Short Short Collections
主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。
2021年1月2日 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
どこまでフィクションな恋物語か
#BL小説一次創作BL版深夜の真剣60分一本勝負 のお題に挑戦しました。
・文化祭
のお題を使用しました。無理やり感ハンパないです💦
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「今日は抱きしめるだけ。次来た時、まだ僕のことが好きだったらキスしてあげる」
もちろん、好きなままだった。抱きしめられた時のあの高揚感と幸福感は、初めてに等しい強さだった。
「好きでいてくれてありがとう。じゃあ、約束通り……キスしてあげる」
人生で初めてのキスを、同性から受ける。
いや、性別は関係なかった。相手がこの人だったから、唇に最初触れられた時も、二度目三度目と繰り返されても、嫌な気持ちにならないどころか、もっと欲しくなった。
この人への想いは嘘じゃない。本物だとようやく確信できた。
「おれ、あなたのこと本当に好きです。何があっても絶対ぶれません。だからもう、確認はいりません。……付き合ってください」
自分を気遣って、段階を踏んでくれていたのはわかっていた。
今こそまっすぐに応えたい。偽りない本心を届けたい。
「……また、会いに来るよ」
返事はもらえなかった。それどころか、約束もなかった。
確定された未来が目の前に降りてくるはずだったのに、一瞬で手が届かなくなってしまったようだった。
嫌な予感がした。「会いに来る」と言われはしたが、それも果たされない気がしてならなかった。
——今度は、自分から会いに行かなきゃダメなんだ。怖いけれど、怖じ気づいていたらダメなんだ。
「まさか、君から来てくれるなんて思わなかったな」
唯一の手がかりだったバイト先に何日も張り込んで、ようやく会えた想い人。本当に来るとは思っていなかったようで、純粋な驚きだけが存在していた。
その場で言葉を連ねようとした自分の手を取ると、建物の裏に向かう。改めて対峙するも、なかなか彼は目線を合わせてくれない。
「……おれ、本気です。抱きしめてもらった時も、キスしてもらった時も、すごく嬉しかった。気持ち悪いとか全然なかった。……あなたは、違うんですか?」
最後の問いかけはしたくなかった。その通りだったら立ち直れない。どうして期待させたんだと、恨みさえしてしまいそうだ。
「本当に好きになってくれるなんて、思ってなかったんだ」
ようやく発された言葉は、意味のわからない内容だった。
「改めて告白された時に、僕も同じくらい好きなのかなって思ってしまったんだ。……僕からあんなことを提案したのに、最低だよね」
最初に告白した後、段階を踏もうと言ったのは彼からだった。
『僕も好きだけど、本当に同じ気持ちなのかわからないから。確かめる意味でも、少しずつ恋人らしいことをしていこう?』
結果は確かめるまでもなかった。だからこそ二人のこれからに心躍らせていたのに、現実は非情になりかけている。
「それで、どうなんですか。おれのこと、本当に……好きなんですか? キスとかしたいって思うくらい、好きでいてくれてるんですか?」
声が震える。そうだと肯定してくれ。お願いだから、おれを否定しないで。
掴まれたままだった腕をぐいと引っ張られた。否応なしに目の前の胸元に飛び込む形になる。体勢を整える間もなく、頬を包まれた。
呼吸のまともにできないキスをされている。口内を動き回る柔らかいものは……彼の、舌? それに、たまに聞こえる変な声はもしかして、自分のもの?
