星空と虹の橋の小説を掲載しています。

更新履歴

No.144

20240601214416-noveladmin.jpeg

(画像省略)毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「指」…

ショートショート・男女

#[300字SS]

ショートショート・男女

【300字SS】きっと、ぜんぶ

20240601214416-noveladmin.jpeg

毎月300字小説企画  のお題に挑戦しました。お題は「指」です。

-------

 手のひらを抜けて、肘のほうまで。
 陳腐な言い方だけど、まるで電流だった。
 触れられているのは数本の指先、ほんのわずかな箇所なのに。
 素直に表に出すのは悔しくて、唇を引き結ぶ。
 隣から、からかいを含んだような小さな笑い声が聞こえてきた。……お見通しってこと?
 ――声が漏れそうになった。
 触り方、かわった。明らかな、誘いに乗りたくなるような、身体の芯を撫でるような――
 この人になにもかも刷り込まれたことを思い出す。私という人間は、この人好みにつくりかえられてしまっている。
 ああ、もう。
「いつまで痩せ我慢が通用するかな?」
 指の間へするりと移動した熱に浮かれ始めているのを、もはや止められそうにはない。

#[300字SS]