🗐 ショートショートまとめ |星空と虹の橋

ワンドロやお題などで書いたSSまとめです

2021年09月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

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【300字SS】つかまってしまった。

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300字SS のお題に挑戦しました。お題は「残る」です。
物語の序章みたいな展開になりました。


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理解できない。
どうして彼が我が物顔で隣に座ってるんだろう。
「ねえ、あんたは居残り勉強する必要ないでしょ」
先生が戻ってこないうちに帰らせたい。本当はこんな変わり者の相手なんてしたくないのに。
「ほう、君も必要ないのに?」
彼はにやりと笑った。
「君の成績は確か、僕の三つ下だったはずだが」
「頭のいいあんたにはわかんないでしょう」
余計なことを言う気がして怖い。早く出て行って!
「矛盾した行動を取る理由は推察できる。が、君は彼にとって生徒でしかない」
「目的は、何」
唇を噛みしめる私に、彼は変わらない表情で対峙する。
「興味があるんだ。無駄とわかっていながら行動する感情源に」
観察させろ。
私に、拒否権はなかった。畳む

2021年08月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

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愛したくて愛したくて

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お題bot* のお題に挑戦しました。
お題は「愛されることには、まだ不慣れで、」を使いました。

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 自然を装って手を伸ばした瞬間、肩がぴくりと震えた。
「あ、ごめん……」
「わかってるよ。嫌なわけじゃないんだよな?」
 念のための質問に、彼は小さく頷いた。伏せた睫毛の震えで、内心が痛いほど表れているように見える。

 勇気を振り絞った告白に、受け入れてもらえた瞬間の自分以上に彼は驚いていたと思う。
『告白ってしてもらったことなくて……いつもこっちからしてたから』
 脈があるとわかっていても、自分から告白してOKをもらわないと気持ちを信じられないこと。
 だから多分、告白されていたとしたら、その瞬間に気持ちは冷めてしまっていたかもしれないこと。
 普通じゃないとわかっていても逃れられずにいたことを、告白したその日にカミングアウトされた。
『え、じゃあなんで俺は……』
『わかんない。わかんないけど、大丈夫だったんだ。むしろ、なんかぶわーってなったっていうか、もっと好きになったっていうか……』
 普段の付き合いで驚くほど正直者だと知っているから、ひどく戸惑っている姿を疑う気にもなれなかった。
『じゃあ、正式に付き合って、みる?』
 普通なら諸手を挙げて喜ぶ場面でお互いおそるおそるなのも変な状況だが、改めて気持ちを確かめてみると、控えめに笑いながら頷いてくれた。

