Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

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2022年8月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

【300字SS】さまざまな想いをのせて

#CPなし

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300字SS  のお題に挑戦しました。お題は「石」です。

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「不完全なのがいいのよ」
一粒の天然石が彩られたブレスレットを弄りながら彼女はほのかに笑った。
「もちろん宝石なみにキレイなのもあるけどね。でも、わたしはひび割れてたり透明じゃなかったり、そういうのが愛おしいの」
「そういうもんかなぁ……私は宝石の方が好きだけど」
宝石は完璧だ。どの角度から見ても美しいし、隙がない。身につけていると自身の格も上がる気がする。
「わかるわよ。でも、その好きは憧れっていうのもあるんじゃない?」
こういう鋭いところ、本当侮れない。
「……じゃあ、あなたは?」
「……落ち着くのよ」
自分も完璧じゃないから? いや、彼女は完璧にみえる。
変わらない笑みからは、答えは読めなかった。畳む

300字SS 編集

2022年7月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

死神は気まぐれに舞い降りる

#CPなし

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深夜の真剣物書き120分一本勝負 のお題に挑戦しました。
お題は「①肌寒い夜」を使いました。

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「もしもし?」
 耳に届くすすり泣く声に、やっぱりな、と眉をひそめる。
 予感じゃない。スマホに表示された名前を見てからとうに確信していた。
『ねえ、あなたも、見たでしょ? 見てしまったんでしょ?』
「……ああ」
 溜め息だったのか、息を飲んだのか。
 どれだけの衝撃と絶望を感じているのかだけは、ただ、わかった。
『なんで……なんで、なの……!』
 俺たちには不思議なつながりがあった。
 夢――一人の人間が意識なく宙に浮いていて、少しすると頭の先から白い煙のようなものが狼煙のように立ち上り続けるという内容を、何の前触れもなしに見ることがある。
 それは、彼女も同じ夢を見たという証拠。
 どちらかの知り合いが、亡くなったという証拠。
 今日……いや、明日かその次の日か。いずれ、逃れられない事実を突きつけられる。
 俺たちに血縁関係もなければ、共通の知り合いもいない。たまたま就業先で出会っただけなのに、その瞬間から死神とも言うべき力が発現したのだ。
 まるでファンタジーな出来事を前に打つ手など思いつきやしなかった。ただただ翻弄され、神経を蝕まれていく。
『もう……もういやよ! 私もうこんなのいや……!』
 荒々しい吐息に同調しかけて、やめた。俺だけはしっかりしていなくては、お互い堕ちる事態だけは避けなければ。
「……神様でも悪魔でも気まぐれ起こして、なくしてくれるかも。いや、なくなれって祈ってないと」
『そんな気休めいらない!』
「ごめん。ただ、」
 ――そう言い聞かせでもしてないと気がおかしくなるから。
 言えなかった。俺はそうでも彼女は俺じゃない。気持ちだけは痛いほどわかるから責められない。叫び出したいのは俺だって同じだ。
 スマホを握る手が細かく震え出す。
 たったふたりで世界に閉じ込められたようだ。生き延びるすべはどこにあるのかとがむしゃらに足掻いて、無駄に終わり、絶望しながら夜明けを迎えている——そんな気分にさせられる。
『……いえ、ごめん、なさい。あなただって私と同じ、なのに』
 力なく首を振った。喉の奥からこみ上げてくるものを必死に飲み込む。

 なぜ、いきなりこんな能力に目覚めたのか。
 なぜ、俺たちなのか。
 なぜ、俺たちでなければならなかったんだ。

「……とりあえず、また大きな図書館とかネットとか、見てみる」
 検索していないワードはなんだろう。まだ行っていない図書館は?
 先が見えなくても、無駄な足掻きでも、今はとにかく動き続けるしかない。「見えない」ということは、未来が決まっていないということだから。
『……スピリチュアルなお店とか、意味、あるかな』
「そうか、そうだね。全然ありそうだから、そういうところも当たってみよう。意外にすぐ手がかりが見つかったりして」
 努めて明るめの声を出す。事実、その線は今まで考えつかなかったのだ。落ち着いてさえいれば、突破口を見つけてくれるのはいつも彼女だった。
『いつもありがとう。……頼ってばかりで、本当にごめんなさい』
 少しだけ、声色に精気が戻ったように聞こえた。
「ううん、俺もありがとう。正直、ちょっと折れかけてた」
『……絶対、こんな力、なくそう』