無理やりされているのに、呼吸もまともにできなくて苦しいのに、背筋がぞくぞくしてたまらない。気持ちいい。
「……こういうこと、したくてたまらないって思ってたよ。だから、本当は今日会いに行こうって思ってた」
こちらを見つめる瞳が熱い。気を抜いたらあっという間に染められてしまいそうなほど、鋭い光で照らしている。
「もう絶対離してあげられないよ。それでもいいの?」
返事の代わりに、初めて自分からキスをした。
「……っていう台本はどうよ? さすがに文化祭の舞台向きじゃないかなぁ」
「当たり前だろ! しかもこのネタ元ってお前とバイト先の先輩とのやつじゃねえか!」
「もちろんある程度加筆修正してるよ? 例えばべろちゅーなんて実際されてないしね。キスはされたけど」
「……それ以前に平然とネタにできるお前がこええよ……」
「でも恋愛ものとしてはなかなかいいんじゃないかなーと思うんだけどなー。書き直すのも面倒だし、いっそのことおれを女子にしちゃうか!」
「先輩見に来たらどう思うのかね。知らんけど」畳む
結局は、自分かわいさ
#CPなし深夜の真剣物書き120分一本勝負 のお題に挑戦しました。
②中途半端
③清濁
のお題を使用しました。ちょっとこねくり回しすぎた感があります。。
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「あなたの望みはなんだ?」
無駄に装飾の凝った木製の椅子に座っていると気づいたのは、急に視界が明るくなったからだった。軽く辺りを見回して、どうやら私にだけスポットライトが当たっているせいらしい。
それにしてもこの椅子、中世のヨーロッパにでも出てきそうだ。大体ここはどこなのか。
「あなたの望みはなんだ?」
左右で別々の人に話しかけられているような心地悪い声で同じ問いを繰り返された。同時に、前方にぼんやりと何かが浮かび上がる。
「……そっか、これ、夢か」
そう確信せざるを得なかった。今まで生きてきて、身体の半分が長い金髪の天使、もう半分がコウモリのような黒い羽根を生やした悪魔、という生き物に出会ったことがない。そもそもいるわけがない。
「望み? 働かなくてすむくらいのお金が欲しいわね」
中途半端で気持ち悪い生き物に、鉄板の一つに含まれる回答を返す。夢なら敢えて乗ってみるのも悪くない。
「あなたは優しいのですね」
天使の口端がゆっくり持ち上がった。声も目を閉じたくなるような清らかさだったが、片方からしか聞こえない。
「本音を言わないのは、相手を気遣ってのことでしょう?」
言葉の意味はわからない。『相手』って、誰のこと?
「しらばっくれるな」
今度は心臓が震える声だった。もう片方から容赦なく注がれた。
「あの女を憎らしく思っているくせに」
頭の片隅で、一瞬鋭い光が灯った。見たくないのに主張してくるなんて、やめてほしい。というか、どうしてこの生き物がそんなことを知っているの。
(……だから、これは夢なんだって)
もはや自身に言い聞かせるしかない。
「違いますよね。例えば今だって、彼女と距離を取っているのは余計な心配をかけさせないためでしょう? 幸せなままでいてほしいんですよね?」
「……やめて」
なんて夢なんだ。リアリティがありすぎて息が苦しい。己を抱き込んでもさらに症状が重くなるばかり。
「笑わせる。あの女の結婚式に参加した時、素直に祝えないでいたくせに」
「やめて!」
その日の感情が堰を切ったようにこぼれ出す。ずっと笑えていたかわからなかった私。ちゃんと彼女の顔を、隣の彼を見られなかった私。もらったブーケを帰宅してすぐに捨てた私。
彼女が悪いわけじゃない。意中の彼とうまくいきたいと相談してはいたけれど、それが誰かを明確に告げていたわけではなかった。
そもそも、その彼と彼女は知り合いですらなかった。どう運命が転んだのか、偶然二人が出会い、気づけば結ばれていたというだけ。
「そう思い込んでいるだけだろう」
悪魔は容赦なく傷を抉ってくる。たまらなくなって逃げだそうとしたが、立ち上がれない。椅子に触れている箇所すべてが縫い付けられてしまったかのようだ。
「思い込みだなんて。二人にはこれからも幸せでいてほしいんですよね? だってとっても好きな二人なんですから」
