Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

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【300字SS】これは不敬な感情だから

#BL小説

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「酔う」です。
桜の木の精と恋人を亡くした社会人のお話。
『現実を忘れられるなら、今は』の話が元ネタです。

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「桜、結構散ってるけど、まだきれいだね」
 桜を見上げる彼の瞳は、柔らかい光を放っている。まるで私自身が見つめられているようで、頬が熱い。
「今年も立派に咲きましたから。貴方のおかげです」
「褒めすぎ。俺はなにもしてないよ」
 彼の頬もほのかに色づいていて、さらに温度が上がった気がした。
 ふと、双眸が細められた。無意識か、空に手を伸ばして散る花びらを掴むような動きを繰り返す。
 ——そういえば、大切だったあの方とそんな遊びもしていましたね。
 無駄な熱が一気に抜けた。人間風に表現するなら「酔いが覚めた」だろうか。
「ごめん、俺、なにやってんだろ」
 我に返った彼は不器用な笑みを向ける。
 私は、首を振るしかできなかった。畳む

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【300字SS】つかの間、染まった先に

#CPなし

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「白」です。
このあと主人公の幻想が無残に打ち砕かれるような出来事が起きるかな、なんて考えながら書いてました(鬼畜

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 伸ばした手は、虚しく空を掠めた。
 たぶん、無意識に回避したのだ。
「どうしました?」
 立ち止まった彼女はこの手を掴もうとしたけれど、直前で引っ込める。
「すみません、なんでもないんです」
「でも」
「さ、行きましょう」
 彼女は綺麗だ。不純物などない世界で生きてきた人だ。だからこそこんな人間にも優しくしてくれる。
 ゆえに実感する。
 安易に触れてはいけないと。ほんの少しでも穢れに触れさせてはならないと。
「お礼を、言わせてください。私が目的を果たせるのは、貴方のおかげです」
「……もったいない、お言葉で」
 短い間でも彼女の隣を歩けたのは一生の宝物に違いない。

 ——もうすぐ、現実がやってくる。夢が終わる。畳む

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【300字SS】装いはずっと新たに

#CPなし

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「装う」です。

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「本当のあなたはどこ?」
 そんな言葉が出てくるということは、ここにいるのが偽りだと見抜いている証。
 でも、知ったら君は離れていくに決まってる。
「なら、君だって本当の君がいるんだろう?」
 予想に反して、君はきっぱり首を振る。
 羨ましいよ。君はきっと、死ぬほど惨めな気持ちを味わったことがないんだね。
 ——二度とあんな思いをしたくないと、自然と纏えるまでに作り上げたこの人格を剥ぎ取るつもりはない。
 ずっと身につけて生きていくんだ。僕なら絶対にやれる。
「僕だって、本当の僕だよ」
 君は、とても悲しそうな顔をした。畳む

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【300字SS】意識を奪われたターゲットは

#CPなし

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「奪う」です。

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「あなた、泥棒?」
 私としたことが、気配に全く気づかなかった。
 姿形と表情が釣り合っていない少女は、怖がらないし、通報する素振りも見せない。
 ただ、部屋の入口で私を見つめている。
「可愛いお嬢さん。だとしたら、どうします?」
 逃げる算段を組み立てながら大仰に問うと、ふらりと距離を詰めてきた。
「盗むなら、あたしを、盗んで」
 意図が読めない。
「……なぜ?」
「ここから盗むだけでいいの」
 無だった表情に、一気に色が加わる。
「誰も来ないうちに、はやく」

 私は人攫いに来たわけじゃない。子どもなんて稼ぎにもなりゃしない。
 ——救世主のように、必死に見上げてくるから?
 握ってくる震えた手を払えないし、揺れる目も逸らせないのだ。畳む

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【300字SS】希望の防波堤

#CPなし

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毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「つなぐ」です。

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「散々にやられたようだな」
 宿屋に併設の酒場までようやく辿り着くと、出入口近くの二人席で一人飲んでいた男に声をかけられた。
「一人、か。仲間を失ったか」
 物理的にも精神的にも、支柱だったものが消えた。つながりが、跡形もなくなった。
「……おっさん、何者?」
 震えそうな全身を誤魔化すためでも、不信感ゆえでもあった。
 男は無言で、グラスを傾けた。
 ため息をついて、足を進める。ヤケ酒は止めだ。
「まだ、使命を果たすつもりか」
 初めて、男の顔をまじまじと見つめた。
 記憶の隅に引っかかる、印象的な緑の双眸は薄く濁っている。
 まさか、この人は。
「歴代の勇者の悲願もある。諦めるわけにはいかない」
 返ってくるものは、何もなかった。畳む

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