「逆に見てみたいかもな、お前の『愛し過ぎちゃう』姿」
 微妙に伝わってくる緊張感をほぐすように肩を軽く撫でながら言うと、びっくりしたようにこちらを見つめてきた。
「トレーニング中なのはわかってるけど、愛されるのも好きだからさ。たまには受けたい」
『恋人に愛される喜び、っていうのを確かめてみたいんだ。あと、勉強もしてみたいし……だからしばらくは、受け身でいさせてくれる?』
 冗談を言っているようにはもちろん見えなかったし、それだけ自分との関係を本気で考えてくれているのだと嬉しくなった。
 今も不満らしい不満は特にないものの、欲が頭をもたげ始めたのもまた、事実で。
「……説明したこと、あったよね?」
 いつでも「100%」を出し切って接していた結果、ある人は重すぎると苦し紛れに呟かれ、ある人は束縛されているみたいで嫌だと泣かれ……反省して言動を改めてみたつもりでも、ゴールは「離別」一本だったという。
 興味本位もあるが、そこまでの愛情を浴びてみたいという純粋な願いもあった。
 たとえどんな姿であっても、彼への想いは絶対に揺るがない。
「わがまま言ってるのは自覚してる。強制もしない。……でも、味わってみたいなぁ」
 敢えて砕けた言い方をしてみた。
「完全再現じゃなくていいから! こんな感じだったかも、ぐらいで全然」
「余計に難しいよ……でも、僕のわがままに付き合ってもらってるもんね」
 気合いでも入れるためか一度頷くと、肩に伸ばしていた手をそっと外し、緩く握り込んできた。
 思わず息をのむ。
 覗き込むように見つめてきた瞳の輝きが、いつもと違う。不快にならないぎりぎりのところで捕らわれているような、どっちつかずの気分になる。
「いつも、本当にありがとう。君には負担ばっかりかけてるよね」
 まとわりつくような甘い声だった。普段は緊張の方が目立つのに。
「僕が君を好きな気持ち、ちゃんと伝わってるかな。いつ愛想尽かされるかわかんないって、毎日不安なんだよ?」
 握ったままの手の甲を、自らの頬に擦りつける。昔漫画でよく見た、段ボールに入れられた子犬のような上目遣い付きだ。
 すでになかなかの破壊力を発揮している。これで全力なのか、まだまだなのか。
「そんなことあるわけないだろ? 本気で好きだから告白だってしたんだし」
 それでも、あくまで日常生活の延長のつもりでいきたい。自ら望んだのは確かだが、ただ享受するばかりでは対等じゃない。
「……ほんと、君の言葉って不思議。すごく信じられるんだ。すごく、安心する」
 自然に距離を詰められ、抱き込まれた。わずかに速い心音に口元が思わず緩む。
「だからかな、僕にできることなら何でもしたい。君の願いを全部叶えてあげたい」
 背中にあった両手が顎を掬い上げる。まっすぐに与えられる視線から摂取できる糖分の限界値は、とうに超えている。めまいでも起こしてしまいそうだ。
「ねえ、僕にしてほしいこと、ない?」
「わざわざ言わなくたって、充分してもらってるよ」
「僕は足りない」
 とん、と肩を押されて、気づけば彼を見上げる体勢になっていた。いつも使っているソファは意外に固いんだなと、どうでもいい感想を内心呟いてしまう。無理やり意識を逸らしていないと今すぐ抱き潰してしまいそうで、安易にその選択肢をとるのは嫌だった。
「僕がどれだけ、君に夢中なのか……知らないでしょ?」
「わかってるけどな」
 触れるだけのキスを終えた瞬間、彼の瞳が頼りなげに揺れた。どうやら心の奥に巣くった不安は、相当しつこく根付いているらしい。
「俺も夢中じゃなかったら『お願い』聞こうなんて思わないし、『わかってる』なんて言えないだろ?」
「でも……」
 キスを返して、頭を包むように胸元へ引き寄せた。くせの弱い髪は相変わらず、指に簡単に絡まる。
「告白した時以上に好きになってる。できるんなら四六時中こうやって一緒にくっついてたいし、いっぱい愛したいって思ってるんだからな」
 シャツを掴む手にぎゅっと力が込められた。触れ合っている箇所すべてが妙に熱く感じるのはきっと、気のせいじゃない。
 彼に感化されて、自分も相当恥ずかしい台詞を口にしている自覚はある。あくまで彼のためだ、悶えるのは一人きりになった時でいい。
「……ずるい」
 くぐもった声は震えていた。
「僕より、君の方がトレーニングになってるんじゃない」
「はは、そうかな」
「本気で、君なしじゃ生きていけなくなっちゃうかも」
「そりゃ光栄なことで」
 もっと愛されるよろこびを味わって、二度と離れられないところまでいけばいい。
 少なくとも、自分はとっくにそうなっているのだから。

#[BL小説] 畳む
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【300字SS】世界でたったひとりだけ

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300字SS のお題に挑戦しました。お題は「波」です。
めっちゃ遅刻しました💦
ほんのりBL要素ありです。


