Short Short Collections
主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。
お題SS:君の甘さは気持ち悪い
#男女もの「フリーワンライ企画」さんのお題に挑戦しました。
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私に特別な気持ちでも抱いてる?
からかってるだけ?
誰かと「私を騙せるのは誰か」みたいな賭けでもしてる?
特になにも考えてない?
思いつく限りの可能性を並べてみた。
でも、どれもピンとこない。敢えて選ぶなら二つ目か三つ目だろうか。
迷うのは、彼の真意が全く見えてこないから。
「人の顔、じっと見てどうしたの?」
目の前に想像してた男の顔が現れてびっくりしてしまった。
「そんなのけぞらなくてもいいじゃん? 面白いねぇ」
……そうだ。そういえば担任に「学級委員だからな!」と急にお願いされた書類整理の途中だった。
「……ねえ。今さらだけど、あなたは別にやらなくていいのよ?」
言外に手伝わなくてもいいと告げたつもりだったが、彼はやはり笑うだけ。
調子が狂う。私にどうしろというの。
あなたは一体、私になにを求めてるの。
「あれ、手止まってるよ?」
疲れたと勘違いでもしたのだろうか、胸の高さほどまで積まれた書類の山から、半分ほどを持っていく。
「……なぜ?」
気づくと、問いかけていた。
「あなたは、なぜ私にだけこんなに優しいの?」
そして、後悔した。
こんなタイミングで訊くつもりはなかった。もっと、雑談に近いノリで口にするつもりだった。
こんな、ふたりきりの教室でなんて……雰囲気が、悪すぎる。
「やっと訊いてくれた」
いちだんと柔らかさを増した視線に、心臓が急激に早鐘を打ち出す。
「というか、わざわざ訊いてくるなんて、本当にわかってなかったの?」
これ以上見ていられなくて、慌てて目線を落とす。どこか呆れたような笑い声が耳を打った。
「でも、そうだよね。わかってなかったから、態度が変わらなかったんだもんね」
こういうのは昔から苦手だった。恋自体したことがないから、どう振る舞えば正解なのかわからない。
急に怖くなってきて、反射的に席を立った。そのまま教室を飛び出そうとするが、腕を引っ張られて身体が動かなくなる。
「逃げるなんて卑怯だよ?」
振り向いた先には、わずかな悲しさを含めた笑顔が待っていた。
「せめて、好きか嫌いかなんとも思ってないか、答えだけでもくれないと」
わからない。真意を探ることで精一杯で、自分の気持ちに向き合ったことなんてなかった。
私はどうすればいいの。
調子を狂わされたこの状態から、どう抜け出せばいいの。
焦るだけの私の中に、答えは未だ見えてこなかった。畳む
きみはおれだけのものだから
#BL小説「一次創作BL版深夜の真剣60分一本勝負」 さんのお題に挑戦しました。
使用お題は『呼気』『許して』です。
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「許して」
背中に届く声と呼吸のリズムは、まだ「普通」だった。
細かく震えている程度なら、まだ「足りない」。
「許、して」
次第に、呼吸の乱れが口調にも移り始めた。
怖いものの苦手な人が、お化け屋敷の中間まで進んだような状態といえばわかるだろうか?
でも、まだまだ足りないよ。君にはもっとわかってもらわないと。
君が俺に対して、どんな愚行を犯したのかを。
「ゆる、して……おねがい、だから……」
しゃくるような呼吸が混ざりだした。ようやく、自らの罪の重さを自覚し始めたのだろうか?
自然と唇が持ち上がる。
でも、まだ物足りないんだ。君はもっと、自分の立場というものを理解してもらわないといけない。
何度、このくだらない茶番を繰り返していると思っているの?
