お題ショートショートまとめ
主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。
カテゴリ「300字SS」[27件]
#CPなし
【300字SS】「いい子」はもう終わり

毎月300字小説企画 のお題に挑戦しました。お題は「待つ」です。
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「大人しく待ってなさい。私がいいと言うまで来てはだめよ」
「ここは危険だから。お前を痛い目に遭わせたくないんだ」
待ったよ。充分待ったでしょ?
何度も寂しさで埋めつくされて、立ち上がれないほどに絶望しても、そうやって足を止めたよね。
二人の気持ちはわかってる。もう、小さな子どもじゃないもの。
そうよ、私、こんなにも大きくなったんだから。
——だけど、やっぱり耐えられない。何年経っても、他の誰と触れ合っても、胸の中に空いた暗い暗い穴は、消えない。
ねえ。私の親なら、私の気持ち、わかってくれるでしょ?
——ああ。二人の顔が歪んでる。
だけどごめんね。お願いだから、もう、そっちにいかせて。畳む
【300字SS】「いい子」はもう終わり

毎月300字小説企画 のお題に挑戦しました。お題は「待つ」です。
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「大人しく待ってなさい。私がいいと言うまで来てはだめよ」
「ここは危険だから。お前を痛い目に遭わせたくないんだ」
待ったよ。充分待ったでしょ?
何度も寂しさで埋めつくされて、立ち上がれないほどに絶望しても、そうやって足を止めたよね。
二人の気持ちはわかってる。もう、小さな子どもじゃないもの。
そうよ、私、こんなにも大きくなったんだから。
——だけど、やっぱり耐えられない。何年経っても、他の誰と触れ合っても、胸の中に空いた暗い暗い穴は、消えない。
ねえ。私の親なら、私の気持ち、わかってくれるでしょ?
——ああ。二人の顔が歪んでる。
だけどごめんね。お願いだから、もう、そっちにいかせて。畳む
#CPなし
【300字SS】継がれゆく

毎月300字小説企画 のお題に挑戦しました。お題は「靴」です。
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桜を思わせる薄桃色のハイヒールは、私の憧れだった。履けたら一人前の大人になれる気がしていた。
「ふふ、有希にはまだ大きいわね」
ぶかぶかの足を見て微笑んでいた母が、履いている姿を見たことはない。
「お母さんはもう、似合わないからね。そうね、有希が履いた方がいいわ」
時々、母がハイヒールを寂しそうに手入れしていること。私の記憶にない、父の名前を呟いていること。
歳を重ねて、私はその素振りの意味を知った。
「遠慮しないで。大事にしてくれたら嬉しいわ」
笑顔と言葉に嘘はない。それでも、確かな哀感さがにじみ出ていた。
今、私の足元をあのハイヒールが彩っている。
二人分の思い出はちょっと重いけれど、心はあたたかい。畳む
【300字SS】継がれゆく

毎月300字小説企画 のお題に挑戦しました。お題は「靴」です。
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桜を思わせる薄桃色のハイヒールは、私の憧れだった。履けたら一人前の大人になれる気がしていた。
「ふふ、有希にはまだ大きいわね」
ぶかぶかの足を見て微笑んでいた母が、履いている姿を見たことはない。
「お母さんはもう、似合わないからね。そうね、有希が履いた方がいいわ」
時々、母がハイヒールを寂しそうに手入れしていること。私の記憶にない、父の名前を呟いていること。
歳を重ねて、私はその素振りの意味を知った。
「遠慮しないで。大事にしてくれたら嬉しいわ」
笑顔と言葉に嘘はない。それでも、確かな哀感さがにじみ出ていた。
今、私の足元をあのハイヒールが彩っている。
二人分の思い出はちょっと重いけれど、心はあたたかい。畳む
#男女もの
【300字SS】永遠に

毎月300字小説企画 のお題に挑戦しました。お題は「おくる」です。
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見送った日の背中が未だに忘れられない。
『……僕を信じて、待っててくれ』
向かった場所は教えてくれなかった。連絡を取るのも禁じられた。お互いを唯一つないでいるのは、ネックレスに通した婚約指輪だけ。
苛立ち以上に不安が大きかった。最悪の想像ばかりが脳裏をよぎって仕方ない。
「ごめんね、説得できなかったよ」
ようやく、ようやく逢えた彼は、目を伏せながら当たり前のようにそう告げた。
訊き返す声は、出なかった。
「人間と結婚したら君を殺すと言われた。秘密を知られるわけにはいかないって」
寒い。足の力が抜けていく。
「わかってくれるよね? 僕は、君を誰にも渡したくないんだ」
この感触は、薬指から?
……私、笑えてるかしら畳む
【300字SS】永遠に

