Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

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【300字SS】「いい子」はもう終わり

#CPなし

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「待つ」です。

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「大人しく待ってなさい。私がいいと言うまで来てはだめよ」
「ここは危険だから。お前を痛い目に遭わせたくないんだ」

 待ったよ。充分待ったでしょ?
 何度も寂しさで埋めつくされて、立ち上がれないほどに絶望しても、そうやって足を止めたよね。
 二人の気持ちはわかってる。もう、小さな子どもじゃないもの。
 そうよ、私、こんなにも大きくなったんだから。
 ——だけど、やっぱり耐えられない。何年経っても、他の誰と触れ合っても、胸の中に空いた暗い暗い穴は、消えない。
 ねえ。私の親なら、私の気持ち、わかってくれるでしょ?

 ——ああ。二人の顔が歪んでる。
 だけどごめんね。お願いだから、もう、そっちにいかせて。畳む

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【300字SS】継がれゆく

#CPなし

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「靴」です。

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 桜を思わせる薄桃色のハイヒールは、私の憧れだった。履けたら一人前の大人になれる気がしていた。
「ふふ、有希にはまだ大きいわね」
 ぶかぶかの足を見て微笑んでいた母が、履いている姿を見たことはない。
「お母さんはもう、似合わないからね。そうね、有希が履いた方がいいわ」
 時々、母がハイヒールを寂しそうに手入れしていること。私の記憶にない、父の名前を呟いていること。
 歳を重ねて、私はその素振りの意味を知った。
「遠慮しないで。大事にしてくれたら嬉しいわ」
 笑顔と言葉に嘘はない。それでも、確かな哀感さがにじみ出ていた。

 今、私の足元をあのハイヒールが彩っている。
 二人分の思い出はちょっと重いけれど、心はあたたかい。畳む

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【300字SS】永遠に

#男女もの

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「おくる」です。

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 見送った日の背中が未だに忘れられない。
『……僕を信じて、待っててくれ』
 向かった場所は教えてくれなかった。連絡を取るのも禁じられた。お互いを唯一つないでいるのは、ネックレスに通した婚約指輪だけ。
 苛立ち以上に不安が大きかった。最悪の想像ばかりが脳裏をよぎって仕方ない。
「ごめんね、説得できなかったよ」
 ようやく、ようやく逢えた彼は、目を伏せながら当たり前のようにそう告げた。
 訊き返す声は、出なかった。
「人間と結婚したら君を殺すと言われた。秘密を知られるわけにはいかないって」
 寒い。足の力が抜けていく。
「わかってくれるよね? 僕は、君を誰にも渡したくないんだ」
 この感触は、薬指から?
 ……私、笑えてるかしら畳む

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【300字SS】甘い言葉をくれるひとは

#男女もの

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「甘い」です。

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「貴方の声は簡単に私を虜にしてしまうの。耳が蕩けるようよ」
「なら僕は『君の瞳も格好いい声も柔らかい髪も、全部僕を虜にして離さない……君はまさに運命なんだ!』」

「「いやいや、甘すぎ!」」

 二人してお腹を抱える。まさか一言一句綺麗に揃うなんて、素晴らしい奇跡だ。
「ああ、こんなに笑ったの久しぶりだよ」
 笑いで生まれた熱が消えていく。現実が代わりに降り積もる。
「これで、きっと穏やかにいける」
 白いベッドに腰掛けたままの彼は、こうなって幾度目かの苦笑を零す。
「身体がなくても、僕はずっと君と一緒だ。今度は夢で、たくさん逢おう」
 意識して唇を持ち上げた。
「……忘れないで」
 忘れないよ。あなたが最初で最後だもの。畳む

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【300字SS】最初で最後

#男女もの

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「初」です。

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「今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ。僕としては自分でよかったのかなって今でも思ってるけど」
「いいえ、いいえ。わたく、私こそ我が儘を聞いていただいて、感謝しています」
 もうすぐ今日が終わってしまう。
 終われば、この人の前にはもう、いられなくなる。
 最初で最後の初恋は、甘くもあり苦くもあった。
 ……大好きな人と一日、自由にいられただけでも、幸運と思わないと。
「ど、どうしたの? どこか痛い?」
「お気に、なさらないで。とても、幸せで」
 負の感情は一切含ませてはいけない。一番の宝物としてしまっておけるものにしておきたい。
「それじゃあ、さようなら」

 彼が引き止めてくれても、初恋は消える定めなのだ。畳む

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