【300字SS】希望の防波堤

#CPなし

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「つなぐ」です。

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「散々にやられたようだな」
 宿屋に併設の酒場までようやく辿り着くと、出入口近くの二人席で一人飲んでいた男に声をかけられた。
「一人、か。仲間を失ったか」
 物理的にも精神的にも、支柱だったものが消えた。つながりが、跡形もなくなった。
「……おっさん、何者?」
 震えそうな全身を誤魔化すためでも、不信感ゆえでもあった。
 男は無言で、グラスを傾けた。
 ため息をついて、足を進める。ヤケ酒は止めだ。
「まだ、使命を果たすつもりか」
 初めて、男の顔をまじまじと見つめた。
 記憶の隅に引っかかる、印象的な緑の双眸は薄く濁っている。
 まさか、この人は。
「歴代の勇者の悲願もある。諦めるわけにはいかない」
 返ってくるものは、何もなかった。畳む

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