好きだ。好きなことに変わりはない。
「いいや、思い込みだ。なぜなら、お前にはまだ未練がある」
ない、と反論できなかった。
だって、本当に好きだった。誰からも頼りにされてしっかりしているかと思えば、少し抜けたところもある。見た目は落ち着いているのにどこか目を引く雰囲気を持っている。今まで出会ったことのないタイプだった。
二人きりで飲みに行くまで仲を深めてきた。やっとここまで来たと嬉しくなった矢先に、彼女から彼を紹介された。
その時の心境など言い表せるわけもない。どんな話をしたかも思い出せないくらいの衝撃だけが胸に残っていた。
「それでも友達に本当のことを言わなかったのは、友達が大切だったからですよね?」
本音は、違う。
お似合いすぎて、言えなかった。あるいは「友達の幸せを願ういいおともだち」でいたかった。表面上でも、二人の悪者にはなりたくなかった。
結局はこのざまだ。正直に行動できなかったことを悔いて、想いをこじらせたままでいる。彼を奪われたわけでもないのに彼女に当たり散らしてしまいたくなっている。
二人が出会う前に告白だけでもしていれば、こんな現実にならずにすんだかもしれない。
私と彼が結ばれる可能性だって少しはあったかもしれない。
押し込めた後悔が怒濤の勢いでやってくる。
いやだ、こんなの空しくなるだけなのに。どんなに頑張っても時間は戻せないのに。
「そうやって、どっちつかずの態度でいたツケが回ってきたってだけだ。自業自得じゃないか」
もはや反論する気力もない。
「だから、もう本音をぶちまけちまえよ。その方が楽になるだろ?」
まさに、悪魔のささやきだ。
「そうですね。優しいあなたが壊れてしまう前に、大本の原因を取り去ってしまいましょう」
頭が変にふわふわしてきた。ゆっくり顔を持ち上げると、霞のかかった視界にあの生き物が映っている。最初と変わらないはずなのに、どこか違って見える。
「あなたの望みはなんだ?」
私は。
その先を告げたつもりが、アラームの音に上乗せされた。
恐怖と安堵両方に、心臓が押しつぶされそうだった。
私は、どっちにもなれない。畳む
きっと死刑宣告
#BL小説一次創作BL版深夜の真剣120分一本勝負 のお題に挑戦しました。
『やめてって言ったでしょ』『コンプレックス』です。
120分+若干オーバーで完成です。
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なんだよこれ。どういうことだよ。
口にしていたつもりが、出なかった。喉から先が詰まって、苦しささえ覚えた。
「どういう、ことなの……?」
目の前で彼女が青ざめている。その言葉の意味は多分違う。
「あれ、意味わからなかった?」
彼女も自分も同じ表情をしているはずだ。
彼だけが、間違い探しのように明朗な笑みを浮かべている。
「君が浮気してるんじゃないかって疑ってる相手は、俺だったってこと」
「っうそ……うそ……! だってあなた、女がいるって……!」
そう。嘘だ。こいつのことは大学を卒業してからも大切な親友のままだけど、そんな付き合いは一度もしていない。さらに言えば他の女だっていない。ずっと彼女だけを想ってきた。初めてできた恋人だなんだ。
今夜も、彼女との幸せな時間を過ごせるはずだった。週末の予定をどうするか決めて、気持ちはそこに向かっていたはずだった。
どうしていきなりこんな展開になった? 高い場所から突き落とされた?
「それが嘘。ついでに君に見せた写真も実は合成なんだよねぇ」
スマホを取り出した親友は、実に愉快そうだった。真っ赤になる彼女が滑稽に映ってしまうくらいの余裕を見せている。
「……いい加減にしろよ」
苦しさが、胸元から湧き上がる熱で溶けた。
反論もろくにできないままでいられない。彼女の誤解を解けるのは自分しかいない。
「さっきからでたらめばっか言うなよ! ふざけんな!」
胸ぐらを掴み上げても、彼の表情は変わらない。堪えようのない恐怖も生まれて、もはや彼がどんな存在なのかわからない。
「でたらめなんかじゃないよ? 俺は本当におまえを好きだし」
「好きだったらこんな馬鹿げたことしねえだろ!」
掴み上げたままの拳が細かく震える。今まであんなに仲がよかったのに。誰よりも理解者でいてくれてたのに!
