Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

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2023年11月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

油断禁物

#BL小説

思いついたシーンをつらつら書いてみました。
イメージ的にはサラリーマン同僚同士。のらりくらり型男子とツンツン気味男子。受け攻めはあまり考えずに書きました。

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 まったく、まいったなぁ。
 大体「なんでもないんですよー」「こっちは大丈夫です、それよりあなたですよ! なんか疲れてません?」的なことを言っておけばかわせるのになぁ。

「下手な誤魔化しなんてしないほうがいいよ」
「そっちのほうがしんどそうな顔してるくせに、よくそんなこと言えるね。呆れるよ」

 ストレートすぎるくらいストレートに、実年齢より若く可愛い容姿の彼は言ってくる。
 このすっぱり感はうちの弟を思い起こさせるが、むしろ鋭利さが増している。
 綺麗なバラにはトゲがある的な? 綺麗より可愛いだけど。
 変に詮索されるのは苦手なんだよね。自分は自分、他人は他人。たとえば俺が親身に話を聞いたところで、本当の意味で他人を理解できるわけじゃない。どうしたって主観が混じってしまうから、失礼だと思うんだ。
 まあ、話すだけでも楽になるっていうのもあるけど、自分にはあんまり当てはまらないかな……。今までも自分で処理できてたし。
 今回はちょっと、珍しく長引いてるってだけ。

「あんたは多分強い人間なんだろうけど、いつまでもそれを保ってられるわけじゃないでしょ」
「変な意地張ってないで、いい加減さっさと折れたら? 限界迎える前にさ」

 それより、なんで君はこんなに構ってくるわけ? こっちの状態見抜けるわけ?
 確かに普段からやり取りは多いほうだけど、大体ツンツンした態度だから、嫌われてるとばかり思ってた。俺はせいぜい「まあ面白いやつだな」ぐらいの意識だった。
 彼のことがよくわからなくなってきたよ。

「そんなに必死になっちゃって、よっぽど心配なの? もしかして俺のこと好き?」

 ドラマとかでよくある冗談を言えば、怒って解放してくれると思ったんだよね。
 ほんと、もういい加減にしてほしかったし。

「……そうだとしたら、どうなの?」

 まっすぐに俺を見つめて、ツンツンした物言いも影をひそめて。
 予想外の反応に、もっとわからなくなった。まさかこっちが動揺するなんて思わなくて、うまい言葉が出てこない。
 彼がさりげなく距離を詰めてきた。目線がほぼ同じ位置だ、なんて場違いな感想を抱いてしまう。

「ぼくがあんたを好きだって言ったら、あんたは素直になってくれるわけ?」

 初めて間近で見た彼の瞳は、腹が立つほど綺麗だった。
 真面目な言い方をしてるってことは、まさか、本当に? いやでも、全然そんな素振りなかった。わからない。

「それは、どうだろうね」

 精一杯の返答をすると、まったく可愛くない不敵な笑みを彼は浮かべた。畳む

その他SS 編集

【300字SS】意識を奪われたターゲットは

#CPなし

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「奪う」です。

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「あなた、泥棒?」
 私としたことが、気配に全く気づかなかった。
 姿形と表情が釣り合っていない少女は、怖がらないし、通報する素振りも見せない。
 ただ、部屋の入口で私を見つめている。
「可愛いお嬢さん。だとしたら、どうします?」
 逃げる算段を組み立てながら大仰に問うと、ふらりと距離を詰めてきた。
「盗むなら、あたしを、盗んで」
 意図が読めない。
「……なぜ?」
「ここから盗むだけでいいの」
 無だった表情に、一気に色が加わる。
「誰も来ないうちに、はやく」

 私は人攫いに来たわけじゃない。子どもなんて稼ぎにもなりゃしない。
 ——救世主のように、必死に見上げてくるから?
 握ってくる震えた手を払えないし、揺れる目も逸らせないのだ。畳む

300字SS 編集

思いがけない小さな宝石たち

#BL小説

創作BL版深夜の60分一本勝負  のお題に挑戦しました。
使用お題は「星月夜」です。
ちょこちょこ書いている、探偵所長×部下シリーズものです。
簡単なキャラ設定は「こちら」 をどうぞ。