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八月の終わりに聞く波音は、夕日も相まってどこか寂しい。
去年以上にそう感じるのは、取り巻く環境のせいだろうか。
「こうやって二人で遊ぶのも、今年までかもね」
「まーたそんなこと……大学別なの、不安すぎかよ」
隣に座る彼は呆れているけど、わかってない。
友は彼だけ。彼に仲のいい人が増えようと、自分は変わらない。
「お前が大事な友達だってのは変わらないから。変な心配すんなって」
笑顔が目にしみる。
「じゃあ、僕が世界で一番大事ですって今、誓ってくれる?」
手の甲にキスまでしてみせた。
「……冗談、だよな?」
「さあね?」
絆されてばかりじゃ悔しいし、少し意地悪してもバチは当たらないよね。
まあ、半分本気なんだけど。

#[BL小説] 畳む

2021年07月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

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そこまで触れないで

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深夜の真剣物書き120分一本勝負 のお題に挑戦したのですが、時間内に間に合わなかった代物です😅
途中まで書いていたので、もったいない精神で完成させました。
お題は「①確信 ②核心」を使いました。
だいぶむかーしに、ふと浮かんだシーンを殴り書きしたまま放置していたものだったりします。
珍しく、ファンタジーものです。

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 ――ようやく、ここまで来たのよ。
 懸命に息を殺して、視線の少し先で俯いたまま座る男を見やる。以前は少しでも動いたら目を覚ましていたのに、最近はよほどのことがない限りなくなった。
 回復術兼攻撃魔術も少し操れる術士を探しているという噂を聞きつけた時は、幼い頃から身につけていた教養と元々の素質に感謝した。
 偶然を装い、男の仲間に加われたのは我ながらうまく演じられたと思う。
 警戒心が強い性格ゆえに、仲間を増やしたがらないということはわかっていた。敢えて「そこそこ使える術士」を演じていたのも、無駄に警戒させないため。意外に面倒見のいいところがあったおかげで解雇されずに済んだのは幸運だと言えよう。
 そう、幸運ばかりだった。きっと神は、何もかも失った私を哀れんでくださったに違いない。
 髪留めに偽装した、針のように細いナイフをそっと抜き取る。男が目覚める気配は全くない。聞こえてくるのは規則正しい寝息と、木々のかすかなざわめきだけ。
 ――国の滅亡と同等の苦しみを、あの世で存分に味わうがいいわ。
 首筋を掠めそうなぎりぎりの位置にナイフを構え、一息に突き刺した。