 電話を終えて、部屋の窓を開けた。真夏にさしかかろうという季節なのに、肌を撫でる風に思わず首をすくめる。
 身体の芯は、あの日からすっかり冷え切ってしまった。
 毎夜、こわくてたまらない。好きだった静寂の時間は、すっかり塗り替えられてしまった。
 早く、取り戻さないと。
 俺たちは、ただの人間なんだ。畳む

ワンライ 編集

【300字SS】嗚呼 孤独の日々

#CPなし

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300字SS  のお題に挑戦しました。お題は「洗う」です。

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初めての時はみっともなく両手が震えていた。時には失敗して報復を受け、逆に命の危険を覚えたほどだ。
何とも思わなくなったのはいつからだろう。
ある日、一心不乱に手を洗う自分を見下ろしているもう一人の自分がいた。
「そいつ」は全く落ちない両手のよごれを信じたくないというような素振りで確認と洗浄を繰り返していた。時にはみっともなく奇声まで上げる始末。
——馬鹿だ。ああ、本当に馬鹿だ。
だったらなぜこの道を選んだ。どうしても成し遂げたい目的があるから、この道を選択したんだろう?
もっと非情になれ。感情を捨てろ。洗い落とすべき対象はそっちだ。

足を踏み入れた時点でもう、「明るい未来」などやってはこないのだから。畳む

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2022年6月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

【300字SS】隣の悪魔

#男女もの

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300字SS  のお題に挑戦しました。お題は「手」です。

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手を離さないで。
確かにそう願った。懇願したと言ってもいい。
そうじゃないと自分を絶対保てないとわかっていたから。一番信頼しているからこそあなたに伝えた。
なのに……約束を破った。予想通りの醜態を晒す私を、泣き叫ぶ私を、あなたは残酷にも見捨てた。
「任せろ」と言ったあの力強い声は演技だったの? 見抜けなかった私が馬鹿だったの?
ああ、もう何も信じられない。全くどっちが役立たずなんだか……

「だから悪かったって! あんな怖いお化け屋敷だって思わなかったんだよ!」
「知らない! 無理して付き合ってあげたのに……信じらんない!」畳む

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2021年10月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

ひっつき虫が可愛く見えるまで

#BL小説

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ふらっと思いついたまま書いてみたものです。
主人公:無自覚な友達以上恋人未満
お相手:片思い
な雰囲気です。

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 コイツは風邪を引いたりすると、必ず自分に泣きついてくる。
 ……それまでは少しでも困ったことがあると、だったが「本当にピンチな時だけにしろ」と交渉しまくった結果が、今だったりする。コイツにとってのピンチは風邪らしい。
『病気になると寂しくなったり人恋しくなったりするじゃん!』
 とは、本人の心からの弁である。
 幸い、高校時代までスポーツをやっていたおかげか頻繁に起きはしないものの、非常にうっとうしいのにかわりはない。


