと無理だよ。もう、絶対離せないから」

 追いかけ続けた背中に、今やっと追いつけた気がした。畳む

ワンライ 編集

文字書き60分一本勝負SS・治せない傷

#男女もの

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「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」さんのお題に挑戦しました。
男女CPです。

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『キレイに産んであげられなくて、ごめんね』
 お母さんの、少し申し訳なさそうな顔と声は、頭の片隅に残っている。

 右の胸から脇にかけて残る、火傷のような跡。
 生まれてからずっとある跡だ。いくら時間を重ねても、決して消えることのない、治ることもない、あたしの一部みたいなもの。
 他人の前で肌を晒すたび、痛々しそうな、見てすまなそうな顔をして目を逸らす姿を見てきた。
『うわっ、それ何? やばくない? 大丈夫?』
 明らかな嫌悪感をもって言われたこともあったっけ。
 だから、いつしかあたしは肌を晒すのを拒むようになった。最初は気にならなかったのに、気になる存在になってしまったんだ。

「ほんと、あんたここ触るの好きだよね?」
「んー、だってオレだけの特権って気がするんだもん。いや?」
「……ううん。そんなことないよ」

 あたしの部屋で、あるいは彼の部屋で、またあるいはどこかの部屋で。
 飽きるほど肌を重ね合った後、彼はいつも、治ることのない傷に愛おしそうに触れる。

 ――マイナスな捉え方をする人ばかりじゃなかった。

 この人に出会って、初めて「消えない傷でもいい」と思えるようになった。
 それまで、なんとしても消し去るしかないと自分を追い詰めすぎていたあたしだったのに、この人があっさりと方向を変えてしまった。
『そんな傷、別に気にしないよ。お前は可愛いし、むしろオレだけが見れるって思うと嬉しいよ!』
 あっけらかんと言い切った彼の言葉は、今やお母さんの言葉を食い尽くす寸前だ。

「……ん、どしたの?」
「ううん、なんでもないよ。なんでも」
「でも、泣きそうな顔してるし……っうわ!?」
「いいから、あたしに黙って抱っこされてなさい。胸んとこも触ってていいから」

 むしろ治せない方がいい。そんなことを思える傷なんて、この世にあるんだね。
 そんな考えができるようになったことがどれだけ大事かなんて、きっとこの人はわかってないんだろうな。
 でも、それでいい。
 そうやって、あたし以上に無邪気な顔で、声で、あたしを癒やしてね。畳む

ワンライ 編集

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