「そろそろ、やってくるんじゃねえかと思ってたよ」

 皮膚を貫く感触は、味わう前になくなった。
 薄い月明かりの下で、二つの鋭い光がこちらをまっすぐに捉えている。
「っと、これはさっさと片付けるかね」
 目的を果たせなかったナイフはあっけなく奪われた。これ見よがしに振り子のように目の前でちらつかせた後、懐にしまう。
「……どうして……」
 口の奥が痛い。どうやらかみ砕く勢いで食いしばっているようだ。そうでもしないと耐えられない。やっと、やっと数年超しの復讐が終わると思っていたのに。
「マデューラ国の第一王女。そこに攻め入ったのが、俺がとうに捨てた国。だったか」
 正体はとうに見破られていたのか、つい最近なのか。男の表情からは読み取れない。
「復讐するのは結構だがな。俺にすんのはお門違いってもんだぜ」
 戦争を仕掛けられた頃には、男はとうに国を捨てていた。仲間に加わる前には知っていた情報だったが、国家相手に喧嘩を仕掛けられるほどの実力も人材もない絶望的な状態だった。
 自分にとっては捨てていようがいまいがどうでもいい。あの国の人間であることに、かわりはない。
「ま、俺にとってもあの国は滅んでもらいたいからちょうどいいかもな。どう?」
 軽々しい態度で、こいつは一体何を言い出すつもりなのか。
「あの国、今相当フラついてるんだってさ。アンタと俺、あと何人か雇えばボコボコにできると思わない?」
「ふざけるな!」
 氷の魔法を放つ。小さくとも鋭い刃は男の頬を掠め、薄闇に吸い込まれた。
「私が……私がどんな思いで、今まで生きてきたと思ってる……!」
「へえ、ほんとはそんな喋り方なんだ。『わああ、すみませんまた失敗しちゃいました~』とか、よくできてたじゃん」
「貴様ぁぁ!!」
 どう行動したのか覚えていない。気づけば首元に手をかけて地面に押し倒していた。逃げられないよう、魔術で男の全身を縛り付ける。
「ずいぶんと立派な殺気じゃん。さっきとは比べものにならないね」
 なぜ、平然と笑っていられる。自力で解けない拘束具をつけられているようなものなのに、どうして命乞いさえもしない。強がっているようにも見えないから、なおさら。
「ほら、早く殺しなよ。さっきみたいな力入れりゃ復讐達成できるぜ?」
 そうだ。この男が何を考えているのかわからないが、隙だらけなのは確かだ。早く終わらせるんだ、両親達の仇をとって、国を復興させるんだ。
 余裕だらけの顔がわずかに歪み始める。そういえば自らの手で人の命を奪うのは初めてだった。討伐依頼の最後を飾る悪党が人間の時、必ず彼がとどめを刺していた。
 視界が闇に覆われていた。いつのまにか、自ら蓋をしていたらしい。
「……お前は、本当に、甘いねぇ」
 不意に違和感を覚えて視界を開く。
 見なくてもわかる。喉元に得物を突きつけられている。両腕を魔術の有効範囲に含め忘れるなんて、致命的ではすまないミスを犯してしまった。
 だが、男は一向に得物を動かそうとしない。どこか愉快そうにも見える。
「わかってたさ。お前が途中から、俺のこと本気で殺そうとしていなかったこと」
「ふ、ざけたことを」
「さっきのナイフ。あのまま振り下ろしても急所は外れてた」
「私が、勉強不足なだけで……!」
「そんな言い訳で、本気で誤魔化せると思ってるのか?」
 頭の中では否定の単語が絶え間なく流れているのに、表に吐き出すことができない。
 ――彼の仕事ぶりを、一番近くで見ていたのは一体、だれ?
 この森に入る前は肌寒ささえ感じていたほどだったのに、汗がにじんで仕方ない。気温の変化がわからない。わかるのは、劣勢に置かれていることだけ。
「まあ、俺もお前をどうこうしようとは思ってないさ」
「なに……?」
「これでも、お前のことは結構気に入ってんだよ」
 理解できない。「ごっこ遊び」だったとしても、仲良く肩を並べて歩く生活はもうできない。
 あるいは、奴隷にでもなれと言っているのかもしれない。
「……殺せ」
 一瞬、男の双眸が揺らいだ気がした。
「お前にいいように使われるくらいなら、ここで果てた方がましよ」
 今度ははっきりと目を見開くと、可笑しそうに小さく笑った。
「何がおかしい!」
「そんな未練ありありの顔で言われても、ねぇ」
 そんなことはない。
 まぎれもない本心をぶつける猶予は、与えられなかった。
 おまけに受け入れがたい現実に襲われている。なぜ、どうしてこんなことに。抵抗らしい抵抗もできていない。
「言っただろ? 俺はわかってた、って」
 唇を解放した彼は、今度は満足そうに目を細めた。
「お前も俺のこと、意外に気に入ってるんだよな?」
 国を滅ぼされた後のこと。
 彼の仲間に加わった後のこと。
 様々な記憶が脳裏を走り抜ける。同時に説明できない感情がぐるぐるにかき回されて、胸の中を圧迫していく。
 私は復讐しなければならない。でなければひとり生き延びた意味がなくなる。こんな痴れ言に構っている暇などない、ないのに。

 気色悪いほどの微笑みから目が逸らせない。
 頬をすべる、ありえないほどに優しい手を払い落とせない。
 命を奪われるものも、奪うのを邪魔するものも、ない。そのチャンスを活かそうとする動きを、取れそうになかった。畳む