「ごめ、なさ……も、二度としませんから……僕は、君だけのものだから……!」
背中に引っ張られる感触を覚えた瞬間、身体ごとゆっくりと振り向いた。
すべて想定通りの展開に、恋人の表情だった。
「本当に、わかってくれた?」
「俺のもとから逃げ出そうとしたくせに?」
「君は俺のものだって理解してくれたと、本当に信じていいの?」
普段以上に大きい瞳を涙で埋めて、恋人は何度もうなずきを繰り返す。俺の腕をすがるように掴んだ手からは、はっきりとした震えが伝わってきていた。
ああ、この表情がたまらない。
俺から逃げられない、身体も心も完全に縛られていると実感できる瞬間は、麻薬にも似た高揚感を与えてくれる。
「二度と、自分の立場を忘れないで?」
跪いて、小動物のような恋人に触れるだけのキスを与える。そのまま腕の中に引き寄せると、剥き出しになっている首筋に吸い付いた。
「君はずっと、俺だけのものだから。何があっても……ね」畳む
使用お題:もって三日の絶交
#男女もの「フリーワンライ企画」 さんのお題に挑戦しました。
いろいろネタを考えたけど、結局素直に使って書きましたw
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絶交だと言われたけど、私はそんなに気にしていなかった。
だって彼は、自分で言うのもなんだけど私のことが本当に大好きで、多分私がいないと生きていけないような人だから、もっても一日だけだと思ってた。
なのにおかしい。
三日目が終わろうとしてるけど、大学に行っている間以外は部屋に引きこもって顔も合わせようとしてくれない。
私の部屋だけにあるダブルベッドも私ひとりきり。そういえばひとりで寝るってはじめてだ。
そんなに怒らせてしまったなんて……私は、無意識に甘えすぎていた? 確かに、彼はなんでも笑って許してくれる。
ああ、そういえば最初の頃は懐の深すぎる彼に甘えないようにって自分でブレーキをかけていたけど、いつからか緩んでいたかもしれない。
気づいたら涙がこぼれていた。泣く資格なんてないのに、勝手に流れてくる涙が悔しい。
私も、彼がいないと生きていけないからだになっていたんだね。
それに今頃気づくなんて……ほんと、ばかみたい。
「ごめんなさい! 本当にごめんなさい……!」
部屋のドアを叩きながら叫ぶように謝って、その場に崩れ落ちてしまう。
簡単に許されるなんて思ってない。自己満足って思われてもいい。とにかく謝って、また私に笑いかけてほしい。大好きだと言ってほしい。
ややして、控えめにドアの開く音がした。
「……ごめん。今回は意地張っちゃったんだ。泣かせちゃって、俺こそ本当にごめんね」
身体を包む三日ぶりのぬくもりに、違う涙が溢れた。畳む
わずかになにかが変わった日
#BL小説「一次創作BL版深夜の真剣60分一本勝負」 さんのお題に挑戦しました。
使用お題は『ターニングポイント』『エイプリルフール』です。
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「なあ、付き合ってみねえ?」
いつもの学校の帰り道、まるで世間話のように切り出した俺に、隣を歩く幼なじみは一瞬動きを止めた。
「……どこに?」
「場所じゃねえって」
口元を引き結んで真剣に見上げる俺の姿に、さすがに意味を理解したらしい。それでも視線は戸惑ったように四方をさまよう。
「……ああ、そういえば今日ってエイプリルフールだったな。くだらねーこと言うなって」
軽く笑い飛ばして、無理やりでも冗談ですませようとしている。
ある程度予想はしていた。ショックはあれど、表には出さない。
だから――強気に出てみるしかないと思った。
腕を組んでみる。
「っお、おい」
そのまま恋人繋ぎをしてみる。
「ま、待て。離せって」
並んで立つと、俺の頭の位置がちょうど彼の肩口に来るから、寄り添ってみる。
「や、やめろってば!」
力づくで距離を作った彼の顔は、引くというより戸惑いだけで満たされていた。
赤い顔が可愛いと思えてしまった時点で、抱きしめてキスまでしたいと願ってしまった時点で、やっぱり俺はこいつのことを……。
いつからだ? 記憶を高速で巻き戻してもわからない。
気づけばこの目は、女子ではなく彼だけを追っていたのだから。
「な、なあ」
気まずい空気にとりあえず割り込んだのは、彼だった。
「その、もっかい確認するけど……エイプリルフールは、関係ないんだよな?」
一語一語、噛みしめるように問いかけてくる。そういえばこいつは、根はとても真面目な性格だった。
「……うん」
目を微妙にそらして頷く。今になって急に怖じ気づいてきてしまった。
でも、ここまで行動しておいて黙ったままもずるいだけだ。もう一度、勇気を振り絞らないといけない。
「お前を見る目が、気づいたら変化してて」
「本当に、そういう目で見てるのかどうか、確かめたくて」
「勢いだけで、あんなこと言って、手繋いだりした」
また目をそらしたい臆病さを何度も押し込んで、まっすぐに視線を向けてくる彼を捉え続けながら白状する。改めて考えれば、俺自身のために気持ちをまるっきり無視して利用したようなものだ。怒られても何も言えない。
「で、どうだったんだよ」
「……え?」
「だから、結果だよ。そういう目で見てたって、確定なのか?」
予想もしなかった展開に頭が追いつかない。どう答えればいいのか戸惑っていると、突然彼は背中を向けてしまった。
「お、おい?」
「言えないなら、俺もなにも教えてやーんない」
「ちょ、ちょっと待てって。教えるってなにを? どういうことだよ?」
俺をわずかに振り返った幼なじみの目は、どこか柔らかく見えた。畳む
2021年1月1日[24件]
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お題SS:初めてついた嘘
#BL小説「一次創作お題ったー!」で生成されたお題に挑戦しました。
相手の気持ちをはかるためについたはずの嘘が、利用された?
