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ユーザ「Ayumu88件]

2023年2月 この範囲を時系列順で読む(Ayumuの投稿に限定) この範囲をファイルに出力する

#男女もの
【300字SS】甘い言葉をくれるひとは

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「甘い」です。

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「貴方の声は簡単に私を虜にしてしまうの。耳が蕩けるようよ」
「なら僕は『君の瞳も格好いい声も柔らかい髪も、全部僕を虜にして離さない……君はまさに運命なんだ!』」

「「いやいや、甘すぎ!」」

 二人してお腹を抱える。まさか一言一句綺麗に揃うなんて、素晴らしい奇跡だ。
「ああ、こんなに笑ったの久しぶりだよ」
 笑いで生まれた熱が消えていく。現実が代わりに降り積もる。
「これで、きっと穏やかにいける」
 白いベッドに腰掛けたままの彼は、こうなって幾度目かの苦笑を零す。
「身体がなくても、僕はずっと君と一緒だ。今度は夢で、たくさん逢おう」
 意識して唇を持ち上げた。
「……忘れないで」
 忘れないよ。あなたが最初で最後だもの。畳む

300字SS 編集

2023年1月 この範囲を時系列順で読む(Ayumuの投稿に限定) この範囲をファイルに出力する

#CPなし
【書く習慣アプリ】お題:タイムマシーン

書く習慣アプリ  のお題SSです。

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 病室のドアを開けると、今日も親友はベッドに腰掛け、幸せそうな笑みを窓の外に向けていた。
 今日は一体、どの過去に心を置いているのだろう。
 最初は運命の出会いだったと語っていた結婚間近の恋人と、次に懸命に支えてくれた両親と、最後に辛抱強く待ってくれていた新しい恋人と……ショッキングな離別を三度も経験した親友は、現実に生きることを放棄してしまった。
 無力な自分がひたすら腹立たしかった。例えば何度声をかけても、ずっと過去を生きている親友にはなにも聞こえていない。担当医もいろいろと手を尽くしてくれているが、傍目には変化がみられない。
「でも、あなたにとっては現実に戻るほうが苦しいんだよね」
 わからなくなる。少しでも長く生きてほしい、またお互いに笑い合いたいと願っているからこそ、毎日少しでも回復するようにと祈っている。
 親友にとって苦しいのは今だけ。治ればきっと——でも、それは本当に?
 いったい、親友の未来はどうなっているのだろう?

 自分こそ、今すぐタイムマシーンを手に入れて過去に戻りたい。
 親友に降りかかる不幸すべてを振り払ってあげたい。

 数日前花瓶に生けた花を捨てて、新たな花を挿す。
「花の世話するの好きだったのに、また、枯れてたよ」
 響いた声は、それだけだった。畳む

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#CPなし
【書く習慣アプリ】お題:特別な夜

書く習慣アプリ  のお題SSです。

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 もうすぐ日付の変わる時間に、わたしは目の前に差し出された手のひらにためらいなく自らの手を重ねた。
 門限以降は一歩も外に出てはいけないという言いつけを、この日はじめて破った。

 誰も外を歩いていないと思っていたけれど、そんなことはないのね。
 夜も、耳を澄ますといろんな音が響いているのね。優しくも、どこか寂しくも聞こえる不思議な音の数々。
 初めて入ったこのお店、この時間でも開いていただけじゃなく、見たことのない品物がたくさんあって、驚いたけれど、楽しい。
 なにより、たくさんのことを知っているあなたが、気になって仕方ない。

 もうすぐこの魔法は解ける。
 無理を言って連れ出してもらった特別な夜も、終わりが来る。
 ――特別は、一度しかないから、特別なの。
 わかっているから、少しでも長く、この魔法に浸らせて。畳む

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#CPなし
【書く習慣アプリ】お題:海の底

書く習慣アプリ  のお題SSです。

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 一番最初に写真で見た海の底は、まるで碧の宝石を敷き詰めたみたいにきらきらとしていた。
 また別のときに見た海の底は、どんなものも容赦なく飲み込んでしまいそうな闇がただ広がっていた。

 今は、絶望きわまりないような海の底がとても心地よい。
 誰にも自分を見つけられない。
 ずうっとひとりぼっちでいられる。
 もう他人の目の届く場所で過ごすのはうんざりだ。

 ただのひとりも、「 」という人間をおこさないで。畳む

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#BL小説
【書く習慣アプリ】お題:君に会いたくて

書く習慣アプリ  のお題SSです。

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 玄関のドアを開けた君はとても驚いた顔をした。
「な、なんだよお前、マジで来たのかよ!?」
「うん、ごめん」
「べ、別に謝んなくてもいいけど」
 つい一時間ほど前に「またな」と別れた人間が、一応許可をもらっているとはいえこうして押しかけてきたら確かに驚く。というか気持ち悪ささえ感じるかもしれない。
「とりあえず上がれよ」
「え、いいの?」
「そのまま帰すのもなんか、気が引けるし」
 困惑とも羞恥ともいえる表情で招き入れてくれた。それをさらに加速させてしまうかも、と申し訳なくなりつつ、ドアを閉めた瞬間背中を包み込む。
「ちょ、お前っ」
「我慢できなくてごめんね。どうしてもまた会いたくて」
 一日たっぷり使って一緒にいたのに、離れた途端気持ちが抑えられなくなって、気づけば踵を返していた。
 恋人同士になってからどんどん欲張りになっていく。呆れられても文句は言えない。
 短いため息が聞こえて、みっともなく身体をこわばらせてしまった。
「お前、ほんとに俺が好きなんだな……」

 好きだよ。
 特別な想いを抱いたのも、告白したのも、デートも全部君が初めてでよかったと感謝したいくらい、好きだよ。

 たぶん重いくらいの気持ちを汲み取ってくれたのか、小さく「ばーか」とつぶやくと、回した腕に頬をすり寄せてくれた。畳む

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