2021年06月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

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【300字SS】お題「影」

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300字SS のお題に挑戦しました。タイトル通り、お題は「影」です。

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「わたしとチカはいつでも一緒よ」
「双子みたいって言われたね! チカはただの友達じゃないって思ってたから嬉しい!」
「ね、服も髪型も一緒にしてみない? チカも嬉しいでしょ?」
わたしに憧れているチカは、わたしを決して否定しない。『私も同じこと考えてた』がいつからか口癖になっていた。

「チカちゃん……私また、告白された」
「チカちゃんと間違ってるんじゃないって言ったんだけど、違うって」

精一杯持ち上げた唇が震えてた。
……理由はわかってる。言葉にはできない。

「しかもチカちゃんと一緒にいるのやめろってまで言われたんだよ。ひどいよ。私、すごく幸せなのに」

……大丈夫。
チカはわたしの「影」でいることに、喜んでる。畳む

2021年05月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

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【300字SS】荒療治でなければ

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300字SS のお題に挑戦しました。お題は「届く」です。

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瞬時に開かれた視界の先には薄い闇が広がっていた。
呼吸が浅くなる。心臓がうるさい。
全身汗だくなのに、背筋が震えた。

『もう十分、待ったよ。とうとう何も返してくれなかったね』

そして彼は消えていった。追いかけようとした足は動かなかった。何を叫んでも聞いてくれなかった。
――告白されて、どっちつかずの態度を続けている私のせいだ。
近すぎる距離感が、先に見える道に靄をかけていた。
「ちゃんと返事をしたい」と告げたまま、彼の優しさに甘えていた。

いつでも言葉を届けられる場所にずっといてくれる。
そんなの、誰が決めたのだろう。

スマホに手を伸ばす。
おかげで、臆病の奥に隠れていた感情に気づけたのだ。畳む

2021年04月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

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営業時間は「いつまでも」希望

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深夜の真剣物書き120分一本勝負 のお題に挑戦しました。
お題は「③利用可能時間」を使いました。
本の読めるカフェ店長と常連客の話です。

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 喫茶店に置かれた本の数々は、店長自ら選定したものらしい。まるで小さな図書館のようだ。
 私の嗜好とぴったり合致すると、抱いていた予想が確信に変わったのは、ある日閉店時間間近で交わした会話からだった。

