Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

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お題SS:雨上がり

#男女もの

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「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」さんのお題に挑戦しました。
イメージソングを、サザンの『雨上がりにもう一度キスをして』にしたつもりが、重い話にw

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 雨が降るたび、誰よりも愛していたひとのことを思い出しながら街中を歩く。

『その傘、いつも使ってくれてるよね。そんなに気に入ったの?』
『当たり前でしょ? あなたがくれたものだもの。それに、水玉模様一番好きだしね』
『そっか。俺も贈ったかいがあるってもんだ』

 薄い水色で彩られた水玉模様の傘は、三年以上経っても壊れる様子はない。私を、懸命に支えてくれているかのようだ。
 生まれ育ったこの街が、私は好きだった。自然に囲まれてのんびり歩く場所も、テーブルを挟んでお喋りを楽しむ場所も、おいしいものを堪能できる場所も、なにもかもがここには揃っている。
 あのひとも、同じ気持ちでいてくれた。

 春には、桜のあふれる公園で花見をやったね。予想以上に人が多すぎて、次の年は早めに場所を確保しに行ったよね。
 夏は、カフェにある限定のかき氷を食べに行ったっけ。サイズが大きいことを知っていて二人でひとつにしたのに、結局食べきれなかったんだよね。でもすっごくおいしかったよね。
 秋には紅葉に染まった並木道をひたすら歩いたね。その頃、カメラにハマったって言って、私のこともきれいに撮ってくれたね。
 冬は、お互い寒いのが苦手だから室内でばかり遊んでたよね。寒いかもしれないけどどうしてもスケートやってみたいってチャレンジしたら、二人して意外と熱中してたの、覚えてる。

 ……そう、覚えてるよ。私は、あなたとの思い出すべてを、覚えてる。

 身体は、自然と公園内で一番見晴らしのいい場所へとたどり着いていた。
 街中を一望できる、夜も人気のあるスポットだ。今日は雨のせいか、人影はない。
 雨の勢いはだいぶ弱まっていた。

 何度も足を運んだ。あのひととも、ひとりのときも。
 一番思い出の詰まっている場所だとわかっているから、引き出しを開けて中身をすべてばらまいて、いつまでも包まれていたいと願ってしまう。単なる逃避に過ぎないとわかっていながら、真正面から向き合うだけの強さがない。

 あなたからのキスが、もう一度ほしいよ。
 好きだって耳元で囁かれながら、少し高めの体温に優しく包まれたいよ。
 どうして、逢いに来てくれないの。「君が呼んだら、いつでも駆けつけてくるよ」って言葉は、嘘だったの?

 手すりを掴んだまま、固く目を閉じる。脳裏に浮かぶあなたは、目尻を少し下げた笑顔を私に向けてくれている。私を安心させてくれるとき、愛おしそうに名前を呼ぶとき、甘えてくるとき……同い年なのに、年上にも年下にも見える、笑顔だ。
 この場所と同じくらい、大好きだった。

 ――俺はずっと、君のことを想ってるから。

 そんな言葉が聞こえた気がして、思わず目を開けた。思わず苦笑が漏れてしまう。
 空耳だなんて、私も相当ね……。
 弱い私を見かねて、そばに来てくれたなら嬉しいけれど。

「わ、虹かかってる!」

 背中からそんな声が聞こえてきて、のろのろと顔をあげる。隣にやってきたカップルは嬉しそうに、スマホのカメラを起動していた。

 雨雲の隙間を狙ったかのように、薄い光の帯が差し込んでいた。
 七色というより三色くらいにしか見えないけれど、まぎれもない虹が、視界の先にあった。

『雨上がりにね、虹見えることがあるんだって。いつか見てみたいね』
『漫画とかだったら、いつか俺が見せてやるよ! って言うところかな?』
『ふふ、本当にそれができたら尊敬しちゃうなぁ』

 今度こそ、あふれる涙を止められなかった。畳む

ワンライ 編集

No.25

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