【300字SS】これは不敬な感情だから

#BL小説

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「酔う」です。
桜の木の精と恋人を亡くした社会人のお話。
『現実を忘れられるなら、今は』の話が元ネタです。

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「桜、結構散ってるけど、まだきれいだね」
 桜を見上げる彼の瞳は、柔らかい光を放っている。まるで私自身が見つめられているようで、頬が熱い。
「今年も立派に咲きましたから。貴方のおかげです」
「褒めすぎ。俺はなにもしてないよ」
 彼の頬もほのかに色づいていて、さらに温度が上がった気がした。
 ふと、双眸が細められた。無意識か、空に手を伸ばして散る花びらを掴むような動きを繰り返す。
 ——そういえば、大切だったあの方とそんな遊びもしていましたね。
 無駄な熱が一気に抜けた。人間風に表現するなら「酔いが覚めた」だろうか。
「ごめん、俺、なにやってんだろ」
 我に返った彼は不器用な笑みを向ける。
 私は、首を振るしかできなかった。畳む

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