「やっとこの新作読み終えたんですけど、やっぱり感情が忙しくなる作家ですよね。すごく悲しくなったりほんわかしたり……すごいなぁ」
「おや、作家の卵としてはやっぱり気になりますか」
「だから違いますって。私のはあくまで趣味ですよ」
 店長は、ふと何かを思いついたようにカップを磨く手を止めた。「スタッフオンリー」と英語で書かれた扉をくぐり、少しして戻ってくる。
「この本、ご存じですか?」
 一般的な文庫本よりも厚みがある。
「うー、ん? 知らない、かも。作者もちょっと」
「推理ものなんですけど、登場人物がみんな濃くて、関係性も面白いんです。ちょっとこの作者を彷彿とさせるんですよ」
「へえ……推理小説は苦手な方なんですけど、大丈夫かな」
「そこまで複雑なトリックはないので大丈夫かと。よかったらお貸ししますよ」
「嬉しい! ありがとうございます」
 今では、閉店時間後もこうしてお喋りする仲にまでなった。ちなみに、私がわがままを言ったわけじゃない。
『他のお客様がいるとゆっくりお話できませんし、僕がお願いしたいんです』
 私も同じ気持ちだったし、そう頭を下げられたら頷くしかできない。
 最初こそ遠慮がちだったものの、楽しくも穏やかな空気に負けて、ずるずると居着いてしまっている。
 今更ながら、いくら何でも図々しすぎじゃないかしら、私。
「どうされました?」
 私とあまり歳が変わらないとこの間知った店長は、柔らかい印象の瞳をわずかに細めた。
「あ、いえ。私、店長のお言葉に甘えて長居しすぎだよなって。今更ですよね」
「そうですよ。そのまま気にされないでよかったのに」
 心外だとでも言いたげな口調だった。いや、さすがに心が広すぎやしないか?
 スマホの画面を点けて、思わず短い悲鳴が漏れた。最長記録を更新してしまうとは!
「いやいや、もうすぐ三時間経とうとしてますし! 店長、お店の片付けもあるのに」
「片付けならほら、してますよ。キッチンの方は料理長がしてくれてますし」
 たった一人の店員は店長の古い友人らしい。コーヒーなどの飲み物を入れるのは得意だけど料理の腕はからっきしだから頼み込んだと、恥ずかしそうに教えてくれた。
「じゃ、じゃあ……せめて、手伝わせてください」
「そんなに広い店ではありませんし、大丈夫ですから」
 暖簾に腕押し状態に近い。「いただいてばかりじゃ申し訳が立たないんです」的なことを告げたら、多分困らせてしまうだろう。それも本意じゃない。
「あなたがいたいだけ、いてくれていいんです」
 まっすぐに見つめられて、ぐるぐるしていた思考が止まる。
 気のせいだろうか、「店長」という仮面が少しずれたような印象を受ける。
「僕は、それが一番嬉しい」
 カウンターが間にあるのに、ものすごく近くに感じる。目がそらせない。心臓が大げさにどきどきしてきた。
 胸中でかたちになりつつあるものに、明確な名前を付けていいのか迷う。
 単なる自惚れかもしれない。けれど、そう言い切れない空気を、店長は醸し出している。
 例えばこれが恋愛小説なら、受け身側は鈍い場合が多いのに。
「……ごめんなさい。変なことを口走ってしまいましたね」
 本当にそう思ったのか、あるいは私の反応を不安に感じたのか、店長は本棚と飲食席が並ぶ空間へ足早に向かった。片付けに戻ろうという誤魔化しなのだろう。
「変なことじゃないです」
 椅子から立ち上がって、借りた本を胸元に抱き込む。
 こちらを振り返った店長が、わずかに目を見開いた。
「ありがとうございます」
 賭けてみることにした。……いいや。きっと、勝ちは「見えている」。
「……前から、気になっていたんです。お仕事帰りだけじゃなくて、休日にも定期的に立ち寄ってくれて、持参した本だけでなく、僕が選んだ本も読んでくださるようになって」
 最初は、手持ちのストックがなくなってしまったから試しに読んでみようというだけだった。
 読んだことのない本はどれも、その日中に読み終えてしまうくらい面白くて、こんなに私のツボを刺激する選書をしているのは誰なんだろうと気になったのが、すべての始まりだったのかもしれない。
「あなたから話しかけてくださった時は、お恥ずかしながら舞い上がってました。それが本選びにも影響していたんでしょうね、常連さんに『本棚の雰囲気変わったね』と突っ込まれてしまいました」
 つられて、頬が熱くなる。こんなにストレートな人だとは思わなかった。
 店長が歩み寄ってきた。半分でも腕を伸ばせば触れられるほどの距離を残して、意を決したように眉間に軽く皺を作る。
「あなたと読んだ本の感想を言い合いたいし、おすすめも教え合いたいし、あなたが書いた小説も読みたい。……あなたに叶えてほしいことがたくさん、あるんです。ですから、これからもお店にいらしてください。何時間でも構いませんから」
「……会うのは、お店だけでいいんですか?」
 全くつまらない返しだとわかっていても、ほんの少しだけ悪戯心が芽生えてしまった。
「……意外と、意地悪な方なんですね」
 言葉とは裏腹に若干うわずった声に、内心が手に取るようにわかってしまって口元がな緩みそうになる。ほぼ同い年だとようやく実感できて何だか嬉しい。
 答える代わりに、腕を伸ばして店長に触れる。
「小説はまだお約束できませんけど……喜んで、お付き合いさせてください。よろしくお願いします」

 時間が許すのなら、ずっと一緒にいたって構わない。
 店長だけじゃないのだと告げたら、どういう風に喜んでくれるだろう?

