Short Short Collections

主にTwitterのワンライ企画やお題で書いたショートショートをまとめています。
男女もの・BLもの・その他いろいろごちゃ混ぜです。

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苦いイチゴはもういらない

#CPなし

くるっぷの深夜の真剣創作60分一本勝負 さんのお題に挑戦しました。
使用お題:「苺」「運命」です。

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「今日こそこのイチゴでケーキを作ってくれ!」
「だから無理」
 ばたりと玄関のドアを閉めると、いつもの捨て台詞を残して彼は帰って行った。
 諦めの悪いその根性だけは評価する。するけれど、どうして私がわざわざケーキを作ってやらないといけないの。
 ため息をついて、ドアに寄りかかる。
 ケーキ作りはもう、二度としない。あの日そう決めたのに、どういう運命の悪戯だろう。
 昔、賞を取ったときの記事かなにかを見たらしいあの男は、たまたま同じマンションに引っ越してきた私の顔を見て開口一番「ようやく君の作るケーキが食べられる!」とキラキラの笑顔で告白してきた。
 理由を聞いたら、デコレーションされたイチゴケーキの写真に「一目惚れ」したらしい。写真でこれなら、絶対味も素晴らしいと思ったとかなんとか。
『今日まで全然ケーキを見つけられなかったけど、まさかこんな運命が待っているとはね!』
 こっちは最悪だ。せっかく辞めたのに、ああして求められて、たまったものじゃない。
 じわりと胸の奥から黒い染みが広がりそうになって、慌てて首を振る。あれはもう過去のことだ。あのとき、何度も何度も己に言い聞かせたじゃないか。


「やあ、今日のイチゴはとっておきだぞ。前から食べてみたかった高級イチゴなんだ。君も作ってみたいって思うんじゃないかい?」
 今日も彼は諦めず、眩しい笑顔で玄関先に立っている。
 余計なトラブルにしたくなくてきつい言葉を使うのは避けていたけれど……もう、いい加減我慢するのはやめよう。
「だから、作らないって言ってるでしょう。何度断ればわかってくれるの。あなた、相当鈍いみたいね」
 精一杯睨み付ける。初めて笑顔以外の表情を向けられて、なぜか視線を外してしまった。
「私は作りたくないの。いくら持ってこられても無理。こんなこと、今日で最後にして!」
 さすがにわかってくれるだろう。一息ついてから、目線を持ち上げる。
「わかった。今は、作りたくないんだね」
 また、彼は笑っていた。本気で理解できなくて頭が混乱する。
「でも、僕は本心じゃないと思ってるんだ。なんというか……君が抱えてる何かをなくせれば、解決するんじゃないかって」
 鼓動が一瞬うるさく胸を叩いた。事情は一切話していないのに、なぜ。
「僕が助けになるよ」
「簡単に言わないで!」
 反射的に叫んでいた。赤の他人がどうにかできるならとっくに解決している。
「一人で抱えているとどんどん辛くなるから。味方なんて誰もいない、自分のことは自分でしか面倒見れない、そうやって閉じこもっていってしまうんだ」
 まるで彼自身に言い聞かせているように聞こえる。雰囲気もまるで変わったように感じたが、すぐにその違和感は消えた。
「だから、ね? ちょっとだけでも、試しになにも知らない僕に寄りかかってみるっていうのはどう?」
「……いいから、帰って」
 力なく彼の身体を押して、ドアを閉める。
 あんなに固かった決意が、ほんの少しでも揺らいでいるのを感じる。
 情けない。一人で消化しようと決めたのに、絆されるつもり?
 ……あんな思い、もうしたくないでしょう?
 いつもはうっとうしいだけのあの笑顔が、こびりついて離れなかった。畳む