「安藤~どこ行くんだよ~オレを一人にしないで~」
「だー! 買い出しだってんだろが!」
「そんなの宅配とか通販でいいじゃんか~」
「今すぐ持ってきてもらえるわけないし配達の方に申し訳なさすぎるわ! てか徒歩5分もかからないコンビニなんだから我慢しろっての!」
 これである。毎回、これである。
 とにかくべったりひっついてくるのだ。いくら友人とはいえ同性に隙間なくくっついて気持ち悪くないのだろうか?
「ったく、お前は毎回毎回しょーもないな……」
 やはり寝入った隙に行くしかない。一応病人だから気を遣う心はあるものの、精神力が異常にがりがり削られて、気を抜いたら共倒れしてしまうんじゃないかと思うこともある。
「へへ、安藤が優しいとこも毎回変わらないよ」
「へいへい、嬉しいお言葉をどうも」
 ベッドに大人しく横になった石川はふにゃりと口元を緩めた。身長が180以上ある、精悍な男の笑顔にはつくづく見えない。
「つーか、いい加減彼女とか作れよ。よっぽど甲斐甲斐しく世話してもらえんぜ?」
 余計なお世話だろうが、言わずにはいられなかった。自分だって、いつまでも「お世話係」をやらされたらたまったもんじゃない。
「……え?」
 さっきまでの笑顔はどこへやら、見事に固まってしまった石川にこちらも面食らう。
「な、なんだよ。俺ヘンなこと言ったかよ。そりゃ余計なお世話だと思ったけどよ」
 その気になれば、恋人という関係を手に入れられる容姿も性格も備わっている。他の友人もきっと同じ評価をするだろう。
「……オレを捨てるんだ」
 全く予想外の言葉に勢いよく殴られた。恋人に縋り付くダメ男そのものじゃないか。
「オレが頼れるのは安藤しかいないのに……」
「いやいや、他にもいるだろ。お前が俺にばっか言ってくるだけで」
「オレは安藤がいいの!」
 本当に、物理的に縋り付いてきた。振りほどきたくとも病人相手に本気は出せないのに、ものすごい力が腕にかかっていて痛い。
「おま、ちょっと力ゆる」
「安藤じゃなきゃイヤなんだ。いつだって、安藤にそばにいて欲しいんだよ」
 似たようなことは高校生の頃から言われてきた。まるでお熱い告白のようにも聞こえると冗談まみれで返しては石川がただ笑って、気づけばやり取りの頻度は減った。
 どういうつもりで言葉にしているのか、深くは考えていなかった。ただ、石川がどこか寂しそうな雰囲気を漂わせていたような気はする。
「そ、そばにって、なんか、意味合い違うように聞こえるんだけど」
 今日はいつもと違う。風邪を引いているせい? だとしてもこんなに戸惑うだろうか。らしくない返答をしてしまうだろうか。
「ちがくないよ。オレにとっては一緒だから」
 見上げてくる石川の瞳は完全に高熱で揺れていた。触れたら崩れてしまうんじゃないかとつい思ってしまうほど、頬も熟れすぎている。
「オレには安藤だけだもん。知らないでしょ、オレがどんだけ安藤を」
「ま、待て待て。お前風邪引いた勢いで変なこと言うんじゃねえって」
 この流れはお互いにとって不幸しか生まない気がする。もし危惧している通りの流れになったら正直受け止め切れない。
「変なことじゃないよ。オレ、前から言ってるじゃん」
 触れられた腕から伝わる熱さで、自分まで眩暈でも起こしそうだ。こんな展開になるなんて誰が想像しただろう。
「安藤……本当に、だめ? オレ、一ミリも望みなし?」
 これでもかというくらいに眉尻を下げて、図体とは正反対の空気を一気に纏いだした。
 正直、ずるい。こんなの、駄目だと一刀両断しづらいじゃないか。いや、ここで中途半端な態度を晒してしまうのがいけないんだと思う、思うが。
「……なんだかんだで、大事な奴だとは思ってるよ。じゃなかったら、クソ面倒なお世話なんてしねえし」
 石川が求める意味とは違うだろうが、嘘ではない。一番つるんでいる友人だし、一緒にいると気が楽というか、自然体でいられる存在だったりする。
「……安藤がそんなこと言ってくれるの、はじめてだね」
 本当に驚いたようで、小さい双眸がかなり見開かれている。
「ありがとう、納得したよ。今はね」
「今は、ってなんだよ」
「うーん……そうだなぁ」
 頬をそろりとひと撫でした石川は、唇の端をわずかに持ち上げた。
「覚悟しといてね、ってことかな」
 小悪魔のような笑みとは、今のような表情を言うのだろうか。
 初めて、心臓が無駄に高鳴ってしまった。
「へいへい。心からお待ちしておりますからいい加減寝ろ」
 悟られないよう、石川の頭を枕に押しつけて布団をかぶせる。
 きっと自分も見えない熱に浮かされているに違いない。そう思い込まないと、動揺を抑えられそうにはなかった。畳む

その他SS 編集

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