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「いやはや、すっかり遅くなってしまったな」
「でも、なんとか無事に報告できてよかったです。遠くまで足を運んだ甲斐がありましたね」
 外出するのが珍しい所長が隣を歩いているのは理由がある。
 今回依頼を受けた案件は(自分の目線では)結構複雑で、先輩である(あずさ)と二人での報告でも難しいこと、依頼主がそこそこ高齢で事務所まで出向いてもらうのは大変だということ。実際、所長がいなければわかりやすい報告はできなかっただろう。
 電車とバスを乗り継いで約一時間半はかかっただろうか。依頼を受けた際、とても腕のいい探偵だと知り合いに教えてもらったから、と聞いたときは、思わぬところまで名前が知れていると驚いたものだ。さすが憧れの所長の祖父なだけある。
「バスが来るまでまだ時間ありますねー……って」
 背負っていたリュックを停留所の椅子に下ろして思いきり伸びをした瞬間、思わず動きが止まってしまう。
「ん、どうした? (のぼる)くん」
「所長、見てくださいよ! 星がきれいですよ」
 都会にいると、日中でも夜でも空を見上げる、なんて動作はあまりしなくなる。
 伸びをしてよかった。
 プラネタリウム……なんてレベルまではいかないまでも、都会よりも多くの小さな煌めきが、夜空を彩っている。
「おー、本当だねぇ。この辺りは街灯が少ないから、そのおかげかな」
「さっき出発したときはまだ明るいほうかな? って思ったんですけどね。日が落ちるの早いなぁ」
「星座も見やすいね。昇くん、わかる?」
「えーと、実はさっぱりで……」
 教科書で見たことのある形はいくつか発見できたものの、名前はすっかり忘れてしまった。所長も笑っている。
「じゃあ、今度プラネタリウムデートでもしようか。今はスマホアプリで星座教えてくれるのもあるけど、実際見ながらのほうがわかりやすいと思うしね」
「えっ、しょ、所長がそんなロマンチックな……」
「君ねぇ。星座は歴史を紐解くとなかなかに面白いんだよ。一つ一つにちゃんと作られた理由がある。決してスピリチュアルな存在ではないのさ」
 そうだとしても、非科学的な存在に否定的な所長を知っていると、星座占いなどが一般的なのもあって珍しく映ってしまうのは仕方ない。
 でも、星座に少しでも詳しくなれればこういう機会があったとき、何倍も楽しめそうだ。
「そうだ、せっかくだから星空鑑賞会できるホテルとか泊まってみる? 探すとわりとあるんだよ」
 柔和な笑顔で提案してくれた案に乗っかろうとして、ふと気づく。
「……おれとただ泊まりに行きたいだけだったりして」
「そんなことないよ」
 一瞬言葉に詰まったのは見間違いじゃない。
 そして、ジト目で睨まれてしまった。
「ていうか、僕と二人で朝から晩まで過ごしたくないの?」
「そ、そういう言い方しないでくださいよ! そうじゃなくて、おれ本当に知りたいんです」
 所長と夜を過ごすとなると、ほぼ確実に……である。別に構わないが、本来の目的もちゃんと済ませたい。
「オーケー。君の知的好奇心も、恋人同士の時間もちゃーんと満たせるようにするから。いいホテル探しておくね」
 にこにことした笑顔は、信じても問題ない……はず。少なくともこういうときの所長は手を抜かない。
 密かに胸を躍らせつつスマホで時間を確認すると、バスが来るまではもう少しかかりそうだった。
 ——誰もいないし、仕事も終わったし。ちょっとくらい、デート気分を味わってもいいよね。
 所長の腕に自分のを巻き付けて、目を丸くした所長にすり寄る。
「バスが来るまで、今見えてる星座教えてください」
 改めて見上げた星たちは、先ほどよりもどこか煌びやかに映った。畳む

ワンライ 編集

2023年10月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

夢から少しずつ、現へ

#BL小説

スマホアプリ「書く習慣」のお題:桜散る で書きました。
以前書いた『現実を忘れられるなら、今は』の続きみたいなものです。

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 覚悟を決めていつもの桜の木を訪れる。
 遠目からでも薄桃色の花たちはすっかり跡形もなくなり、代わりに葉が若々しい緑色をまとっているのがわかる。
 だが、恐れていた光景はなかった。
「こんにちは。私の言った通り、消えなかったでしょう?」
「あれ、君……いつもの、君?」
「はい。ただ、歳を少し遡っておりますが」
 つまり若返ったということらしい。

 最愛の恋人を、春を迎えたと同時に失った。
 胸に深く暗い穴をつくったまま、俺はいつも恋人と訪れていた一本の桜の木に、縋るように毎日足を運んだ。
 人目を避けるようにひっそりと、けれど確かな存在感で生えているこの木を、俺たちは毎年見守っていた。
 その想いがきっかけだと、「彼」は言った。
 桜の木の精だと名乗り、突然目の前に現れた「彼」。