ワンライ 編集

偶然か運命だったのか

#CPなし

深夜の真剣物書き120分一本勝負  のお題に挑戦しました。
お題は「①只者ではない」を使いました。

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「あたし、実は女優やってるのよね〜」
 目深にかぶった帽子、首元で雑にくくられた髪型、体型にまったく合っていないぶかぶかトレーナーにジーンズ。
 漫画に出てきそうな黒い太フレームのレンズなし眼鏡を外して笑いかけてきた瞬間、変な声が出た。
 本物だ。芸能に疎い自分でも知っているくらい、知名度は抜群に高い。
 眼鏡が制御装置にでもなっているんじゃないか? はんぱないオーラをびしばし感じる。メディア越しより何倍も可愛い。いい加減な服装も不思議と似合っているようにすら見えてしまう。
 まさか、困っているところを助けただけでこんな奇跡が起ころうとは。なけなしの勇気をたまには振り絞ってみるものだ。
「その反応見る限りだと、あたしのこと知ってくれてるんだね。ありがとう! 嬉しい」
「い、いえそんな、恐縮っす」
「さっきの男気どこいったの〜? そんな緊張しないで、ね?」
「い、いや、芸能人と会ったの初めてだし、ほんと可愛いし、むりっすよ」
 無邪気な笑顔が心臓に悪い。自分が今どんなみっともない表情をしているのか、想像もしたくない。
「そう? これでも昔はめちゃめちゃ地味だったんだけどね。いじめられたりもしたし」
 本気でびっくりしてしまった。彼女の表情を見る限り嘘とは思えないし、一体どんなやつがそんなひどいことをしていたんだろう。
 ふと、俯いた彼女がなにかを呟いたような気がした。あくまで気がしただけで、内容はもちろん聞き取れなかった。
「あ、そうだ。ねえ、これもなにかの縁だし……ひとつ、お願いしてもいいかな?」
 小さい顔の前で両手を合わせて、覗き込むように見つめてくる。あざといのにやっぱりかわいい。
「さっきのヤツが諦めるまで、あたしの彼氏になってくれない?」
 すんでで口元を押さえた。な、なにを言い出すのかこのひとは。出会ったばかりの赤の他人になんてことを言い出すんだ!
「君は信用できる人だってあたしのカンが言ってるのよ。あの男気にもほんと感動したし」
 このまま黙っていたら勢いのまま決定されてしまう。確かに芸能人とお近づきになれる夢のような展開ではあるけれども、だ。
「ま、待ってくださいって! ほら、今ってSNSとかで簡単に炎上する時代でしょ? 万が一隠し撮りでもされたら俺、たまったもんじゃないっすよ」
 困っているのに申し訳ないが、リスクはなるべく避けたい。というか警察なりに相談すべきでは……。
「今、警察に行けばって思ったでしょ。なるべく大事にはしたくないのよ」
 ストーカーに命を狙われた、なんて事件もちょいちょい聞くのに、危機感がなさすぎる。
「恋人がいるってわかったら諦めると思うの。ムリなら大人しく警察に行くよ。だから、ね? お願い」
 さらに距離を詰められた。
 卑怯、あざとすぎる、絶対頑固な性格してる。
 昔から押されると押しきられてしまう性格だった。大抵よろしくない方に作用するが、今回もやっぱりそうなりかけている。
「…………俺、で、よければ」
 たっぷり五秒くらいはかけて、承諾してしまった。芸能人じゃないのに芸能人の気持ちをほんの少し堪能できた気がした。すでに胃が痛い。
「ありがとう~! 本当に嬉しい!」
 抱きつかれて少し嬉しくなったものの、ネガティブな未来の数々には太刀打ちできそうもない。
「あの、俺、一般人ですからね。よろしく頼みますよ」
 だからつい弱々しく呟いてしまったのだが、彼女は明るく笑い飛ばした。
「大丈夫! 君には迷惑かからないようにするから。……なるべく、ね」
 なるべく、と聞こえたような気がしたが、これも気のせいだろう。畳む

ワンライ 編集

【お題SS】心臓、高温、雨宿り

#CPなし

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お題bot*  のお題に挑戦しました。お題は「心臓、高温、雨宿り」です。

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 帰路に急ぐ足がふいに止まる。
 いつも私をからかう彼が、おそらく野良だろう猫を傘の下に入れてあげていた。
 すぐ逃げようと思ったのに、まだ足は止まったまま。
 そんな顔、私に一度も見せたことないじゃない。
 足に頭をすり寄せちゃって、猫ちゃん騙されてるよ。そいつはうんざりするくらい私をおもちゃみたいに扱うんだから。
「お前人慣れしてんなぁ。エサ持ってねーぞ俺」
 動物相手だから声も表情も柔らかいんだ。漫画とかでよく見る悪党そのものじゃない。
「お前みたいに素直になれたら、あそこまで嫌われないんだろうな……」

 心臓がどくどくと高鳴り出す。みっともなく叫ばなかった自分を褒めてあげたい。
 私のことを言っているのだとすぐにわかった。
 人が見てないと思って、本気で後悔しているみたいな態度を取って、卑怯以外になにがある?
 今の光景を見なかったことにして、ゆっくり踵を返す。
 野良猫に情けない姿を晒す暇があるなら、さっさと謝ってきてもらいたい。
 行き場のない怒りを、私はひとり耐えるしかできなかった。畳む

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【300字SS】お題「謎」

#CPなし

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300字SS  のお題に挑戦しました。お題は「謎」です。

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「謎は謎のまま終わるっていうのもいいものよ。いろいろ想像できて楽しいし?」
理解できない。だって気持ち悪いもの。たとえバッドエンドでも謎ひとつ残らず完結したほうがすっきりできるでしょ?
……そう、思っていたんだけど。

「最初はそんなつもりじゃなかったんだ! 君を傷つけるつもりは……」
「ちょっと魔が差したというか……今は本当に反省してる、もう絶対君を裏切らない!」

ドラマみたいな台詞を受け続けて、ああ、今はあの気持ちがわかるかもなんて、頭のどこかで感じていた。
衝撃を通り越して、もはや奇妙な楽しささえ生まれつつある。

ゆっくりと、下に向いていた視線を持ち上げる。

さて、私はどうオチをつけたと思う?畳む

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【300字SS】さまざまな想いをのせて

#CPなし

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300字SS  のお題に挑戦しました。お題は「石」です。

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「不完全なのがいいのよ」
一粒の天然石が彩られたブレスレットを弄りながら彼女はほのかに笑った。
「もちろん宝石なみにキレイなのもあるけどね。でも、わたしはひび割れてたり透明じゃなかったり、そういうのが愛おしいの」
「そういうもんかなぁ……私は宝石の方が好きだけど」
宝石は完璧だ。どの角度から見ても美しいし、隙がない。身につけていると自身の格も上がる気がする。
「わかるわよ。でも、その好きは憧れっていうのもあるんじゃない?」
こういう鋭いところ、本当侮れない。
「……じゃあ、あなたは?」
「……落ち着くのよ」
自分も完璧じゃないから? いや、彼女は完璧にみえる。
変わらない笑みからは、答えは読めなかった。畳む

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