毎月300字小説企画 のお題に挑戦しました。お題は「おくる」です。
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見送った日の背中が未だに忘れられない。
『……僕を信じて、待っててくれ』
向かった場所は教えてくれなかった。連絡を取るのも禁じられた。お互いを唯一つないでいるのは、ネックレスに通した婚約指輪だけ。
苛立ち以上に不安が大きかった。最悪の想像ばかりが脳裏をよぎって仕方ない。
「ごめんね、説得できなかったよ」
ようやく、ようやく逢えた彼は、目を伏せながら当たり前のようにそう告げた。
訊き返す声は、出なかった。
「人間と結婚したら君を殺すと言われた。秘密を知られるわけにはいかないって」
寒い。足の力が抜けていく。
「わかってくれるよね? 僕は、君を誰にも渡したくないんだ」
この感触は、薬指から?
……私、笑えてるかしら畳む
#男女もの
【300字SS】甘い言葉をくれるひとは

毎月300字小説企画 のお題に挑戦しました。お題は「甘い」です。
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「貴方の声は簡単に私を虜にしてしまうの。耳が蕩けるようよ」
「なら僕は『君の瞳も格好いい声も柔らかい髪も、全部僕を虜にして離さない……君はまさに運命なんだ!』」
「「いやいや、甘すぎ!」」
二人してお腹を抱える。まさか一言一句綺麗に揃うなんて、素晴らしい奇跡だ。
「ああ、こんなに笑ったの久しぶりだよ」
笑いで生まれた熱が消えていく。現実が代わりに降り積もる。
「これで、きっと穏やかにいける」
白いベッドに腰掛けたままの彼は、こうなって幾度目かの苦笑を零す。
「身体がなくても、僕はずっと君と一緒だ。今度は夢で、たくさん逢おう」
意識して唇を持ち上げた。
「……忘れないで」
忘れないよ。あなたが最初で最後だもの。畳む
【300字SS】甘い言葉をくれるひとは

毎月300字小説企画 のお題に挑戦しました。お題は「甘い」です。
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「貴方の声は簡単に私を虜にしてしまうの。耳が蕩けるようよ」
「なら僕は『君の瞳も格好いい声も柔らかい髪も、全部僕を虜にして離さない……君はまさに運命なんだ!』」
「「いやいや、甘すぎ!」」
二人してお腹を抱える。まさか一言一句綺麗に揃うなんて、素晴らしい奇跡だ。
「ああ、こんなに笑ったの久しぶりだよ」
笑いで生まれた熱が消えていく。現実が代わりに降り積もる。
「これで、きっと穏やかにいける」
白いベッドに腰掛けたままの彼は、こうなって幾度目かの苦笑を零す。
「身体がなくても、僕はずっと君と一緒だ。今度は夢で、たくさん逢おう」
意識して唇を持ち上げた。
「……忘れないで」
忘れないよ。あなたが最初で最後だもの。畳む
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【300字SS】水底まで貫く光
毎月300字小説企画 のお題に挑戦しました。お題は「折る」です。
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私が折り紙で作るものには、なぜか命が宿る。
いつからこんな力に目覚めたのか、私も周りもわからない。
——おお、怖い怖い。その得体の知れぬ力を二度と見せるでないぞ。
——その力、ぜひ我らの元で活かしませんか? 気味悪がられるより役に立つとわかれば、あなたも本望でしょう。
向けられる感情に疲弊して、私は人目から逃げた。
(普通の人で、いたかった)
無心で折った鶴が羽ばたき、頭上を旋回してから飛び立っていく。
……普通が無理なら、翼が欲しい。空を飛びたい。
「あの、今の鶴! あなたが折ったものですよね?」
「前に似た鶴を拾ったおかげで救われたから、どうしてもお礼を言いたかったんです」
眩しい。温かい。
これも、人の感情なの?畳む