「するに決まってるだろ? 俺とお前は好き合ってるんだから」
「やめろって言ってんだよその嘘を!」
「嘘じゃないって言ってるのになぁ」
再び、喉の奥が詰まった。唇が塞がれている。いやというほど覚えのある感触だ。それを今、目の前の男から——
胸ぐらを解放して、思いきり彼を突き飛ばす。認識したくないのに、確かにあった感触が容赦なく現実と突きつけてくる。
同時に、後ろの方で耳慣れた足音が遠ざかっていくのが聞こえた。慌てて振り返っても、どこかで曲がってしまったのか姿はない。なくなってしまった。
「やっと彼女もわかってくれたみたいだねぇ。いやあ、長かったよ。……本当に」
身体中に、雑多に物を詰め込まれたようだった。吐き出す手段も、浮かばない。
視界が歪む。堪えたいのに地面さえも映らなくなって、頬を、口元を押さえる指を、涙が何度もなぞっていく。本当にこれは現実なのか?
顎をすくい上げられた。ある程度戻ってきた視界のすぐ先で、親友のはずの男がぞっとするほど綺麗に笑っていた。
「大学卒業したらこれだから、本当にまいったよ。やっぱり近くで見張ってないと駄目だね。お前はとっても人気者だから」
自分の知らないところで、そもそも問題のわからない答え合わせをされている気分だった。考えないといけないのに、できない。
「あんな女、お前にふさわしいわけないだろ? 一番は俺。お前のこと絶対幸せにしてやれるって、あんなに一緒にいたのにわからなかった?」
宝物に触れるように、両方の頬を撫でられる。感情が流れ込んでくることを防げない。
「俺はお前の全部が好きだよ。誰にでも分け隔てなく優しいところも、相手をつい優先させちゃうところも、でもいざという時は前に出て守ってくれるところも、もちろん身体も全部……好き」
親指で、唇の表面をするりと撫ぜると、男の口元がさらに緩んだ。
「そういえばこのぷっくり気味の唇がコンプレックスだって言ってたっけ。俺からしたら全然そんなことないっていうか……いつも貪りたくてたまらなかったんだよ?」
そのまま迫ってくる瞳を、そのまま受け止めてしまった。ゆるく食まれて、舌であますところなく撫でられて、ついには口内に侵入されても、抵抗できなかった。
気力が、奪われていた。
「これで、お前はもう俺のものだね」
彼は、今まで見た中で最高にまぶしい笑顔を顔面に飾っていた。
死ぬまで、脳裏にこびりついて離れないような、笑顔だった。畳む
感情の共有
#男女もの続きを表示します
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まだ離れたくないな、と思ってしまった。
相手からすればただのわがままだ。しかも二人きりで出掛けたのはこれが初めて。それなのに求めすぎじゃないだろうか。
「どうかしたの?」
口数が減っていたらしい。慌てて作り笑いを返して、本当に今日は楽しかったと改めて感想を伝えた。
お世辞抜きに、ただ楽しかった。この人と一緒にいるととても心地いいし、多分「ピースがかちっと嵌まる」感覚はこのことを言うんだろうとさえ思えたくらいだ。
視界の先に、駅の出入口が見えてきた。あそこに辿り着いたら今日は解散しなくてはならない。
――果たして、この人も同じ想いでいてくれているんだろうか?
