星空と虹の橋の小説を掲載しています。
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No.60
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「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」さんのお題に挑戦しました。
年下×年上な組み合わせ。
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早く大人になりたかった。
大人になれば、どうあがいてもどうにもできない年齢差なんて気にならないようになると思っていたんだ。
「やっぱり年の差って結構でかいよなぁ」
「え、急にどうしたの?」
「……べっつにー。何でもない」
しまった、つい声に出してしまった。
誤魔化しにならない誤魔化しをしてしまったけれど、彼女は不思議そうに首を傾げるだけだ。セミロングのくせ毛がふわりと揺れる様子は相変わらず可愛い。
この春からやっと社会人になり、念願だった同棲生活もスタートできた。それでも「年下」という意識はしつこくこびりついている。
好きになった時、彼女は大学生だった。
告白して付き合えるようになった時、彼女は卒業を間近に控えていた。
そして今――すでに彼女は社会人人生を四年先に歩んでいる。
大人になれば、と子供だった自分はすべて解消すると思っていたのに、現実はひとつも変わっていない。
「……年上な彼女は、やっぱりいや?」
だんだん眉尻が下がっていったと思ったら、とんだ勘違いをさせていたらしい。慌ててテーブルにカップを置いて、向かいに座る彼女の手を握る。
「違うよ! ……オレはやっぱ、大人になっても年下属性だなぁ」
多分彼女は気にしていない。対等に見てくれている。悩んでも無駄に過ぎない。……わかっている、わかっているのに。
まっすぐな視線を向けていた彼女の口元がふっと緩む。ああ、見破られた。
「私、ずいぶん頼りにしちゃってるけどなぁ」
よくそう言ってくれるけれど、慰めじゃないのだろうか……。
「ほら、結構情けない姿とか見せちゃってるし。私の方が年上なのに、年下みたいって思う時結構あるんだよ」
確かに、よく泣いたり怒ったり、付き合う前までは見たことのない表情をよく目にする。最初は驚きっぱなしだったのを今さら思い出した。
「でも、そう思われてるってことは……年上の威厳ってものを、無意識に保ちたいって思っちゃってるのかもね」
いたずらっぽい笑みに変えて、どこか楽しそうに彼女は続けた。
「……それでも、本当に頼りにしてるんだよ。毎日がすごく幸せなの。もう、あなたなしじゃ生きていけないくらい」
今度は頬を染めて、こちらの手を握り返しながらわずかに視線を逸らし、告げてきた。
――やっぱり、敵わない。
多分年上でなかったとしても、勝てる要素はゼロに等しいかも知れない。
――そうだ。年齢差を嘆いている暇があったら、これからも彼女に頼られる男でいられるよう頑張らねば。
彼女の背後に立ち、そっと腕を回す。熱さの残る頬に唇と吐息を寄せた。
「オレも、お前がいないと無理だよ。もう、絶対離せないから」
追いかけ続けた背中に、今やっと追いつけた気がした。
#ワンライ