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「あの子、お前のこと好きなんだってよ」
危険な賭けだった。
最悪、おれだけが悪者となって終わるだけ。
それでも、友達ポジションに甘んじたままの現状から脱却するにはこれしかないと思った。
多分、相当に追い込まれているのだろう。
「……ふーん」
クールが基本な想い人は、やはりクールに相槌を打った。
「嬉しくない? ほら、あの子って高嶺の花とか言われてるほどじゃん?」
普段、誰それが好きという話は全く聞かずとも、ネットにあふれる女性画像達に「この胸は好み」だの「尻の形がたまらない」だのと話題にしている姿を見ているから、人気のある女子から好かれていると知れば少なからず好意的な反応を取るだろうと踏んでいた。
それは同時に、自らの恋に終止符を打ち込まれるようなものだが……もはや、構わない。
――そうか。一ミリの期待さえも砕かせるための嘘だったのかも知れない。
「……そうだな。嬉しいかな」
こちらをじっと見つめていたかと思うと、目元を緩めてそう返してきた。
「そ、う。やっぱり、そうだよな」
――覚悟していたとはいえ、つらい。
いや、覚悟が足りなかったんだ。どれくらい彼への思いを秘めていたか、理解していたようでできていなかった。
「じゃ、じゃあ、もういっそ告白しちゃえば? いやーうらやましいなぁ。でも絶対お似合いのカップルになるだろうな、うん」
頭をかくフリをして俯く。なにを言っているのかおれ自身もよくわからない。口を開いていないとみっともなく泣いてしまいそうなことだけは自覚していた。
身から出た錆。今の状態にふさわしすぎる言葉だ。
「そんなにうらやましいのか」
聞こえてくる声は、どこか愉快そうだった。
「全く、わざわざ下手な嘘なんかつかなくてもいいのに」
よく、意味がわからなかった。
名前を呼ばれて、反射的に顔を上げてしまう。
漫画だらけの見慣れた本棚が、片目に映る。
あれ、どうして片目だけ?
もう片目には……また見慣れた、彼の顔、いや目が、見え……。
「はは、見事に固まってら」
口の片端を少しだけ持ち上げた、友人得意の笑いを見た瞬間――急激に時間が回り始めた。
言葉にならない声が唇からただこぼれる。恐怖に包まれたようにじりじりと後ずさって、勉強机の椅子にすぐ背中を塞がれてしまった。
どうして彼にいきなりキスをされたんだ?
どうしてずっと夢で見るだけだった光景が、前触れもなくやってきたんだ?
「半ギレでもして、嬉しいなんて言うなとか言ってくれるかと思ったのに、あっさり身を引くんだもんなぁ」
全く事態を飲み込めない自分をよそに、彼はやれやれと溜め息をついている。
「俺を試そうとか、お前が一番苦手なことをわざわざやらなくていいよ。だったら素直にぶつかってこいっての」
な? と小首をかしげて、彼はいたずらっぽく笑ってみせる。
バレていた、とでも言うのか。
あんなに必死にひた隠しにしていたはずの気持ちを、この男はとっくに見破っていたと、いうのか。
「バレてない。そう思ってた?」
頬をするりと撫でる感触が、まぎれもない現実なのだと知らしめてくる。
「知ってたよ。俺はずっと、お前の気持ちに気づいてたんだ」
女子と、恋する人間誰もが見惚れる笑顔が近づいてくる。
独り占めしているのは、他の誰でもない……おれ、ただひとり。
そう飲み込んだ瞬間、自然とまぶたが下りていた。畳む