そうだ、今日があまりにも楽しすぎてその可能性を忘れていた。下半身から力が抜けていくような感覚に襲われて、一気に未来が怖くなった。
足を止めてしまった自分を、想い人は怪訝そうに振り返った。
絶対に、この出会いを無に帰したくなかった。この人とこの先も付き合っていきたい。
「……っあ、の」
声は驚くほどに震えていた。目の前の表情が明らかな心配顔に変わる。違う、具合が悪いんじゃない。反射的に首を振ってから、勇気を出して左腕の裾を掴んだ。
「もう少しだけ、付き合ってくれませんか」
わずかに開かれた目を必死に見つめ続ける。拒否されたら、という恐怖で押しつぶされそうな心を意地で食い止める。たとえどんな結果でも、この選択をしなかった後悔だけはしたくなかった。
自分にとっては五分くらい経ったような感覚が身体を走った時、右手に少し湿ったようなぬくもりが触れた。
「ありがとう。……実は俺も、同じことを考えていたんです」
——ああ。少なくとも今は、同じ気持ちを共有しているんだ。
望む未来への足がかりになれた。それだけで今はたまらなく幸せだ。
触れたままの手に相手の指が絡まる。優しく込められた力に引かれるかたちで、解散予定だった場所とは反対の方向へと歩き始めた。畳む
2021年1月[50件](2ページ目)
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わがまま猫な彼と僕
#BL小説創作BLワンライ・ワンドロ ! のお題に挑戦しました。
お題は「花より団子」です。タイトルは適当だし、花より団子……? な出来です←
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二年前だったと思う。SNSでもかなり話題になったドラマだった。
僕はもちろん、バイト先の先輩後輩も友達も大体見ていたし、感想や考察を話し合うのが当たり前になっていた。
だが、今隣にいる僕の恋人は当時全く興味を示さなかった。
と思ったら、今さら「気になるから今度一緒に観たい。レンタルしてきて」とおねだりまでしてきた。本当に読めないヤツだと思う。
なのに……この状況はなんだ?
「あのさ……観てる? ドラマ」
第五話まで来たところで、僕はたまらず声をかけた。これからどんどん面白くなるというのに、この男の行動が信じられない。
「んー? 観てるよ、もちろん」
「って言いながら画面見てないじゃん!」
「へー、わかるの?」
「さっきからちょっかいかけられてるからね」
僕は、テレビは床に座って好きな体勢で観る派だ。彼はソファ派だから何となく縦に連なるような形になったのだけれど、そのせいで頭を撫でられたり耳たぶを触られたりと地味なスキンシップを受け続けている。
彼がイタズラ好きというのは今に始まったことではないけど、言い出しっぺがこの態度だとさすがに文句も言いたくなる。
「そっちが観たい観たいってダダこねるから借りてきたんだよ? なのになんなの?」
「なんなのって、そりゃ決まってるだろ? お前が可愛すぎるから」
思わず背後を振り向いた拍子に唇をさっと盗まれる。まるで手練れの怪盗だ。
でも正直、ときめきじみたものは全然ない。
「誤魔化しのつもり? 普段そんなこと言わないくせに」
「心外だな。口に出してないだけでいつもそう思ってるぞ?」
怪しい……。天の邪鬼と知りすぎてる僕からすればつい裏を読んでしまう。極端な話、スキンシップだけが頼りの綱だ。
というか早くドラマに戻りたいんだけどな……。展開を知ってても、本当に面白いと関係なく見れてしまうものらしい。
「俺は照れ屋だからそういうのは簡単に口にしないの。だからそう疑うなって」
隣に移動してきた恋人は頬を人差し指で突いてきた。完全に馬鹿にしている。
「というか、今んとこそんなに刺さってないんだよなードラマ。表情コロコロ変わるお前見てる方がよっぽど楽しいわ」
何なんだ全く。本当は、ドラマ見終わったらいろんな話だってしたかったのに。楽しみにしていたレンタル中の僕が急激に色褪せてきて、悔しさと苛立ちのあまりリモコンの停止ボタンを押しかけて……止まる。
「……僕、見てたの? ちょっかい出してるだけじゃなくて?」
「あれ、気づかなかった?」
頭をなでなでしてくるにやにや顔を呆然と見つめる。
「オチまで知ってんのに笑ったり泣きそうになったりしてさぁ。全然飽きないのなんのって。俺的にはそれが収穫だったなー」
逃げたい。あるいは布団にくるまりたい。無防備な状態を観察されてたなんて恥ずかしい以外ない!
思わず両手で顔を覆うも、遠慮なしに外された。そのまま押し倒されて、床に固定されてしまう。
「本当に天然だよな、お前」
「天然って、意味わかんない……」
それ以上の反論は、互いの口の中に消えた。
ドラマは、いつの間にか第六話に進んでいた。クライマックスに向けてますます盛り上がる大事な回だ。
けれど、もう頭に入る余裕はなかった。畳む