『このようにお会いするつもりはありませんでした。ですが、心配で。あなたまで、そのお命を失ってしまいそうで、黙って見ていられなくなりました』

 夢としか思えなかったが、このときはそれでもかまわないと、彼の存在をとりあえず受け入れた。
 そうでもしないと――恋人がいないという現実に、耐えられなかったから。
 今は、違う。
 彼の包み込むような優しさと雰囲気に、空いたままの穴が少しずつ小さくなっていくのを、確かに感じていた。
 だから、怖かった。
 桜が散ってしまったら、彼の姿は消えてしまうのではないかと。
 二度と、会えなくなってしまうのではないかと。

「先日も申しました通り、私たちは新緑の時季を迎えるとこのように若い姿となります」
「じゃあ、あの薄ピンクで長い髪の状態は二週間くらいしか続かないんだ?」
 彼はひとつ頷く。耳のあたりまで短くなった、絹を思わせるような白髪がさらりと頬を滑る。
「そうか、って納得するしかできないけど」
 俺と同じ人間ではないから、疑う余地も当然ない。面白いなと感じるほどには余裕はできた。
「姿は見えなくとも、毎年あなた方にお会いしていましたから消えることはありませんよ」
 少し笑って彼は告げる。そうだとしてもやっぱり、この目で確認するまでは心配で仕方なかったのだ。

「……でも、完全に枯れたら、会えなくなるよね?」

 木に触れながら、気になっていた疑問を口にする。
 この桜の木は彼そのもの。
 今はまだ、大丈夫だと信じられる。太陽の光を存分に浴びている葉はどれも生き生きとして、生命力に満ちているのが素人目でもわかる。
 それでも、いつまで無事かはわからない。
 ――突然この世を去った、恋人のように。
「ご心配なく。あなたがこうして足を運んでくださる限り、私は生き続けておりますとも」
 隣に立った彼は、優しく頭を撫でてくれた。まるで子どもにするような手つきなのに、反抗する気になれない。
「私に会えなくなると、そんなに寂しいですか?」
「そ、それは……まあ」
「そうですか。……ありがとうございます。私もあなたに会えなくなるのは、たまらなく苦しく、悲痛で、耐えられないでしょう」
 ほとんど変わらない位置にある茶と緑のオッドアイが、長い睫毛の裏に隠れた。
 どくりと、覚えのある高鳴りが身体を震わせる。
 いや、これは彼があまりにも美しすぎるゆえだ。人ならざる者の優美さにまだ慣れていないせいだ。
「俺も、大丈夫だよ。簡単に死んだりしたら、あの世であいつに怒られそうだし。今はそう思うよ」
 視線を持ち上げた彼は、心から嬉しそうに微笑んだ。
 喉の奥が、変に苦しい。
 ふと、足元に影ができた。疑問に思うと同時に、全身を優しい感触で包まれる。
「本当に大丈夫ですか? お辛そうですが」
 どうやら彼に抱きしめられているらしい。誰かに見られたらという焦燥感は確かにあるのに、ほのかに伝わってくる熱が不思議と上書きしてしまう。
「ご、ごめん気を遣わせたね。本当に大丈夫だから」
 落ち着いたら落ち着いたで、心音が思い出したように早鐘を刻み始める。彼に知られたくなくて、なるべくゆっくりと身体を離した。
「なら、よろしいのですが……。遠慮なさらず、私に寄りかかってくださいね。あなたの苦しみは、私の苦しみですから」
 向けられた微笑みがどこか眩しいのは、若返った容姿のせいだろうか。
 頬を撫でる風がやけに涼しく感じるのは、全身がほんのり熱いからだろうか。
「……あんまり献身的すぎるのも、困りものだな」
 思った以上に小さい声だったようで、彼の耳には届いていなかった。
 よかった。きっと、彼をただ困惑させてしまうだけだから。畳む

お題SS 編集

【300字SS】希望の防波堤

#CPなし

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「つなぐ」です。

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「散々にやられたようだな」
 宿屋に併設の酒場までようやく辿り着くと、出入口近くの二人席で一人飲んでいた男に声をかけられた。
「一人、か。仲間を失ったか」
 物理的にも精神的にも、支柱だったものが消えた。つながりが、跡形もなくなった。
「……おっさん、何者?」
 震えそうな全身を誤魔化すためでも、不信感ゆえでもあった。
 男は無言で、グラスを傾けた。
 ため息をついて、足を進める。ヤケ酒は止めだ。
「まだ、使命を果たすつもりか」
 初めて、男の顔をまじまじと見つめた。
 記憶の隅に引っかかる、印象的な緑の双眸は薄く濁っている。
 まさか、この人は。
「歴代の勇者の悲願もある。諦めるわけにはいかない」
 返ってくるものは、何もなかった。畳む

300字SS 編集

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