#男女もの畳む
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【300字SS】ライバルのつもりなのは?

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300字SS のお題に挑戦しました。お題は「道/路」です。
勢いで突っ走っただけの作品ですw

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「またお前ら揃って一位かよ! もはや化け物じゃね?」
あいつの進む道と交差してしまったのは、俺の人生で唯一の失敗だ。
すべてが順調だった。勉強も運動も人望もモテ度も首位の地位が揺らぐことはなかった。
視線の先に他人が映るなんて、絶対に許されないのに!
「僕はいつも必死だよ。間宮とは真逆だから」
無駄に自信なさげな態度も腹が立つ……!
「俺だって頑張ってるって。水瀬の方が余裕に見えるよ」
「じゃあ、お互いいい刺激になってるってことだね」
これからも頑張ろう。
笑顔で差し出された手をいっそ払いのけてしまえたら。
「ありがとう。間宮」
細められた双眸の隙間から、うっすらと視線を感じた。
……謎の寒気を感じたのは、なぜ。畳む

2021年02月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

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最後の嘘と願って

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深夜の真剣物書き120分一本勝負 のお題に挑戦しました。
お題は「③西日が差す窓」を使いました。お題要素は軽く触った程度です😅
どうしてもユーミンの曲『最後の嘘』が頭から離れなくなってしまいました……該当の歌詞は「朝日が差し込む〜」なんですけどね。。

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 彼は嘘つきだった。
 といっても呆れ果てるほどくだらないものや、こっちが本気で怒るほど洒落にならないものなど、無駄にバリエーション豊かだった。
 いつだって振り回されてきたけれど、嘘だとわかるのは最後に白旗を揚げるのは必ず彼だったからだ。きっかけを作るのが自分にあったとしても「降参」するのは彼だった。
 多分、甘えていたのだと思う。
 自分が原因なこともあるけれど、回数は圧倒的に彼が多いし、そういう性格でもあるのだろうと納得していた。

 朝から変わらない光景の部屋を、改めて見つめる。


 昨日の夜はいつもと同じようでいて、主に自分自身の勝手が少し違っていた。
 だから「きっかけ」を作ったのは間違いなく、自分。
「どうしたの、なんからしくないじゃん?」
 軽口を叩き合う延長上のような口調だったのは、多分気遣ってくれていたのだと思う。それに真面目な空気にしたところで、素直に吐き出すわけもなかった。
「……うるさいな。ほっといてよ」
 離れている間どういうことがあったのか察せなんて傲慢でしかないのに、そう願ってしまった。
 仕事で嫌なことがあっただけ。いつもなら鼻で笑って流せるレベルが、今日はなぜか胸につかえてしまっているだけ。疲れが溜まっているせいかもしれない。
 ここまでわかっていながら、彼には伝えなかった。悪い癖だ。
「あ、もしかして冷蔵庫にあったショートケーキ食べたのバレた? ごめん、どうしても食べたくって」
 ショートケーキは確かに買ってあった。まだ確認していないが、たとえ嘘だとしても「甘いもの好きな自分のために、明日にでももっと美味しいケーキを買ってくる」という意味だったのだと思う。
 そこまで推察できたのは、数時間後の未来でだった。
「嘘でも本当でも、ケーキくらい別にいいよ。……いいから、そういうくだらないの」
 放っておいてほしかった。一晩すれば元通りになって、こんなやり取りにも苛ついたりしなくなる。
 彼は何も知らないのに、あまりにも感情的になりすぎていた。
「……ごめん。何かあったんだね」
「そう思うなら、ほっといて」
 それからどんなやり取りをしていたのか、細かいところは思い出せない。
 ひたすらに、せっかく伸ばしてくれていた手を振り払い続けていた。ひどい態度だと頭のどこかで鳴っていた警報も無視して、気づけば部屋を包む空気はかつてないほどの重苦しさに溢れていた。

「……あのさ。俺と付き合ったこと、やっぱり後悔してるんじゃない?」

 一言一句、声の調子も、表情も忘れられない。
 笑っていた。雰囲気に似つかわしくないはっきりとした声だった。やせ我慢のようなものだったと今ならわかる。
 反論できなかったのは、彼の問いかけが頭の中でぐるぐると回り出し、まるで必死に材料をかき集めているようだったから。
「……ごめん、嘘。だけど悪い、言い過ぎた」
 ちょっと頭冷やしてくるよ。
 それが、三日前に聞いた彼の最後の台詞だった。


「こんなに落ち込んでるのに、後悔なんてしてるわけないでしょ……」
 今さらな返答だった。わずかでも口ごもった時点で、あの時の彼にとっては肯定されたも同然だ。
 異性と付き合うのをやめて、初めてできた同性の恋人だった。好きという気持ちにあれから揺るぎはないものの、半年ほど経って同性なりの難しさや悩みが出てきていたのも事実だった。
 隠していたつもりでもあんな言葉が飛び出すのだ、きっと見透かされていた。だから「頭を冷やす」と嘘をついて、出て行ってしまったのでは……。
「ほんと馬鹿だな、僕」
 後になって後悔する癖は直る兆しが全くない。今日はまともに食事すら取れなかった。お出かけ日和の天気なのに身体は全く動かず、部屋の中は薄暗い。
 そういえば、ベランダのカーテンを閉めたままだった。
『ここ、日当たりがすごいいいんだってさ。日当たり大事!』
 その一声で借りることを決めた部屋だったのを思い出しながら、ベージュ色のカーテンを開ける。
「まぶし……」
 真正面から浴びているような感覚に陥る。やたら目に沁みる気がして、ぎりぎりまで目蓋を下ろす。
 窓を突き抜ける光の大元は朝も夕方も一緒なのに、どうして後者はやたらもの悲しい気分にさせられるのだろう。……違う。きっとひとりきりだからだ。二人でいる時の空気はもっと、穏やかだった。
 ――このまま終わりだなんて思いたくない。頭を冷やすが嘘だなんて、思いたくない。
 目元を窓に押しつけた。光の強さとは裏腹にひんやりとした温度が、少しずつ熱を奪っていく。
「……まだ、決まったわけじゃない、よな」
 近所を探しに行ってもいなかったのは、たまたますれ違っただけだと信じたい。
 そもそも、仕事から帰ってきても部屋の様子に変化はなかった。何より、彼の荷物は全くの手つかず状態にある。スマホすら、未だテーブルに置かれたままなのだ。
 今日は気力が底まで落ちてしまったけれど、いつまでも立ち止まっているわけにはいかない。
 今度は自分が「降参」する番。
 そして、こんな嘘はもう最後にしてとお願いしなければ。

#[BL小説] 畳む
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【300字SS】曲がらない想い

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300字SS のお題に挑戦しました。お題は『運/うん』です。
何となく最初から最後までせわしない感じ(?)です。


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何かを選ぶ時、「ピン」と来た方とは別のものを選択する。
根拠のない理由に委ねるなんて、まるで誰かに運命を決められているみたいじゃない?
私は私の力で道を歩む。これからも、これまでも。
それが私の信条。

「君と付き合えるなんて思わなかった……本当にありがとう」
「大げさですよ。私もずっと好きだったんですから」
さりげないフォローが素敵で笑顔が可愛くてオンとオフの線引きがはっきりしていて……

「君は僕の運命の人なんだ。君しかいないって思ってた」
「君もそうだったら嬉しいな……なんて。ごめん、浮かれすぎだね」

貴方は……運命が示すままに、私を選んだと言うの?

百年の恋も冷めるって、こういう時も使っていいのかしら。畳む

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